
不思議なもので、上に1泊しただけで、里の家は遠い存在となってしまった。昨夜は牧を下りたが、用事を済ませたらまた上に戻ろうかと考えたほどだ。
またしても同じことを呟くが、本宅と愛妾宅を行ったり来たりする大店の主人など、その点はどうだろうかと愚にも付かぬことを考えたりした。たった一夜でこんなふうでは、確かに牛相手の稼業を続けてきたが、令和の遊牧民(nomad)でもあるまいに、我がことながらよく分からない。
水回りの問題が昨日でほぼ解決した。3日かかった。いつでも水質検査を受けることができるようになったが、しかし、まだ下からは何も言こない。連休もすぐに始まるし、催促しておいた方がいいだろう。
キャンプ場の整備も、きょうで大体終わる。鹿の落し物だけで一輪車4杯分を片付け、散乱していたコナシやダケカンバの枝もかなりの量になったが終わった。これらは焚き付けには大いに役立つはずで、子供のころは近くの里山に拾いに行ったものだが、そんなことはもう、覚えている人はあまりいないだろう。
露天風呂も、点検が終わり、只今試験中。それにしても、このヒノキでできている風呂桶は一体どうなるのだろう。
そういうものが他にも多々ある。牧柵ばかりではない。この疲れ老いさらばえた管理棟や小屋もそうだし、裏の林の中には、今では通用しないバンガローも何棟かある。今年はまだ誘引中ながら捕獲にまでは至っていない大型の囲い罠もあれば、第1,2の検査場だってある。
下では放牧を止めたし、牧場は閉鎖になるから、管理人は楽になっただろうと思っているかも知れない。確かにそうしようと思えばできなくはないだろう。
しかし、牧場のみならず、法華道にも、高座岩や北原新道にも、いや、権兵衛山から白岩岳に至る山や谷まで含め、愛着がある。
それに口幅ったいことを言えば使命感もある。牧場に対してであり、次は牛たち対してであるが、それは終わった。その次は、ここを慕って訪れてくれる人たちに対してである。一緒に働いた若い同僚たちを、同じ列に加えてもいい。
それに、ここでは言わないが、自分なりにやることはすでに一応決めてある。
天気は回復しつつあるようだ。たった一日里を留守にしただけで、各所に緑の色が目に付くようになり、藤沢の谷も変わった。あれはケヤキだろう、たっぷりの白に、ちょこっと緑を混ぜたような色の葉が目立ち始めたし、山室の谷では落葉松の芽吹きも見ることができた。ようやく、冬の間眠っていた山が目覚めて、大きな伸びをしているのだろう。
連休の予約は、まだまだ余裕はあります。お早めにお願いします。
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本日はこの辺で。