いざというとき、男は弱い。
胃潰瘍が悪化して自ら癌を疑ったときのおっさんも
陰で爆笑したいくらい弱々しかったっけ。
我が高齢者住宅でも然り。
去年から今年にかけて
亡くなったり他に転居していったのはジイサンばかり。
亡くなるのは仕方ないとしても
他へ転居していったのはみんな
不安や寂しさから体力が落ちたり意欲を失ったりして
ウチのようなサービス付き高齢者住宅では無理!と判断した家族が
特養などへ移したというのがその理由だ。
弱ったジイサンたちは決まって、コールボタンを連打するようになる。
「今何時ですか?」
「いつ来てくれるんですか?」
「話を聞いてください」
「辛いんです。ご飯を持ってきてください」
あのね、これは緊急時の呼び出しボタンなの。
あのさ、辛いのに食欲はあるの?
思いっきりドヤしたいが、ジイサンたちは今にも死にそうな声で
「お願いします」と訴えてくる。
仕方ないから訪室すると
コールボタンを握り締めながらグーグー寝ていたりしているのだが・・・。
そこへいくと、女は、いやバアさんたちは強い。
自分の家に帰れないことや
家族がなかなか会いにきてくれないことの不安や寂しさを
他のバアさんたちに喋ることで
あるいは他のバアさんたちをいじめることで
解消してしまうのである。
(中には例外もいるが)
女は強い。
老いてますます、強い。