モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

オーディオルームの音響設計を考える 2020.08

2020-08-15 10:33:55 | オーディオ
現時点での今自分の持っている知見でオーディオルームを設計していくとどういうものがいいのか暫定版で考えてみる。

まず低域対策として、
100Hzを下回る低域は積極的に外に出してしまった方が良いように思える。
部屋の構造としては1棟独立した形態の1階建て木造で良いだろうと考えている。
爆発音満載のシアターであればまだしも、音楽の場合は低域がモリモリ入っている音源はあまりなく、
常識的な防音がしてあった上で近くに近隣の家と距離をとれば近所迷惑には到底ならない。
室内に音が漏れるという対策としては「離れ」のような構造になっていれば室内騒音は基本的には存在しない。
RCで壁をガチガチに固めたり地下室にしたりすると、10m前後の低域と向き合わなければならず、1mを超える厚みの吸音材を入れないと本格的な対応ができない。
共振や太鼓現象、コインシデンス効果などが起こらないようにしつつ、近所迷惑にならないように立地で配慮しつつ、低音は抜けていくのが現実的には最適解だろう。

初期反射音としては少なくとも第一波面の法則が成立する30ms以内は初期反射として処理する必要があるようだ。距離にして10m程度。
初期反射は排除する場合と残す場合があるが、排除する場合は吸音でも、方向を逸しても、拡散しても何でもいいとは思われる。
正確な意味での拡散が活きてくるのは残響の方だというのが自分の認識だからである。
自分としては排除すると音が薄く、前に出てこない音になるので好みではないこと、
また初期反射音があることによりASW(音場音像の幅)の拡大が望めるため、自分は完全には排除しない方針でいる。
ただ一次反射の一般的な床、側壁、天井、正面壁、後壁からの反射音だと直接音との位相干渉でカラーレーションは避けられない。
今の環境だとそれぞれの反射音で位相干渉させて直接音と干渉させづらくさせているが、完璧ではない。
またインパルス応答上もスムースな減衰をしていない。
そのため一次反射面に拡散しきらない程度に日東紡的な発想で円柱を並べて、「側壁、正面壁から壁の反射音が1つずつではなく数個ずつ程度リスニングポイントに到達するけれど、一つ一つは大きくない」という状態にするのが良いのではないかと思っている。
床もハードルは高いが同じことをしてもいいのではないか。
ただ、音遅れを数センチずらせたとしても位相干渉の緩和効果は少ない。ある程度実効性のある配置にする必要がある。
円柱で弱めの反射音を複数箇所から取り込むとしたらどのように配置すべきか。
円柱を縦に配置する方法と横に配置する方法がある。

縦のイメージ

出典:https://www.monoandstereo.com/2016/05/analog-room.html#more


横のイメージ(オーディオルームではないけれども)

出典:https://www.okutadami.jp/facility.html

縦に配列する場合は上から見た反射面として

こんな感じで反射音の入射が得られる

横に配列する場合は反射面として

こんな感じの反射音の入射が得られる。

縦の場合の特徴として
・丸い柱なので建材として多く選択肢がありそう
・水平方向に様々の方向に入ってくる
・その分反対方向からの反射音が迷入してくるので定位感は不利な可能性はある
・複数の音が入ってくるが遅延は案外そんなに変えられない。反射面を水平に50cmずらしても遅延は10cm程度しか変わらない。


横の場合の特徴として
・横に半円形の建材を並べる手法はログハウス建材以外なかなか見つからない
・高さを無視した二次元で考えると反射面は変わらないのでシミュレーションしやすい。
・反対方向からの音が入ってこないようコントロールできる。
・ASWの水平的な拡大はしづらい
・遅延の程度を変えやすい(三次元のため計算はできていないが)

以上の特徴が想定できることから横方向に円柱を並べる方が有効と思われる。



残響に関してではあるが残響時間を無理に伸ばさなくても良いと思われる。
ソースに残響音が既にある程度入っていること、
オーディオルームで残響音を伸ばすのは限界があること、
残響はS/Nで言えばノイズに相当するので長すぎてもS/Nが悪くなることからである。
とは言っても可能であればLEV(音の包まれ感)が出るような環境を作りたいものである。
LEVをしっかり生じさせるためには残響音圧のレベルが聞こえないくらい下がりきる前に部屋の音波が完全に散乱した状態にしてやることがポイントなのだと思われる。
そのために残響時間を延ばすという方法が取りづらいので、拡散性を上げていくのが必要になってくる。

壁四方にトゲトゲのような拡散体を作れば100ms以内にだいぶ拡散状態にもっていけるようなので基本的にはくさび形の拡散体がいいのだろうか。
先日上げた論文では拡散体の幅は160cmのものを使っていた。

LEVは500〜2000Hzが関与しているので波長としたら17〜68cm程度なので60cm以上の幅の拡散体が欲しいところだ。それより細かいものがあっても良いが、60cm以上の拡散体も作っておかないと拡散する周波数が偏りが出てしまいそうである。
リスニングポイントの真横から後ろにかけてはクサビ型の拡散体を詰めておくのがいいのではないだろうか。
クサビ以上に具合に良い物がないか今後調べてみたいと思うが、数十センチ単位の拡散体にしようと考えると現実的な選択肢は限られそうな気もする。
LEVの音は直接音と相関性の低いぼやけた音であっても問題ないとの研究結果があったので後ろ側の壁は正確に反射する必要ないと言えるかもしれない。なのでそのエリアは強固に作ることが必須ではないのかもしれない。
もちろん共振や太鼓現象が生じてはいけないのだが。

以前に考えた部屋の設計図もある程度クサビ状になっている。この設計図でスピーカーの側面と正面壁を横方向に円柱に並べたような部屋が現時点では自分の理想にはなってくる感じか。
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室内音響かいつまみ③

2020-08-13 12:41:06 | オーディオ
江田和司氏の東京大学の博士論文

拡散性制御に基づく室内音響設計に向けた音場解析に関する研究
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=8550&item_no=1&attribute_id=14&file_no=1

細かいところは正直難解で自分には厳しそうだが、部屋に拡散体をどう配置するとどんな感じで拡散されるか測定したものがあるのでそのあたりをピックアップ

以下の画像の出典は上記論文からの引用
256m^2(16m四方)の正方形の部屋の音波が反射を繰り返して拡散していく挙動
オーディオルームに応用するには広めではあるが、500ms(0.5秒)経過してもまだ十分に拡散されていないのがわかる。
オーディオルームの残響時間は200~800ms程度だろうから十分拡散されLEVを感じられるようになる頃には聞こえないくらい減衰してしまっていると考えれる。





平坦な正方形の部屋(上)と拡散体を敷き詰めた部屋(下)の反射波の挙動
拡散体がないと100msでもかなり偏りがあるのに、
拡散体があると50msでもかなり乱反射状態となり100msで相当な拡散状態になってくれている。これならLEVを感じることは期待できそうだ。



拡散体がない部屋(上)1面に配置した部屋(中)2面に配置した部屋(下)の反射波の挙動。
なんとなく予想されているように面が多いほど拡散が早くなる。拡散体が配置されていない方向には方向性が時間が経過しても若干残ってしまっている。1面よりもむしろ2面に残っているような感じもする
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室内音響かいつまみ②

2020-08-12 12:44:25 | オーディオ
Twitterの#お前らのオーディオ環境晒してけのトレンドに少し便乗。
TwitterやInstagramはブログよりも他のオーディオファイルと交流しやすいことに魅力は感じているものの、
備忘録として記録をしていく分にはブログの方が使い勝手がいいので、今後どう活用していこうかと模索中。

今回はLEV(音の包まれ感)についての論文のかいつまみ

パイオニアの技術者の論文

https://jpn.pioneer/ja/manufacturing/crdl/rd/pdf/14-2-2.pdf


時間軸をずらした人工的な残響を付与することで狭い部屋でも広い部屋の響きを作ろうという機能の基礎研究のようだ。
こういうものはヤマハでもやっているが、人工的な響きになりがちなのであまりステレオ再生と相容れるものではないが、すばらしい技術だと思う。
それだけにここ最近のAVアンプを半分撤退したような状況は惜しい。

LEVを感じやすい周波数、そうでもない周波数があるようで500Hz〜2000Hzが特にLEVには重要な周波数のようだ。残響をコントロールする際にはこの周波数に効くよう狙っていくことが大事と言える。
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室内音響かいつまみ

2020-08-07 12:54:39 | オーディオ
飯田 一博氏の学位論文
音像の空間的性質の評価に関する研究

http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/thesis/d1/D1001220.pdf


古めの論文ではあるし学位論文ではあるが、かなりダイレクトな内容で実験もしっかりしている。この人は室内音響学の専門家として千葉工業大学で教授になっているようだ。
かなり長い論文だし、分からないところも多いのだが後々のtipsとして使うため、使えそうなところをかいつまみしてメモしておくのが今回の記事。第一筆の時点では完全に読めていないので適宜加筆予定。

第一波面の法則
1~30msの遅れによる間接音は直接音と区別ができない。ASWや音の厚み、コムフィルタ効果によるカラーリングなどに関与はしているが、早期反射音は30ms以内で考えればいいのだろうか。30msは10m程度である。遅れが10m以内の反射音を処理してしまえばRefrection Free Zoneを作れるということか。

ASWは反射音の大きさによっても変化する。
見かけ上の音像の幅(見かけ上の音場の幅もあり区別されているようだが区別が理解できていない。後で読み直す予定)は早期反射音の遅れの程度や両耳間相関関数などによって変わるが、音量の大きさによっても変化する。
 →つまり、一次反射面を半分反射半分吸音の様な構造にすることによってもASWの大きさを調整できる。

ASWの幅は反射音の入射角には依存せず両耳間相関関数のみに依存する。
結局ステレオ再生上は入射角が変わると両耳間相関関数が変化するので、反射音の角度に依存しているということになりそうな気がするのだが、後で再読して確認するためメモしておく。

ASWは周波数依存性があり、低域の寄与度は低い。
ASWの幅は反射音の両耳間相関関数のみに依存する、ということから自ずと分かることではあるが、
低域は回り込みやすく波長が長い分位相が変わりにくいので左右の耳で同じようにい聞こえてしまう。そのため音像の幅に低域が寄与する要素は比較的少ない
それを応用すれば、ASWだけを考慮して反射吸音拡散などの壁面処理をする場合、低域まで処理する必要がないということになる。つまり馬鹿でかい反射吸音拡散の装置を置かなくても効果は期待できることになる。

まだ理解がさっぱり追いついていないのだがこの人の他の論文や著書、同じ部屋の人の論文、参考文献などをあたると欲しい情報が入手できるのかなとは期待している。
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