仮想オーディオルームを考察して最終的には可変性重視を良しとする考えに至り、それ自体の大枠に変更はないのだが、
拡散に対する考察が中途半端だったので再度考察してみる。
極力全面に高度な拡散を行うことも一つの正解となっているが、専門家の中でも拡散性を極限まで上げるだけでは良い響きにならないと考えている専門家もいることは事実である。
その理由はさまざまであるだろうが個人的な考えとしては、残響音はある程度存在すると聴感上の良好さに寄与するのは事実だが直接音に対するノイズ成分とも解釈できる。高度すぎる拡散は初期反射を残響音に変化させるため直接音の明瞭度が落ちる原因となる。
では拡散性を低くするとどうなるか?初期反射音が直接音と干渉し周波数特性を低下させる。そして残響感が減り、残響による聴感上の効果を得られない。
結局の所はほどほどの拡散を行うのが正解の一つとなるだろうし、自分の志向としてはそれを旨としている。
ではどういうやり方でどの程度拡散させるのが良いかというのが今回の思考実験のメインテーマである。
スピーカーよりも外側から到来する初期反射は見かけ上の音源の幅を増大させ、聴感上の好ましさを与えていることは科学的に検証されているのでそこは利用したい。
逆に内側や後方からの初期反射は聴感上のマイナス効果があると検証されているのであまり利用したくない。
利用したい部分と利用したくない部分があるのであれば、利用したい部分は高度な拡散を行わず、利用したくない部分は極力拡散すべきとなる。
部分的に拡散させておけば結果的に残響もほどよい感じについてくるはずなのでコンセプトとしては良さそうに思える。
ただ、利用したい部分の初期反射面もそのまま利用すると直接音と位相干渉し周波数特性が悪くなってしまう。
そこで利用したい部分の初期反射面は反射方向を拡散はさせないものの、いっぺんに反射させず、細かくタイミングを少しずつずらして反射させれば位相干渉を緩和できるのではないかという発想になる。

これ自体は以前から考えていたが、実際にそうなるのかシミュレーションで検討してみる。
利用したいのは基本的にはスピーカーと同側の壁であとは床と天井が使えるか使えないかという程度である。
前壁・後壁・反対側壁ははじめから拡散とする。
以前の深さ30cmの棚を敷き詰めた仮想本棚部屋で考えると壁に当たってリスニングポジションに入射する場合の遅延が1.85m、棚の再前方で反射する場合の遅延が1.34mと考えられる。


つまり1.34m~1.84mの間で遅延量が分散された場合にコムフィルタ効果がどうなるか考えてみると下のグラフのようになる。なお床の0.74mの遅延も同時に入れ込んでみた。

青い点は無視しつつ、上の青線が直接音を増幅させ、下の赤線が直接音と干渉し減衰させる。横軸は周波数である。
表計算ソフトの簡単な計算でしかなく、人に見せる工夫はされてないので分かりづらいのだが、300Hz近辺での位相干渉によるディップが大して緩和されていないことがわかる。400Hz辺りが逆に持ち上がってしまいそうだ。それ以降はあまり問題にしなくていいだろう。そして床の反射波はピークディップを緩和させる効果がなくむしろ悪化の助長をしているように見える。
では側壁の奥行きをさらに15cm増大させ、1.34m〜2.09mの遅延量の範囲で分散させるとどうなるか?
下のような感じになった。

比較的相殺され周波数特性が極端に減衰する場所がなくなった。
棚の前方での反射を多めにするとさらに周波数特性的にバランスがよくなった。

この条件を得るにはスピーカー側の側壁とスピーカーは1.42m離しつつ45cmの棚の厚みが必要ということになる。
全ての壁でこの棚の厚みは厳しいので側壁の一次反射面のみ棚の奥行きを変えてもいいのかもしれない。
壁との距離1.42mは仮想ルームではサイズオーバーなので、元の1.34mの壁から45cm棚を設置してみる。1.10~1.85mの範囲での遅延で棚の前方で反射を多くする配分にすると下図のようになる。

元のサイズでも良い感じに周波数特性の極端な凹凸が相殺されそうな気がする。床の影響も凹凸を平らにする方向で配置されている感じだ。これなら機能することを期待できる。
棚の深さを40cmにすると不十分だったので、一次反射面の棚の深さだけ45cmにするというのは仮想ルームでの一つの改良点となりそうだ。

これだけ工夫をしても周波数の凹凸は完全になくならないし、凹凸を完全になくしたいなら高度な拡散や吸音でもいいだろう。
ただ今考えているのはモニタールームではなくリスニングルームである。
リスニングの場合周波数特性はある程度整っていれば良いのではないかと考えており、極限までフラットにすればモニターには好都合だろうが、リスニングとしては悪い音ではないという評価止まりである。
むしろ音の歯切れの良さ、音像の広さ、音像の明瞭さ、普通の部屋では味わえない残響感などがある方が特別な音、良い音、感動する音になってくれる可能性があり、周波数特性とのバランスを勘案しながらそれらを引き出す工夫が大事なのではないかと思う次第である。
拡散に対する考察が中途半端だったので再度考察してみる。
極力全面に高度な拡散を行うことも一つの正解となっているが、専門家の中でも拡散性を極限まで上げるだけでは良い響きにならないと考えている専門家もいることは事実である。
その理由はさまざまであるだろうが個人的な考えとしては、残響音はある程度存在すると聴感上の良好さに寄与するのは事実だが直接音に対するノイズ成分とも解釈できる。高度すぎる拡散は初期反射を残響音に変化させるため直接音の明瞭度が落ちる原因となる。
では拡散性を低くするとどうなるか?初期反射音が直接音と干渉し周波数特性を低下させる。そして残響感が減り、残響による聴感上の効果を得られない。
結局の所はほどほどの拡散を行うのが正解の一つとなるだろうし、自分の志向としてはそれを旨としている。
ではどういうやり方でどの程度拡散させるのが良いかというのが今回の思考実験のメインテーマである。
スピーカーよりも外側から到来する初期反射は見かけ上の音源の幅を増大させ、聴感上の好ましさを与えていることは科学的に検証されているのでそこは利用したい。
逆に内側や後方からの初期反射は聴感上のマイナス効果があると検証されているのであまり利用したくない。
利用したい部分と利用したくない部分があるのであれば、利用したい部分は高度な拡散を行わず、利用したくない部分は極力拡散すべきとなる。
部分的に拡散させておけば結果的に残響もほどよい感じについてくるはずなのでコンセプトとしては良さそうに思える。
ただ、利用したい部分の初期反射面もそのまま利用すると直接音と位相干渉し周波数特性が悪くなってしまう。
そこで利用したい部分の初期反射面は反射方向を拡散はさせないものの、いっぺんに反射させず、細かくタイミングを少しずつずらして反射させれば位相干渉を緩和できるのではないかという発想になる。

これ自体は以前から考えていたが、実際にそうなるのかシミュレーションで検討してみる。
利用したいのは基本的にはスピーカーと同側の壁であとは床と天井が使えるか使えないかという程度である。
前壁・後壁・反対側壁ははじめから拡散とする。
以前の深さ30cmの棚を敷き詰めた仮想本棚部屋で考えると壁に当たってリスニングポジションに入射する場合の遅延が1.85m、棚の再前方で反射する場合の遅延が1.34mと考えられる。


つまり1.34m~1.84mの間で遅延量が分散された場合にコムフィルタ効果がどうなるか考えてみると下のグラフのようになる。なお床の0.74mの遅延も同時に入れ込んでみた。

青い点は無視しつつ、上の青線が直接音を増幅させ、下の赤線が直接音と干渉し減衰させる。横軸は周波数である。
表計算ソフトの簡単な計算でしかなく、人に見せる工夫はされてないので分かりづらいのだが、300Hz近辺での位相干渉によるディップが大して緩和されていないことがわかる。400Hz辺りが逆に持ち上がってしまいそうだ。それ以降はあまり問題にしなくていいだろう。そして床の反射波はピークディップを緩和させる効果がなくむしろ悪化の助長をしているように見える。
では側壁の奥行きをさらに15cm増大させ、1.34m〜2.09mの遅延量の範囲で分散させるとどうなるか?
下のような感じになった。

比較的相殺され周波数特性が極端に減衰する場所がなくなった。
棚の前方での反射を多めにするとさらに周波数特性的にバランスがよくなった。

この条件を得るにはスピーカー側の側壁とスピーカーは1.42m離しつつ45cmの棚の厚みが必要ということになる。
全ての壁でこの棚の厚みは厳しいので側壁の一次反射面のみ棚の奥行きを変えてもいいのかもしれない。
壁との距離1.42mは仮想ルームではサイズオーバーなので、元の1.34mの壁から45cm棚を設置してみる。1.10~1.85mの範囲での遅延で棚の前方で反射を多くする配分にすると下図のようになる。

元のサイズでも良い感じに周波数特性の極端な凹凸が相殺されそうな気がする。床の影響も凹凸を平らにする方向で配置されている感じだ。これなら機能することを期待できる。
棚の深さを40cmにすると不十分だったので、一次反射面の棚の深さだけ45cmにするというのは仮想ルームでの一つの改良点となりそうだ。

これだけ工夫をしても周波数の凹凸は完全になくならないし、凹凸を完全になくしたいなら高度な拡散や吸音でもいいだろう。
ただ今考えているのはモニタールームではなくリスニングルームである。
リスニングの場合周波数特性はある程度整っていれば良いのではないかと考えており、極限までフラットにすればモニターには好都合だろうが、リスニングとしては悪い音ではないという評価止まりである。
むしろ音の歯切れの良さ、音像の広さ、音像の明瞭さ、普通の部屋では味わえない残響感などがある方が特別な音、良い音、感動する音になってくれる可能性があり、周波数特性とのバランスを勘案しながらそれらを引き出す工夫が大事なのではないかと思う次第である。