ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

私は戦後生まれです。

2018-08-06 23:49:44 | 日記
「アナタは社交ダンスやってた?」
唐突に、そう聞かれた。

相手はキヨハル。
何かとダダをこねる、97歳のじいさんだ。

社交ダンスなんかやったことないと答えると
彼は妙なことを言うではないか。

「そうなの? 戦後あんない流行ったじゃない?」

戦後? は? 戦後?
あのねえ、キヨハルさん、私そのころまだ生まれてないから。

するとヤツはなぜか驚く。
「え---???」

マ、マジに私がそんな歳だと思っていたのか?
失礼極まりない。
私もたいがいイイ歳だが、そこまで老けてはいないはずだ。

本気で怒ると、ヤツはなんだか合点のいかない表情で言った。
「そっかあ。ここのヘルパーさんたちはみんな
ボクより年上だと思ってたんだけど…」

そういえばキヨハルが入居したばかりの頃
「アナタは戦時中どこにいらしたの?」
と、聞かれたことがある。
ヤツはあの頃から本気で
私たち職員のことを“面倒見てくれる優しいお姉さんたち”と
思っていたのかもしれない。

どうりで…と、得心した。

キヨハルの言葉はやたら子どもじみている。
「どーしてそんなこと言うんだよぉ」
「ちゃんと教えてくれなきゃわかんないよぉ」
「やだやだ。薬なんか飲みたくないよぉ」

大手企業の役員を勤め上げたという経歴にそぐわない
ちょっと気味の悪い赤ちゃん言葉。
それをずっと、不思議に思っていた。

そうか、幼児退行か!?

しかし、そうは納得しても
97歳のじいさんから年上だと思われていたことは
どうにも承服しがたいのである。