ごみ処理は市町村の自治事務ですが、国の補助金を利用してごみ処理施設を整備(長寿命化や更新を含む)する場合は、原則として国や県の計画に即してごみ処理計画を策定することになります。
沖縄県のごみ処理広域化計画は平成20年度で終了していますが、中城村北中城村清掃事務組合は、休止している溶融炉の再稼動を回避するためにこれから広域化計画を検討するようです。しかし、組合以外の市町村(一部事務組合を含む)は単独で長寿命化計画を策定しています。
このブログの管理者は沖縄県におけるごみ処理の広域化計画は一段落しているので、次は長寿命化を行う時期が課題になると考えています。なぜなら、国のインフラ長寿命化計画に基づいて各市町村は平成28年度までにごみ処理施設の長寿命化計画(行動計画)を策定して財源の確保や予算の見通し等を議会や住民に対して明示しなければならないからです。
沖縄県において平成27年度にごみ処理の広域化計画を検討している市町村が存在していることは、沖縄のごみ問題を考えるブログの管理者としては、沖縄における他のごみ問題(例えば宮古島市における不祥事等)よりも遥かに興味があります。その理由は、平成27年度は県内の各市町村が来年度からの国の財政的援助を視野に入れて地方版総合戦略を策定しなければならない極めて重要な年度だからです。しかも、地方版総合戦略は行政と議会が一体となって策定しなければならないことになっているからです。
そこで、今日は組合の「広域化」と「長寿命化」の時期について考えてみることにします。
(1)組合の焼却炉は既に長寿命化の時期を迎えている。
県内の他の市町村の事例をみれば分かるように、沖縄県においてはごみ処理施設の供用を開始してから12年目頃に長寿命化が行われています。しかし、組合のごみ処理施設は今年で13年目を迎えています。
(2)国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行う場合は地域計画を策定する必要がある。
市町村が国の補助金を利用してごみ処理施設の長寿命化を行う場合は、ごみ処理計画(一般的には10年計画)のほかに、国や県と協議を行って地域計画(一般的には5年計画)を新たに策定する必要があります。そして、組合が広域化を行う場合は相手先の自治体と共同で地域計画を策定することになります。また、相手先の自治体は地域計画を策定する前にごみ処理計画を改正しておく必要があります。
(3)広域化計画は7年後から8年後に実施するプランになっている。
組合の広域化計画は相手先の自治体の都合により、7年後から8年後に実施するプランになっています。したがって、組合は「広域化」の前に「長寿命化」を行うことになります。なぜなら、7年後には供用開始から20年目を迎えていることになるからです。環境省によれば20年目では長寿命化を行う時期としては遅すぎるので、国の補助金を利用するためにはそれより前に長寿命化を行う必要があります。
(4)組合が焼却炉を長寿命化すると広域化の時期が遅れる。
市町村が国の補助金を利用してごみ処理施設の長寿命化を行う場合は、工事完了後10年以上は使用することが要件になっています。仮に組合が来年度に長寿命化計画を策定して再来年に工事に着手しても完了するのは3年後くらいになります。そこから10年となると、今から13年後くらいに広域化を行うことになります。しかし、相手先の自治体はそれまで待てません。なぜなら、相手先の自治体は長寿命化ではなくごみ処理施設の「更新」を前提として広域化を検討することになるからです。
(5)組合は焼却炉の長寿命化を行わない(行えない)ことになる。
組合が広域化を検討する場合は、相手先の自治体の計画も尊重しなければなりません。したがって、組合の都合だけで広域化の時期を遅らせることはできないと考えます。そうなると、組合は国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行うことはできないことになります。なぜなら、(2)にあるように組合が国の補助金を利用するためには、組合単独では地域計画を策定することができないからです。しかし、相手先の自治体にはごみ処理施設の更新の時期を遅らせる理由がありません。また、組合に合わせて更新の時期を遅らせると、老朽化が進んでメンテナンス費用が増加することになります。
(6)組合はこれから7、8年間は自主財源により焼却炉のメンテナンスを行うことになる。
長寿命化は設備の老朽化に伴うメンテナンス費用を削減するために行われます。しかし、組合が広域化を選択した場合は(5)の理由により長寿命化を行わないことになるのでメンテナンス費用が増加することになります。ごみ処理施設は供用開始から15年目以降は老朽化が顕著に進んでメンテナンス費用が激増すると言われているので、組合にはそれなりの覚悟が必要になります。したがって、組合が広域化を選択する場合は議会や住民に対して経費が増加するリスクがあることを説明して事前に理解と協力を得る必要があると考えます。なお、下の画像は環境省のマニュアルにあるごみ処理設備の老朽化と長寿命化における性能水準を比較した資料ですが、長寿命化を行わない場合は15年目辺りから性能水準が急激に低下することがよく分かると思います。そして、広域化を行う頃(概ね20年目)には更新の時期を迎えていることになります。
原寸大の資料(画像をクリック)
(7)広域化計画が白紙撤回された場合は自主財源により焼却炉の更新を行うことになる。
広域化計画が白紙撤回された前例を調べてみると、市町村が議会や住民との協議を行わずに事務方が机上のプランのまま計画を推進していたケースが多々あります。組合はこれから事務方が中心になって広域化計画を策定することになるので、万が一、議会や住民との協議によって計画が白紙撤回された場合は自主財源により焼却炉の更新を行うことになります。白紙撤回のリスクについては、相手先の自治体においてもあるので、仮に組合が組合の議会や住民から理解と協力を得られたとしても、相手先の自治体が議会や住民から理解と協力が得られなければ、やはり白紙撤回ということになってしまいます。
(8)広域化計画は参加する市町村の全ての議会の承認がなければ住民に対する担保にならない。
組合にとっては溶融炉の再稼動を回避するための措置として広域化計画を検討することになります。しかし、組合の議会が広域化計画を承認しても、相手先の自治体の議会が承認しなければ単なる「絵に描いた餅」になってしまいます。したがって、組合を構成している中城村と北中城村の住民にとっては相手先の自治体の議会の承認がなければ溶融炉の再稼動を回避するための担保にはならないことになります。
以上により、組合が広域化を選択する場合は国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行うことはできないことになります。そうなると、組合にとっては広域化の時期が最大の課題になります。しかし、広域化計画はまだ事務レベルで検討している段階です。しかも、来年度には中城村と北中城村において村長選挙が行われます。このことは、来年度には組合の管理者と副管理者が変わる可能性もあることを意味しています。
組合のごみ処理施設があるのは中城村です。そして、来年の6月には中城村の村長選挙があります。したがって、昨年の3月に溶融炉の休止を決めてごみ処理計画を改正した組合(現管理者と副管理者)としては遅くとも来年の5月までには「広域化」の時期を確定させてごみ処理計画の見直しを行う責任があると考えます。
なお、中城村においては、先月、村長が推進していた火葬場の整備に関する広域化計画が白紙撤回されていますが、この計画は財源の確保が困難(国の補助金を利用できない)というあり得ない理由(行政の事務処理における初歩的なミス)によって破綻しています。このため、中城村においては村長や職員に対する信頼性がかなり低下しているものと思われます。また、北中城村もこの計画に参加していたので、やはり村長や職員に対する信頼性は低下していると思われます。このような状況の中で組合がごみ処理の広域化計画を策定しても、果たして議会や住民の理解が得られるかどうか、このブログの管理者は大いに疑問を感じています。
※このブログの管理者は来年の5月までに広域化計画に対して相手先の自治体の議会の承認を得ることは極めて困難であると考えます。また、組合の議会も広域化によって焼却炉の長寿命化は行わずに自主財源によりメンテナンス等を行っていくことなるので、簡単には承認できないと考えます。なぜなら、組合における住民一人当たりのごみ処理費は県内(本島)において突出して高い状況になっているからです。