昨日は北原のお師匠をお誘いして、芝平まで行ってきた。格別な用事があったわけではない。ただなんとなく行ってみたかっただけだ。
キクが山から下りてきたとき困らないようにと作っておいた仮設住宅は、雪に埋もれかけていた。もうそれが役に立つとは思わなかったが、入口の雪をどけ、内部にもあったこぶし大の雪の塊りを取り除いておいた。「役に立つとは思わなかった」と書いたのは、もうそこへ戻ってくる可能性はほとんどないだろうという意味で、まだキクを諦めたわけではない。
この日も、集落のはずれの、日当たりがよくて雪の融けた斜面には、多数の鹿の姿が目に付いた。
今朝方降っていた雪は、予報通り雨に変わり、その雨も夕方には止んだようだ。しかし雪催いの空はまた、夜のうちに雪を降らすのではないだろうか。例年だとこのころから少しづつ雪の量が増える入笠も、今年はそれがあまりにも早い。当然ながら今日は終日雪だろうから、さらに積雪は増す。
お師匠まだまだ矍鑠(かくしゃく)としたもの
昨日芝平からの帰り、荊口の集落まで来たら「ここもあと10年もしたら住む人がいなくなる」と独り言でも言うようにお師匠が言った。住む人の絶えた集落はどのようになってしまうのか、案ずる人も次第に減りやがていなくなる。そしていつしか、山室川のつくる美しい景色の中に、三つの集落があったことすらも、忘れられていくかも知れない、古刹や古道も一緒に・・・。ウムー。
しかし、実はそんな心配をよそに昨日も、郵便配達のオートバイが山奥の集落のだれに何を届けるのか、急な雪の道を滑りすべり上っていった。また年老いた夫婦が、山室川の斜面で雑木林を伐採して、その年齢には珍しく巧みに小型の重機を操作しながら、薪つくりに励んでいた。山裾の大きな総二階の家からは、風呂でも沸かすのか煙突からは煙が出ていた。まだ、人の営みがこの谷から消えたわけではない。春になればまた、「山室川の聖人」の姿を、川沿いの畑に見ることもできるだろう。
山小屋「農協ハウス」の冬季営業に関しましては、昨年の11月17日のブログなどをご覧ください。