大前研一のニュースのポイント

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天然ガス輸出価格は300ドル~350ドルで落ち着く

2009年01月13日 | ニュースの視点
1日、ロシアのガスプロムは、天然ガス料金の支払いをめぐり交渉していたウクライナに対してガスの供給を停止した。

またメドベーチェフ大統領は先月22日、ベラルーシのルカシェンコ大統領とモスクワで会談し、今年のガス輸出価格を協議したとのこと。

西欧諸国・バルト3国・ウクライナ・ベラルーシのそれぞれに対するロシアからの天然ガス輸出価格の推移を見るといずれも千立方メートル当たりの値段は年々上がってきているが、それぞれに対する輸出価格は次のような特徴を持っている。

西欧諸国に対する輸出価格は2005年に250ドルを突破し、2008年には350ドルを越える高い水準にまで達している。

一方、エストニア・ラトビア・リトアニアの旧ロシア領であるバルト3国に対する平均の輸出価格は250ドルに届かない低水準になっている。

また、親ロ的な立場を貫くベラルーシへの輸出価格が低く抑えられているのに対して、ウクライナに対する輸出価格は上昇の一途を辿っているのが見て取れる。

ただ今回のウクライナへのガス供給ストップは、ロシアとウクライナの政治的な関係が悪化したからだけではなく、資金的にガスプロムが追い込まれ、背に腹は変えられない状況に陥ったからだと思う。

いずれにせよ、客観的に見てウクライナはかなり厳しい状況に追い込まれている。

では、天然ガスの価格はいくらで落ち着くことになるだろうか?

先に結論を言ってしまうと、私は300ドル~350ドルに落ち着くと見ている。

そしてこれはウクライナに対するだけではなく、西欧諸国・バルト3国・ベラルーシなども含め、全体に対して300ドル~350ドルという共通の適正価格になっていくと思う。

その根拠はこうだ。

まず第1に、ウクライナが元CIS・元ロシアという意味で同じ境遇にあるバルト3国と同水準の235ドルを求めるならば、ロシアとしてはバルト3国への輸出価格も300ドル以上に値上げしてしまえば良いと考えるだろう。バルト3国はすでにEUにも加盟しているのでEU諸国と同水準でも筋が通るだろう。

第2に、逆に西欧諸国に対しては他のエネルギー資源の価格との兼ね合いから考えれば値下げせざるを得ない状況だ。現在の418ドルから350ドルくらいまで値下げするのは妥当なラインだと判断するのではないか。

そしてこれを実現するためには、ロシアとバルト3国・ウクライナ・ベラルーシの間に欧州が政治的に介在することが必須だろう。

例えば、欧州諸国は天然ガスを使用しないという政治的な動きを見せることも有効だと思う。

欧州側にしても結果的には自分たちへの輸出価格の値下げにつながるのだから積極的に動いても損はないだろう。

最終的に300ドル~350ドルに落ち着いても、ベラルーシ・ウクライナにとっては厳しい状況だ。それでも両国が納得できないならば、天然ガス以外の他の燃料を使うという選択肢以外に道はないかも知れない。

2 コメント

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いやいや (夜桜のコメント)
2009-01-13 15:57:34
私は280~300ドルに落ち着くと思います。 


愉しみですね!
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ややおかしい (須藤のコメント)
2009-01-14 14:44:47
いやいや、やはり380前後と見たほうがリスクが少ないのではないかと思います。 
ただし、戦争が起きなければですがo(^-^)o
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