入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

牧人の休日 (6)

2015年01月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日は北原のお師匠をお誘いして、芝平まで行ってきた。格別な用事があったわけではない。ただなんとなく行ってみたかっただけだ。
 キクが山から下りてきたとき困らないようにと作っておいた仮設住宅は、雪に埋もれかけていた。もうそれが役に立つとは思わなかったが、入口の雪をどけ、内部にもあったこぶし大の雪の塊りを取り除いておいた。「役に立つとは思わなかった」と書いたのは、もうそこへ戻ってくる可能性はほとんどないだろうという意味で、まだキクを諦めたわけではない。
 この日も、集落のはずれの、日当たりがよくて雪の融けた斜面には、多数の鹿の姿が目に付いた。



 今朝方降っていた雪は、予報通り雨に変わり、その雨も夕方には止んだようだ。しかし雪催いの空はまた、夜のうちに雪を降らすのではないだろうか。例年だとこのころから少しづつ雪の量が増える入笠も、今年はそれがあまりにも早い。当然ながら今日は終日雪だろうから、さらに積雪は増す。


 お師匠まだまだ矍鑠(かくしゃく)としたもの
 
 昨日芝平からの帰り、荊口の集落まで来たら「ここもあと10年もしたら住む人がいなくなる」と独り言でも言うようにお師匠が言った。住む人の絶えた集落はどのようになってしまうのか、案ずる人も次第に減りやがていなくなる。そしていつしか、山室川のつくる美しい景色の中に、三つの集落があったことすらも、忘れられていくかも知れない、古刹や古道も一緒に・・・。ウムー。
 しかし、実はそんな心配をよそに昨日も、郵便配達のオートバイが山奥の集落のだれに何を届けるのか、急な雪の道を滑りすべり上っていった。また年老いた夫婦が、山室川の斜面で雑木林を伐採して、その年齢には珍しく巧みに小型の重機を操作しながら、薪つくりに励んでいた。山裾の大きな総二階の家からは、風呂でも沸かすのか煙突からは煙が出ていた。まだ、人の営みがこの谷から消えたわけではない。春になればまた、「山室川の聖人」の姿を、川沿いの畑に見ることもできるだろう。

 山小屋「農協ハウス」の冬季営業に関しましては、昨年の11月17日のブログなどをご覧ください。


 
 
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牧人の休日 (5)

2015年01月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 今日は大寒。一年で最も寒いころということになるが、天気はよし。二十四節気を伝える今日の新聞には「武道では寒稽古この時期(毎日新聞)」とある。ぽかぽか陽気を浴びながら炬燵の中にいては、遠い話としか思えない。それでも、柔道着や剣道着を身に着けた若い人々の、稽古に励む姿を想像することはできる。身体が温まるまでは、素足がさぞかし冷たかろう。

 風邪をひいたら熱い風呂に入り、同時に熱燗とビールを飲み、あとは羽毛服まで着て布団の中でひたすら汗をかく。肌着を何度も着替え、それで熱を下げるという荒治療をしたものだ。この方法は体力をかなり消耗する上に中途半端だと、病状をさらに悪化させてしまう恐れもある。それでも、手っ取り早く治すには一番と信じていた。風邪をひくなどということは数年に一度のことだが、いつの間にかこういう野蛮なこともしなくなった。素直に風邪薬を飲み、部屋を暖かくして動かないでいる。

 整備されたゲレンデを嫌い、雪山でのスキーヤーやボーダーの山の事故が報じられている。スポーツは、楽しむことはもちろんだが、自己の能力を高め、さらにそれを追求するものではあろうとも、自然を相手の場合には生命にかかわってくる。
 日が落ちて夕暮れが迫るころ、色を失いかけた空を見上げながらいまだ消息不明の彼らは、例え無事であったとしても、これから迎える極寒の長い夜を覚悟し、耐えなければならない。みな大学山岳部のOBということだから、経験や知識は充分にあっただろう。問題は、50代半ばを超えている。一人より二人、三人といれば、気持ちの上では力にはなるだろうが、それ以上のことはあまり期待できないかも知れない。幸運を祈るしかない。
 
 冬の入笠を勧め、訪れる人を待っている立場の者としては、この件のみならず遭難について、あまり軽々しく言うことは控えたい。加えて、自分にもまだその可能性がゼロだとは、言い切れないうちは。

 そういうことを考えつつ、ともかくも、山小屋「農協ハウス」の冬季営業に関しましては、昨年の11月17日のブログなどをご覧ください。

 
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       牧人の休日 (4)

2015年01月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 灰色の冬空に雪が舞っている。実を落としつくした柿の枝が、風に吹かれて揺れている。西の山(中央アルプス)は今日も、激しく吹雪いているようだ。炬燵にあたり窓の外に目をやっていると、時折青空が顔を覗かすことがあっても、極端に薄れた青のせいか、却って寒々とした印象が空に拡がる。こういう外の様子を眺めているとまた、「通る人の思い絶えた」雪の法華道が、しきりと呼んでいるような気にさせられる。珍しく、風邪をひいたというのに。
 昨日は、はっきりとしない入笠の客がやはりキャンセルしてきたので、方向を変えて奥蓼科に行ってみた。天気は抜群によかったが、すでに風邪の予兆を感じていたのか風呂に入る気にもならず、よくもまぁこれだけ積もったものだという雪の森や、雪山の眺めを楽しんできた。
 南は甲斐駒、その奥に中アの駒ヶ岳、噴煙の見えない御嶽山に乗鞍、そして北アの穂高や常念が、澄み切った青空にさぁどうだと言わんばかりに見えていた。
 思いがけず昨日はまた、2月中旬の山行の下見ということで、その途中、幹事役のIさんから電話があった。天気は上々だから是非、小屋まで足を伸ばすようにようにと勧めておいたがサテどうだったろうか。現在はかなり踏み跡がしっかりしてきたから、まず問題はなかっただろう。総勢15名ということだが、そのうち5名は幕営を予定しているという。冬の入笠牧場の山小屋営業に関しては、このブログを見て知ってくれたのだったら有難い。そういう人たちが少しづつでも増えてくれたら入笠も変わるだろうし、このアダシゴトを綴る甲斐もある」。
 そしてその翌週は、弥勒山の会がやってくる。この人たちは、実験的に冬の営業を始めた平成24年から、毎年来てくれている。いつも2泊3日の予定で、ヒルデエーラ(大阿原)やテイ沢を歩く。かなりの年配者も混ざっているが、みんな山が好きで、酒が好きで、歌が好きときている。男女ともども古い山小屋によく似合う・・・って、勿論褒めているつもりだが。

 Ume氏も厳冬期の入笠の写真を撮ろうとしているようだし、3月、光の明度が高くなるころには、あの人たちもやってくるだろう。それまでに、地元山岳会のメンバーにも、是非冬の法華道を登ってほしいものだ。どう、DAさん?

 山小屋「農協ハウス」の冬季営業に関しましては、昨年の11月17日のブログをご覧ください。

 
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( 続) 冬の入笠牧場、1月14,15日

2015年01月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    O夫妻は傍から見ていても気持のよい、とても羨ましい仲の夫婦だ

 小屋に到着して、軽く飲むつもりのビールのピッチが上がり、まだ暗くならないうちから、その夜の宴の準備が始まった。今回は頼りになるO氏がいて、主婦業のベテランがいてくれる。面倒な水作りや諸々がみるみるうちに捗った。ただし酒のせいもあるが、鍋奉行がおかしな味付けをして、この夜の折角の団居(まどい)に水を差したことも白状してしおこう。ともかく飲んで語り、愉快に山の夜が更けていったことだけは確かだ。

 一夜明けて、外は雪。雨かと見紛うような細かい結晶の雪が降っていた。前夜の酔いが抜けぬ頭で思案するのは雪下ろしのこと。なにしろ、古い安普請の管理棟も小屋も、例年にない早い雪の襲来で悲鳴を上げている。
 さんざん苦労したあげく、やっと雪に埋もれた物置小屋を開け、スコップなど持ち出し、足元を気にしながら屋根に上がったまではいいが、その間も降雪は激しくなるばかり、イヤーとても一人、二人では手に負えないということになってしまった。特に山小屋「農協ハウス」は屋根の勾配が緩く、作業は容易なことではない。当面は、両棟とも雪がもう少し水分を含み、自然落下するのを期待するしかないようだが、ただ来るとき見てきたもっと急勾配の屋根でもドッサリとその上に雪を載せたままで、しばらくその気配はない。天気がよく、もう一日あれば管理棟ぐらいはなんとかなっただろうが諦めて、予定を早めて下山することにした。



 それから二日過ぎ、山はまた雪降りのよう。またあの白い世界に帰っていきたくなるまでには、幾日が経つのだろう。

 山小屋「農協ハウス」の冬季営業に関しましては、昨年の11月17日のブログなどをご覧ください。

 

 

 
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冬の入笠牧場、1月14,15日

2015年01月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    さらに積雪量の増えた入笠一帯

 今回も富士見パノラマリゾートのゴンドラを利用して、登ることに。同社からは、牧場管理人(しかもウルサイ)ということでか、ゴンドラの利用に際しては配慮を頂いている。有難いと感じているが、駐車場の利用だけは関係者用のスペースを使わせてもらい、それ以外のことは一般利用者と同じようにしている。その理由については、ここでは縷々述べない。


    八ヶ岳とその広大な裾野が一望できる

 2月に今年も「弥勒山の会」の会員10数名の予約があり、その下見を兼ねてやってきたO夫妻とゴンドラのチケット売り場で合流する。O氏は会員ではないが、同会を紹介してくれた古いお客であり友人で、今回は招待に応じてもらった。一応食糧などはこちらで用意するとあらかじめ連絡しておいたのに、大変気を遣わせてしまった。

 天気はまずまずで、北アルプスは遠く三国堺まで見える。うっすらと噴煙を上げる御嶽山や中央アルプスの山並みも、冬山の遜色のない眺めとしていつもの景色の中におさまっていた。ラッセルを覚悟していたが、前日だかに降ったらしい粉雪の上に踏み跡が分かる程度に残っていて、今冬三度目になるこのコースの中では最も楽だった。
 その踏み跡の上に人の足跡はないのに犬の足跡らしきが続いていて、雪の山中をまだ彷徨っているかも知れぬキクのことが、不憫だった。一緒につれてきたHALは、いつものようにあまり遠くまでは行かず付いたり離れたりを繰り返していたが、やがて管理棟へ向かっていることがはっきりしたのか、白蛇弁天からは先行した。

 10日ぶりの小屋は、その間にも何度か降雪があったのだろう、雪の重みに必死で耐えつつ呻吟しているように見える。まだ1月の半ばで、年によっては車で来ることさえ可能なこともある。これからさらに例年並みの降雪量があるとしたなら、一体どうゆうことになるのだろう・・・。(つづく)

 山小屋「農協ハウス」の冬季営業に関しましては、昨年の11月17日のブログなどをご覧ください。
 K君、ちゃんと届いていますよ。ありがとう。
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