大前研一のニュースのポイント

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民主党政権は前途多難/鳩山首相も小沢幹事長も非常識

2009年11月23日 | ニュースの視点
11日、鳩山首相は、過去7年分の資産報告書を訂正したことに対して「やはり、恵まれた家庭に育ったものですから。そのことに関して、自分自身の資産管理が極めてずさんであった」と説明し陳謝した。

また10日、民主党の小沢幹事長は、「全日本仏教会」会長の松長有慶・高野山真言宗管長と会談し、「キリスト教もイスラム教も排他的だ」などと述べたことを明らかにした。

鳩山首相の発言を聞いて、何という常識知らずなのかと感じたのは、さすがに私だけではないだろう。

「恵まれた家庭に育ったから、桁を1桁間違えました」などという言い訳を私も言ってみたい、と皮肉の1つでも言いたくなる。

また、小沢幹事長の発言にも私は驚いた。

仏教界の票が欲しいのなら、素直に「仏教はすばらしいと思う。ぜひがんばって欲しい」とだけ言っていれば何ら問題はなかったはずだ。

わざわざキリスト教やイスラム教について、意見を述べる必要は全くなかったと思う。

すでに英訳されて海外に配信されているので、今後大きな問題に発展する可能性もあると思う。

鳩山首相と同じく、非常識であり、外交センスが欠如していると言わざるを得ない。

せっかく民主党政権になっても、鳩山首相や小沢幹事長がトップに君臨し、「家柄」と「お金」にモノを言わせているようでは先が思いやられる。

日本では、国際的に評価されている政治家かどうか、あるいはビジョンや構想がある政治家かどうか、という評価軸はほとんど機能しない。

これが政治家の質の低さを助長している側面もあるが、鳩山首相と小沢幹事長にはまず第一歩として、今の自分たちが非常識で国際感覚がないという事実を認識してもらいたい。

10日財務省は、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の総額が9月末時点で864兆5226億円に達したと発表した。

6月末に比べ4兆2669億円増え、過去最大額を更新した。

まさに返済する予定の立たない借金が増え続けているという状況だが、この期に及んで民主党政権は国債発行によってさらに国の借金を増やそうとしており、私には全く理解できない。

今、日本はかなり危うい橋を渡っている。このまま行けば、最悪の場合日本国債がデフォルトして、日本がかつてのニュージーランド、ロシア、アルゼンチンの二の舞になる可能性すらあると思う。

こうした経済危機のリスクに対する感覚も、民主党政権の動向を見ている限り、大きく世界標準の常識的な範囲から逸脱していると感じる。

政府の行政刷新会議のワーキンググループは11日、事業の是非を公開で判定する「事業仕分け」の作業を開始したそうだ。

概算要求段階で過去最大の約95兆円となった2010年度予算の無駄遣いを洗い出し、歳出の削減を目指すとのことだが、私に言わせれば「このワーキンググループの作業自体がムダ」なことであり、全く問題の本質が理解できていないと思う。

結局、1つ1つの細かい事象を取り上げては「賛成だ」「反対だ」と言い合っているだけだからだ。

今の行政の本質的な問題の1つは、「省庁縦割り・都道府県バラバラ」で意思統一がないために多くの「ムダ」が発生していることだ。

目に付いたものから1つ1つ個別に見て対応しても、その効果は限られている。

そうではなく、予算そのものをゼロベースで作り直して、本当に必要なものかどうかを見極めることが重要だと思う。

船出したばかりの民主党政権だが、率直に言えば、前途多難だ。もっと頭を使って考えてほしいと感じる。

そして、民主党のトップである鳩山首相・小沢幹事長は、世界の常識から自分たちは大きくズレているということを強く認識してもらいたいと思う。

26 コメント

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Unknown (大学生)
2009-11-24 23:27:26
大前さんのような人に日本を指揮してほしかった。。
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外交音痴は地獄への切符! (政治Gメン)
2009-11-25 10:43:01
①先生のコメントは核心を突いています。私も同様に「~非常識であり、外交センスが欠如~」旨を感じています。②例えば、思いやり予算、普天間、インド洋給油、オバマ大統領面会約束時間遅れなど外交上の履行は個人判断より国益中心に進めるものです。いずれの課題意識すら欠如は外交失格です。③両氏は日本が国際社会の一員である認識が全く無いからです。クリントン国務長官と小沢氏との会談で始まった米国外交はもう無知以外の何物でもありません。④鳩山、小沢氏はジオポリテイックスのいろはを勉強すべきです。沖縄、インド洋に何のために米軍がいるか理解していないからです。米国民が国民の命や財産をなぜ投入しているかを考えればわかるでしょう。⑤私は財産を守るために日本円を外国通貨に移転しています。それほど危機感をもっているという意味です。私の予測が当たらないことを祈っています。
                        以上
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国際競争時代 (平民)
2009-11-25 12:37:25
先生 質問があります 国民が国家を感じなくなり 就業場所も海外にシフトしていく現在。日本の社会福祉について・・・ 海外に就業してしまったら 国内回帰はまずおきなくなり 自分の世界だけ良ければいい となりつつあるのでは?と感じます。 先生の言われている 政治の問題もあると感じますが グローバル社会が加速し 世界的な賃金格差の溝を埋めつつある日本の社会でデフレは国内の問題だけではないと感じます だからこそ政治家の発言が非常に大事だと思いますが 先生どうなんですかね? 
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「国の借金」というが・・・ (nana)
2009-11-25 19:09:37
その借金は誰から借りたのか考えた事があるのでしょうか?
借金=負債の反対は資産ですよね?

今の国の負債はほぼすべて国民の「資産」ですよ。
そして、国は一般の会社や家庭、地方自治体とは違い、通貨発行権がありますよね?

このような話題になると「負債」の金額は出てくるのに、「資産」の金額は
一切出てきません。
どこをどうやったらデフォルトになるのか、明確な
数値で示して欲しい物です。

不安を煽るだけのコメントはいりません。

ちなみに世界全体を見渡しても、「純負債国」は多数有り、そのどの国もデフォルトはしていません。
日本は数少ない「純資産国」です。
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非常識 (nana)
2009-11-25 19:11:31
この記事の「非常識」にはものすごく共感しています。

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国債 (SE)
2009-11-26 10:14:46
国債は日本人が買っているので、将来の子供たちから借金をしているのですが、恐ろしい仕組みですね。。
国債のデフォルトは国債を買う人がいない時点で発生するという認識なのですが、断れない、生まれていない子供達が買うのですから、デフォルトは起きません。
こういう極端なケースでデフォルトが発生することはあるのでしょうか????

本当に、経済とは難しくて面白い。
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事業仕分けは無駄? (シロートな経済好き)
2009-11-26 12:29:22
「目に付いたものから1つ1つ個別に見て対応しても、その効果は限られている。予算そのものをゼロベースで作り直して、本当に必要なものかどうかを見極めることが重要だと思う」…との事ですが、私はあれはパフォーマンスに過ぎず、予算そのものは既に財務省が「ゼロベース」で作り直していると思います。
 ただ、その作り直しがどこまで徹底されたのかが不安…特にその財務省自身が身内に甘かったり、一般会計の数倍ある特別会計への切り込みが不十分ではないだろうか?(塩爺じゃないですけど、母屋(一般会計)でおかゆを食っているのに、離れ(特会)で子どもがすき焼きを食い続けてるのでは?)といった点が不安です。
 その上で「本当に必要なものかどうかの見極めた予算」についてですが、私は内需拡大の牽引役たる「住宅」に注目してます(個人的にはもう外需依存型経済は懲りたし疲れました)
 ニュースでは今、住宅版エコポイントが注目されてますが、先生が「大前研一の「産業突然死」時代の人生論ートヨタなら構築できる住宅の世界最強モデル」で述べられた「自動車と住宅の両輪で、円高にも円安にも強いトヨタの誕生」、これに期待したい。 更には外需依存経済解消とCo2の25%削減の両方を達成して欲しい。
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Unknown (平民)
2009-11-26 12:45:18
16世紀のスペインですね 現在の日本は・・・・
そしてこの円高 明らかにアメリカの意図的なドル安

明らかにアメリカの外需での回復を考えているとしか思えない政策

日本は消費していかなきゃ ニッチもサッチモいかないシステムなのに 困ったもんだ


仕分けもいいが 根本を考え直さないと駄目でしょうね 現在の経済に足りないことは過去からの学びでしょう
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全体と部分 (Unknown)
2009-11-26 13:04:16
あるべき全体の理論よりは、
できる部分の行動が

少なくとも世間には影響を与えるのではないのかと思っています。

できる部分の積み重ねが、大前さんが仰る『意思統一』に繋がるのではと。

そういうことと、今の日本の程度を考えれば、
民主党は現在においては役割を果たしていると思えるところはあります。

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本当に国債発行を抑えたいのであれば (かずぽん)
2009-11-26 15:40:13
公務員を減らすしかない。各霞が関の省庁のみ残し必要最低限の人件費・事務費のみにする。
出先機関の人間は出向という形をとり都道府県にすべての人間を出向させる。そして、各都道府県では必要な人間以外を出向という形をとり市町村に出向させる。
市町村でも必要な人を残し出先機関や組合に出向させる。
そのなかで必要な人間以外は早期退職か民間企業に再就職させる。
税金は本省で必要な最低限の税金を残し全てを都道府県に渡す。その上で都道府県では市町村に割り振る。
出向は期間をもうけて、期間が来たら出向の受取先の人員になる。不祥事を起こしたら早期退職。
これしかないような気がします。
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