スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

子どもの習い事でバイオリン?スウェーデンのニッケルハルパ事情(加筆修正あり)

2018-03-16 16:11:01 | 番外編

昨日キックボードで転びました。片足接地してるから乗り物に乗っていない気がして。でも、私は物理の自然の法則が分かっていないようです。急に降りたらすごいGがかかって止まらない!両手をつく瞬間に大人って色んなことを考えるんですよね。うわー痛そう!血がでたらイヤ!演奏が!とか、コンマ数秒に色んな思いが渦巻き、そうっと手をつくから顔も接地。ああ、残念。ユニクロジーンズも膝が破けてしまいました。

今日は、最近思った「雑談ネタ」です。

子どもの習い事、バイオリンで思うこと(よく検索であがるようなので、内容を読み返し加筆修正しました。2021/3/24)

バイオリンを習うというのは、日本ではお金持ちのイメージが根強いようで子どもを習わせているというと「うわー、どこのオボッチャン?!」というコメントが帰ってきます。内心「バイオリンは基礎だけやったらフィドルさせたい。スウェーデンのフィドルとか、ブルーグラスとか。」と思いますが、フィドルなんて言ったら、私が変人だと思われそうなので言いません。※フィドルはバイオリンのことで、クラシック以外の音楽、特に欧米の民俗音楽などで使われる俗称です。

スウェーデンで人気のスズキメソッド(鈴木メソード)

スウェーデンで伝統音楽を弾く方で、私が知り合ったり尋ねたりした方は、皆さんスズキメソッドの出身でした。スズキメソッドは、教則本にCDがついていて、CDもレッスンでもお手本を「よく聞くこと」を重視します。日本では、スズキメソッドをやっていたら楽譜が読めなくなるという話も聞きます(音符のドを見てドの音を弾くのではなく、先生が弾いた音と同じ音を弾くイメージ)。スウェーデンの、伝統文化で有名なダーラナ地方に、スズキメソッド出身の伝統音楽奏者がいて若手を指導してきたこともあり、特に伝統音楽奏者にスズキメソッドが多いのかもしれません。あるスウェーデン人に話を聞くと、あれしなさい、これしなさい、宿題をやってないと叱る、というのは古い指導法だと言っていました。今は、スズキだけでなく、新しい色んなアプローチ法を取り入れているようです。特に、間違える=叱られる(ネガティブ)というサイクルを断ち切ることも指導の中で重視しているようです。間違えても、間違えなくて、演奏が素晴らしければ良い、とミスタッチで委縮したりつまずかないこと(ポジティブ)が大事だという指導がスウェーデンの今の指導スタイルのようです。

日本の、スズキではない一般的なバイオリン教室では、ひらがなが読めない年齢でも「譜読み」の読み、書き、リズムの練習を始め、レッスン中も先生と一緒に譜面を読みます。全ては教室の方針によるので、ひとくくりに「一般的」とはいえないのですが。特に小さい子はお手本を聞く機会は、スズキメソッド比べれば少ない気がします。(自分の子どもを見ていると、どういう曲か分かっていないまま音を出しているような印象があります。)ですが、早くから楽譜に親しむことで理解も深まりますし、特に読み書きが得意なお子さんは、演奏も楽譜を読む力もどんどん伸びると思います。読む力が元々苦手、集中力が続かないお子さんには、このやり方では苦行のように感じるかもしれません。

本人の個性、取り組む音楽のジャンルによってもアプローチ法は異なると思いますが、日本で、北欧の伝承音楽を演奏するのが難しいという方にお聞きすると、どのように理屈で理解したらいいのか戸惑うのだそうです。楽譜ありきで音楽を学んできた方によく言われます。スウェーデンの伝承音楽は、楽譜や理屈で作られた音楽ではないので譜面に書き起こして理解すると難しく、聞いてまねるスズキメソッドとの相性が良いように思えます。

子どものバイオリンは高価な習い事なのか

※音大を目指す方、上質なクラシック音楽教育を望む方、またそうした教室の方針によっては、以下の内容はお勧めしません。気軽に楽しく趣味でしたいと思う方向けです。

バイオリン=本気の音楽教育、敷居が高い、と思われがちです。でも、スウェーデンのように気軽に習っていいじゃないか、楽しく演奏する楽器の一つであってほしいと思うのです。バイオリンを習えば、クラシックはもちろん、それ以外では、ジャズ、ブルーグラス、また、伝統的に弦楽器を使う民俗音楽(北欧やケルト音楽などなど)と幅広くあります。民俗音楽は、元々、庶民による庶民のための音楽ですので、あまり難しく構える必要はないのでは、と思います。

レッスン代で見ると、私の住まいの地方都市エリアで良くみかける子ども向け月謝は、ピアノ6千円、バイオリン個人教室8千円、大手教室で1万円~です。比較参考に、同じエリアで子ども英会話が、日本人講師6千円、外国人講師8千ー1万円くらいです。発表会は教室によりますが、別途アンサンブルの練習、写真、ピアノ伴奏代などかかり1-2万はします。お金持ち!と言われるほど、レッスン代に差はないかな、と思います。

楽器の値段でいえばピアノは何十万~、電子ピアノでも鍵盤のタッチにこだわると10万~。初期投資としては高いですよね。子どものバイオリンは分数楽器といって1/8、1/4、1/2~と何度も成長に合わせて買う必要があるので高くつくと思われていますが、教室により、消耗品の実費のみで楽器レンタルというところもあります。バイオリンの価値観は様々ですが、何度も買い替えるし、ぶつけて傷を作るので子どものうちは高価なものでなくて良いという考えもあります。それだと、スズキのセット(日本メーカーで、基準が明確な安心感がある)を買えば6万~10万。その中古をネット探すと2万円前後くらいです(弓と本体、古いケースのセットの相場)。

私は子供のサイズ違いを4台、いずれも中古でヤフオクで購入しました(1万、2.2万、1.6万、3万)。サイズアウトしたら売っているので、最終的に赤字はあまり出ない予定です(現在、サイズアウトした3台とも売却処分しました)。

探す時のポイントは、メルカリやヤフオクであれば、購入対象で考えるのは、工場の量産品であってもメーカー品(スズキ、カールヘフナーなど基準が明確)で且つ、たった今まで使っていましたとか、調整済み(弦と毛が交換済み)というもの。避けるのは、ジャンク品(楽器店ではない出品)、自宅で10年以上といった長期保管品は検討しません。弓の毛替え&弦交換が必要であればそれだけで1万円ほどかかりますし、見えないヒビ、駒や魂柱の調整が必要だと数万円かかる可能性があるからです。

中学生になっても続けるなら、まあまあの楽器を探すことになります(大人と同じフルサイズは小学校5年~中学で買うことになるでしょう)。弦楽器店で雑談すると、中高生のオーケストラの部活向けにメーカー品(工場のあるスズキやカールヘフナー)で30万の価格帯がよく出ていると聞きます(それ以上もそれ以下もいます)。中古でそのクラスだと、10万円代でネットで見かけます。

高校、大学、大人でも続けるとさらに高価な楽器を持ちたいでしょうが、音大やコンクルール狙いじゃなければ、お金のかかる趣味という感じかなと思います。バイトや就職してから本人が買っても良いでしょう。あるバイオリンメーカーの価格表を見ると、40万くらいまでは「高品質のスプルース」で、80-100万に近づくと「最高級のスプルース」になっていました。この辺りから、音色が本格的になるんだと思います。私の子どもが通う教室の先生は「30万円くらいまでの楽器は、本人が買い換えたいと思う時期が割と早く来る(高校、大学とか)。50万以上の楽器だとその点、少し安心」と言っていました。ちなみに、信頼できるお店であれば欧米から直接買うのも手です(日本は仕入れにかかる費用分、高い場合があるので)。中国製は最近よく話題になりますが、信頼できる工房かどうかが重要で中国製だから良い/悪いということではないと思います。

考え方はそれぞれですが、本物のピアノを買う、高級クラスの電子ピアノを買う値段と比べて、大きくは違わないかなと思います。

本当に安い楽器でいいのか?

と、ここまで、子どもの習い事で高価なバイオリンは不要ではないか、という意見を書きましたが…。ですが、実際には良い楽器は良い音がします。良い弓は扱いやすいです。つまり、安い楽器では先生のような音色に近づけないし、安い弓は練習してもコツをつかむのに多少苦労する、ということです。どこかの年齢で、楽器のランクを上げたり高価なものを試奏した時に、子ども自身が「なんだ、これは!」と感激するようであれば、楽器ランクを上げる時期かもしれません。我が家の例では、スズキのセットの中くらいの中古楽器を弾いてきて、小学5年生で大人のフルサイズになりました。その買い替え時に、私の持っていた高価な弓を貸してあげました。すると「なんだ、これは!」と本人が違いが分かったようなので、今まで安物でごめんね、と、弓を買いました。日本メーカーのアルシェという、材質にこだわったものにしました。

※30-50万以上のバイオリンの場合、弓は10万円以上がおすすめです。日本で10万円をきる弓は部材に代替品を使っていると聞きます。ただし、クラシック音楽以外では、速弾きしやすい、軽いほうが良い、カーボン素材が丈夫、など、個性や好み、相性のほうが重要で、10万以下の弓でも十分選択肢に入ります。

クラシックを弾きたいか、クラシック以外の音楽を弾きたいかで求める楽器が異なる

私の知り合いの範囲ですが、子どもの頃からではなく、大人になって趣味でバイオリンを始めたという方は、弓・ケース・本体セットで10~20万という方が多く、みなさん品質にも満足されています。無名のオールドバイオリンなど一台ずつ木目や音色に個性があり、値段とは関係ない楽しみ方もあります。またクラシックを弾きたいか、クラシック以外の音楽を弾きたいか(求める音量がソロステージ用ではない、暖かい音が良い、はっきりした音が良いなど)で求めるものが変わるので、高ければ好きな楽器とは限りません。ですが、一般的に「良い楽器」は良く鳴ります。先生が「もっと小さく美しい音を」、「もっと大きく響く音を」、「もっと歯切れよく」など言う時に、鳴りの悪い楽器でコツを覚えるのは時間がかかるのです。(逆を言えば、良い楽器でコツをつかんだ人は、安い楽器でも上手に音を鳴らせると思います。)

スウェーデンで、子どもの習い事としてのニッケルハルパ事情

次はニッケルハルパの話で、大人ではなく子どもの話です。スウェーデンではニッケルハルパ人口が少なく、特に昔は子どもが習う環境はなかったようです。今、30歳前後で活躍するニッケルハルパ奏者は、子供の頃にPuma(Peter Hudlund)に習ったという人をちらほら聞きます(他にも近所に上手な先生がたまたまいたというケースも)。そうした中で育ったニッケルハルパ奏者の多くは、最初はバイオリンではじめて、10-13歳で自分の意志でニッケルハルパを始めたというパターンをよく聞きます。子供用楽器がなかったので体格など成長の度合いとの兼ね合いもあるようです。

最近は、ニッケルハルパの子どもサイズを作って(2サイズあります)子供に教えるプロジェクトがあります。ウップランド地方の子どもは週に何時間か、小学校で習うと聞きました。聞いていると、小学校のピアニカとかリコーダーのことを思い出しました。10年後にはニッケルハルパに触ったことがある大人がいっぱいいるんでしょうね。教育機関へ子どもサイズのニッケルハルパの貸し出しがあるという話も聞いたことがあります(ToboのESIのプロジェクト)。今では、Toboのニッケルハルパの学校を出て活躍するミュージシャンが子どもの教育にも関わっていて、少しずつニッケルハルパ人口が増えていっています。

ニッケルハルパの中古事情

バイオリンの話では、中古のセットがおすすめ、お買い得!と連呼しましたが、ニッケルハルパになると、う~ん…。ニッケルハルパは、中古、特にネットで買うのは危険です。楽器の板は古ければ古いほど良いのは間違いありませんが、構造が複雑で消耗パーツがあり(日本で修理する人がいない)、プロと呼べる職人は数名しかいない世界で誰が作った楽器なのか、他にも様々な理由があります。ちなみに、ニッケルハルパの良い音色は(好みがありますが)、音量が十分あること、共鳴弦が負けないくらい良く鳴ること、音程がとれること(楽器によって、正しい音程がとれない鍵盤が何本かあったりします)、軽いことです。


思い出せないくらい久々に関東に行きます!珍しく4月以降は遠方が続きます。他は追って掲載します。

4月7日(土)13:30-(開場13:00)スウェーデンの響き 長浜ホール(横浜) 2000円

スウェーデンのトボで出会い、その後、楽器工房を開いたDulciCraft主催です。ダンスあり(ポルスクダンス東京)、講演あり(アトラスコプコ代表取締役、日本在住30年のトーマス・オスタグレンさん)、ニッケルハルパとマンドーラのトリオ(東京ヨハンソン)など、盛りだくさんの中、演奏させていただきます。

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