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入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’16年「秋」 (33)

2016年09月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


「クロよ、お前、何も考えてなどいないくせに、いかにもそれらしいふうをしているじゃないか」
「ズイブンな言い方ですね。まあそうですけど」
「昨日塩場で、塩をなめようとしたホルスの4番に、かち上げを喰らわしただろう。あれはお前の得意技か」
「アレ、見ていたんですか」
「相撲のかち上げは腕や肩を使うが、お前はその硬い頭で相手の首根っこにやったじゃないか」
「でも、アイツ、チビのくせに生意気なんすよ、違います?」
「塩を持っていけばいつもお前たち和牛だけで独占しようとする。ホルスはここで暮らすわずか4か月が、短い生涯の中で最良の時なんだと教えただろう。お前たち繁殖牛のように長生きができないんだ。ホルスで4,5年、お前たちが産む育成用の和牛はもっと短くて、大体2年と4か月だ」
「・・・・・・」
「もう山を下りるまでに1か月もない。もっと優しく面倒を見てやれよ。分かったな」
「ちょっと待って。でもそれって、みんな人間の勝手じゃない。一番残酷なのはあなたたちじゃないの。わたしの産む子はブクブクに育てられ、たったの28か月で人間に食べられちゃうなんて。あのホルスもさんざんに乳をしぼられ、2,3回子を産めばそれでおしまいだなんて・・・。ヒドーイ。優しそうなことを言って、あなたもそうなんでしょう。偽善者!」
「興奮するな、ワァー止めろ、オレは貧乏で牛肉は食べない、豚肉だけだ、ギャー」
 
 牛を見ていると、たまにこんな妄想が湧いてくる。妄想で済まない場合も、時にはあるらしい。
 

 今日も霧が深い。小鳥の声が霧の中からしばらく聞こえていたが、どこかへと去ったようだ。それにしても鳥たちは、こんなに深い霧の中をどうやってちゃんと飛ぶことができるのだろうか。いつもなら見える向いのコナシやヤマザクラも、今日は空白の中に隠れてしまっていいる。もう行くこともないアラスカの氷河で体験したホワイトアウトが思い出される。

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては、カテゴリー別の「H28年度の営業案内」及び「続・H28年度の営業案内」をご覧ください。
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