モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

仮想リスニングルーム後壁のデザインについて考える。

2023-02-24 14:35:17 | オーディオ
リスニングルームにおける後ろの壁は拡散性(一次反射音をそのまま返さない)と必要に応じて吸音を増やせること、そして左右対称性があればそれで十分と考えており、最近よく考えている視覚的な空間印象に関してもリスニング中に視界に入ることはない部分なので関係ない。そういう意味ではアプローチの仕方が以前から何も変わっていない部分ではある。

ただある程度自由が効くということと、視覚効果を無視して問題ないことから、リスニングルームの居住性を向上させるためのアメニティを組み込み易いためバックヤードとしての機能を期待されやすく、そのあたりとの兼ね合いを考えることになる。
またリスニング時の空間印象とは関係ないながらも、非リスニング時のくつろぎ空間としての印象も考えなければならない。オーディオシステムから出現する音場の空間印象とは無縁であるため軽視されがちではあるが、足を運びたくなるリスニングルームであるかどうかに影響しているので配慮するに越したことはない。

最初はクサビ型のオブジェを並べたが、やはりバックヤードとしての利便性と拡散性を両立させるなら棚がベストになるのだろう。



ということで拡張性の高そうな正方形の立方体の棚を並べたが、見た目上のデザイン性はイマイチだと毎回思ってしまう。



そもそもリスニングルームにこんなに収納は必要ないと思われるので、一部は収納にもできるし音響調整にも転用できる部分とし、その残りは収納はできないが音響調整はできる部分にしてもいいのではないか。


pinterstであった↑図のようなデザインを取り入れてみる。


手の届きにくいところは収納としないことにすることで、過不足ない収納力にしつつ実際にも採用実例もあるような意匠性を持たせている、縦方向のリブ部分を一次元のQRDにしたり吸音材を挟んだりなど調節性を持たせている。設計した時はこれでいいんじゃないかと思ったが、日を改めて見直すとデザイン微妙だなと思ったりもする。むしろ正方形の棚を敷き詰めた方が良いような気もしてくる。。。後壁は音の尺度とは異なる要素を考慮する部分が多く、いつまで経ってもこれはいい!という感じにはならない。

バックヤードの天井についても考えてみる。他の部分の天井と同じでいいだろうというのが普通なのだが、バックヤードのみルーバー天井とすることもできる。
ルーバー天井とすることでのメリットはリスニングルーム全体としての天井高や容積を確保しつつ、くつろぎを目的とする空間のみ天井を低くすることで落ち着きやすい空間にするという目的がある。
ルーバー天井自体にある程度の拡散性があることもメリットではある。
ルーバーの上にロフトのような空間が大きく取れることもあるため物置だったり音響調整をできる幅も広がる。



以前から後方の天井を低くすることは中2階構想などで度々俎上に載せることはあったが、今回は上での居住というものはほとんど考慮せず、天井を低くすることが主目的で副目的として音響調整を狙ったものとなる。
ただ今回の考察でも結局バックヤードのルーバー天井は採用すべきではないという考えになった。
理由は天井高を低くする必然性が低いことである。天井が低い方が落ち着く場合もあると言われているが、その効果がどの程度期待できるのかが微妙ではある。
そしてルーバー天井だと必然的に暗くなり易い。ルーバーから光は入ってくるが、当然ながら入ってくる光量は減ってしまう。暗い部屋は居住性が悪いというのが現オーディオルームの反省点だけに同じ轍を踏みたいとは思えない。
光量を補う照明もルーバー天井だと間接照明のような柔らかな光になりづらい。スポットライトのような使い方になってしまいがちである。この採光に対する制限がルーバー天井を入れることをためらうことになる最大の原因にはなってしまっている。
pinterestにあった実例



そのため他の壁と同じように、格子の作業用通路のみの設置とした。



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新仮想ルームと旧仮想ルームの空間印象を比較してみる。

2023-02-17 13:09:10 | オーディオ
仮想リスニングルームの現時点でのデザインがある程度形になったところで、以前に設計した格子と棚を多用したリスニングルームと空間印象の違いを比較してみる。

新仮想ルーム


旧仮想ルーム


格子のリスニングルームの方がそもそも寸法が縦長であるが、それを抜きにしてもだいぶ圧迫感や広さの印象が変わるような気がする。
どちらも現実的には存在しない部屋であるにも関わらず、画像を見るとどんな響きの部屋かなんとなく想像できてしまう。
特に旧仮想ルームの側壁の圧迫感というのが結構感じ易い。実際に狭いというのと膨張色の木の色を使っているのと格子が視覚的主張が強いのでより大きな圧迫感を生み出しているのかもしれない。
そうした先入観が実際の音場の印象にも影響するという研究結果があるのであれば、空間の印象というのも馬鹿にはできない。

無地の空間も作ってみる。

白背景


黒背景


どっちにしろ無地だと空間の大きさ奥行きなどの手がかりが少ないという印象を与えてしまう。
具現化すれば照明の光の当たり方によって奥行きは分かりやすくなるのかもしれないが、ずっと奥行きを感じづらい無地の壁を見続けながら音楽を聴くというのは、奥行きを認識しようとしてもうまく認識できないストレスを無意識に感じ続けるのであまり良い物ではないかもしれない。
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天井の音響調整について考え直してみる

2023-02-15 16:50:31 | オーディオ
以前に仮想リスニングルームにおいて天井の音響を安全に調節しやすくするための解決策として、天井をルーバーにしてルーバーと天井の隙間に音響調整材を置けば良いという考えに至った。
ルーバー自体に拡散性がありつつ、間に置くというのは取り外しがしやすい、ルーバーが下にあるので落下リスクが小さいというメリットがあるというのがその理由だが、本当にそれで機能するのか疑問に思う部分が残っていた。

設置例としてpinterestより引用




・1つは天井用のルーバーは既製品は中空のアルミ製が多い。コストだけでなく重さの問題もあるのだろうが、中空式のものが音が良いとは思えない。それにルーバーの上に重量物を設置することは設計上想定されていないので音響調整材を設置するということは重量的に危険だろう。
・では既製品に頼らず本物の木の板でルーバーを作ればいいということになるが、あまりに大規模に重いルーバーを天井に設置すると駆体の重量バランス的にどうなのかという疑問がある。
・高所作業用通路からルーバーの上に音響調整材を乗せるということを想定しているのだが、通路は必然的に壁際になってしまっている。だが高所の反射面として一番重要な一次反射面は部屋の中央付近に存在しているため壁際の通路から届くのかという疑問が生じている。
・ダウンライトは光が局所的に強いためコントラストが大きく視覚的な刺激が強い傾向にあり、リスニングの支障となりうる。そのためメインの照明は柔らかな間接照明を直接目に入りづらい高所から入れる設計が望ましいと考えているのだが、間接照明はなるべく何もない平坦な壁に照らすからこそスムーズに移行するきれいな光を得られるので、いろいろ設置する壁には望ましくない。ルーバー天井でしかもルーバーの上に音響調整材を設置するというコンセプトと相性が悪い。

この辺りが未解決であり、考え直す必要があるのではないか。

そこで重要性が高い中心部分付近にのみルーバーを付ける案に練り直した。


これで間接照明を照らす部分の平坦性を確保できる。ただこの高所のルーバー上にどうやって音響調整材を設置するのかという疑問が解決していない。見た目的にもあまり気に入らない。

そもそも天井の音響調整の調節性を極限まで高めることに意味があるのかという疑問を考え直してみる。
現実的に天井のルーバーの上にポン置きという手法を用いて音響調節するとして、
溝が10cmを超える木製の本格的なQRDを設置したり、重量のある強固な反射壁を設置するだろうか?という疑問を考えてみると、現実的にはそれを行うことはしないだろう。通常時は落ちてこないにしても地震の時に落下リスクがあり、その場合には死亡事故につながりかねないからだ。
ルーバーの上にポン置きで音響調整材を設置するとしても、それは吸音材以外は現実的ではないと思われる。
天井は吸音材のみを調節性を持たせて設置するということであれば別にルーバーにポン置きスタイルである必要はない。
ダクトレールは耐荷重20kgまであり、ライトを照らすだけでなく、物を吊すことができる。吸音材であれば耐荷重20kgあれば十分である。

引用:TOO GARDEN

また吊すスタイルであれば天井にピッタリくっつける必要もないので、背面空気層を確保できる分吸音効果は大きい。定在波の腹も狙いやすいので定在波の調節効果も高い。


グラスウールなどの多孔質吸音材も音響透過性の高い篭などにくるんで球状にして吊り下げる分にはきれいに作れば高天井の照明のようにそれ自体もインテリアにもなりうる気はする。

引用:amabro
とはいえ見た目上まともになる根拠はないのだが。

とはいえ天井の音響調整は軽量な吸音材をダクトレールで吊り下げるという手法であれば落下リスクも小さく、万が一落下しても大きな事故に繋がらないという意味で現実的なのかもしれない。以前よりも音響調整の幅が狭くなってしまったが、やはり天井を後付けでなんでもやれるようにしつつ、安全性も高いというのは無理があるような気はする。
ただ今回の音響調整の場合、積極的な反射や拡散を追加することはできない。なので最初から固定する内装で決め打ちである程度の音響調整を完成させなければならない。追加で出来ることが多少の吸音しかできないから当然ではある。
となると内装として最初から拡散体を設置することになるのだろうか。天井をあまり拡散させてはいけない理由もない、吸音は後からでもできるシステムとなるとこういう考えにはなる。天井なので拡散体も大規模だと重量による問題が出てくるので、比較的効率の良い一次元QRDが無難になるのだろうか。
天井全面に貼ると間接照明が使いづらい+コストが多大になる+壁際は作業用通路があるので後から調整できるという理由からスピーカーの内側(2.5m幅)部分のみに設置する案とした。


球形の吸音体自体が遠近感や天井高さを強調するので視覚効果自体は良さそうな気がするが、邪魔にならない程度の大きさで十分吸音できるのかは疑問は残る。本格的に吸音をしたい場合は壁際の作業用通路部分での吸音に頼らざるを得ないとは予想される。

当初よりも調整性という理想は後退したが、当初の案がやや非現実的なので仕方ないだろう。天井の広い範囲を格子天井にして格子の裏をロフトにすれば安全に天井の音響を調節することもできるが、格子からの反射が若干の天井を低くする効果があったり、デザインに制限があったりなど調節性と引き換えに犠牲になるものも多くあまりその方向が望ましい感じにはならなかった。
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ASWの視覚情報による補正効果

2023-02-10 12:31:55 | オーディオ
今月から日本音響学会のフリーアクセスになった論文
建築空間における音の広がり感に対する視覚情報の影響
——建築音響分野におけるクロスモダリティ研究——
日本音響学会誌 78 巻 8 号(2022),pp. 437–442
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/78/8/78_437/_pdf/-char/ja

を読んでみた。

気になる部分を抜粋(一部改変)

・聴覚刺激のみで判断した距離感に対して,視覚情報が加わることによって,視覚刺激のみで判断した距離感に近づく傾向が見られ,判断の精度が上がるように補正されたと解釈できる。
・聴覚情報から得られたASW は,視覚情報が伴う場合,視覚によって判断(予想・期待)された ASWに近づくように補正される。一方,同一の音源から視覚と聴覚を通して得られる二つの情報は脳内で統合(視聴覚統合)されるが,両者の乖離が大きい場合は視聴覚統合が成立しないため,視覚印象と聴覚印象は独立し,相互の影響は見られなくなり,ASW は聴覚情報のみで判断される。
・視覚で期待されるASWと聴覚のASW が一致している場合には,補正の必要がないため,視覚情報の影響は現れないと考えられる。
・視覚情報が加わることによる ASW の変化は,聴覚刺激のみによる ASW と,視覚情報から予測・期待される ASW の間に生じたギャップが原因であると考え,視覚情報から期待される ASWに近づくよう補正効果が働いた結果と考えた。

これをステレオに応用することを考える。音の広がる感じや広大な音場は、広大な部屋である場合には目を開けていれば視覚効果がASWを補強して目を閉じて聴いているよりも広々と鳴るように感じる。普通の部屋であれば目を開けている場合には音場よりも小さな空間で鳴っているように補正されてしまう。
個人の楽曲再生用途のスピーカーは小空間で再生することを想定しており、大空間での出力で実力を十分に発揮できないし、そもそも個人で用意できるものではないので、ホール並みの大空間で鳴らせば良いというのは現実的ではない。

視覚情報によりASWをブーストするのは広大な庭と正面壁を全面ガラス張りにでもしない限りは現実的ではないにしろ、大幅にナーフされることは避けたい。リスニングポジションの正面は特に実際に空間をできるだけ確保しつつ、近接感圧迫感の少ない視覚的デザインにすることは必要なのではないかと思われる。

いずれにせよ実際に音を出しているステレオスピーカーの視覚効果はやっぱりあまり望ましいものではない感じはしている。コンシューマー向けのスピーカーの場合、本格的なものであればあるほど大きく派手な外見のものが多いが、視聴覚統合の際の補正効果が大きく、今回のASWに関しても悪化する方向に補正されてしまうし、左右に寄った音像が全てスピーカー部分に吸い寄せられてしまう気はしている。
非マニアに好まれがちなインテリアに馴染むスピーカーの方が視聴覚統合という観点では良いスピーカーと言える部分もあるのかもしれない。
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照明シミュレーションで照明計画を考える

2023-02-08 16:26:45 | オーディオ
前回設計した仮想リスニングルームで頭の中で想定していた間接照明をDIALuxに入れてみた。
DIALuxである程度の建造物データを入力して照明を入れてみたが、なんというか本当に稚拙な感じの照明効果になってしまっている。
照明効果の理詰めがちゃんとできていないまま考えてしまったのでこうなってしまったのだろう。


1から考え直してみることにする。
正面壁の間接照明は室内の光量確保目的という意義は薄い。間接照明の柔らかい光であるとは言え、リスニングポジションの真正面から光を照らされても眩しさを感じてしまうだけでマイナスになってしまう。
照明効果により正面壁の視覚効果を補強するのが目的で、部屋の明るさを確保するための十分な光量は必要ないという考えで良いということになる。
正面壁の視覚効果の補強となると、奥行き感を強調させることと凹凸のあるウォールデザインとする場合に凹凸による陰影を強調させることが目的になる。

「奥行きを強調する」という表現が正確に解釈するならば「既にある奥行きを感覚的により深い奥行き感にする」ということになる。と言うことは実際に奥行きのある構造を作らなければならず、照明によりその奥行きを強調する必要がある。
pinterestで例示できるものは下図のようなものになるのだろうか。



モデル図としてはこんな形になるはず。



ただ問題なのは吸音や拡散を行いたくて壁の前に何かを設置したい場合、この照明効果を遮蔽してしまい、調音体が悪目立ちしてしまう可能性が高い。
拡散体自体は光を乱反射することが期待できるので良しとするべきかなかなか難しい。


そもそも照明効果で奥行き感を出させようとする場所を後から自由に調音しようという姿勢に無理があるのかもしれない。決め打ちで対応していく方が良さそうに思える。

そこで間接照明の部分をQRDの溝のように用いて、拡散体と建築化照明を兼ね備えるようなデザインを設計してみた。


溝の深さはランダムではないので実際にはQRDではないのだが、数種類の溝の深さがあるので拡散効果はそれなりに期待できる。一般的なQRDの使用法とは向きが90度違うので、拡散よりも反射の挙動の方が多いかもしれないが、反射をするにしても段差が複数あるため、時間や位相がある程度分散される効果は期待できる。

DIAlux evoで入力してみるが、設定が悪いのか線光源の設定が上手くいかない、一部の光源しか点灯しないなどうまくシミュレーションできない。




なのでカリモクのシミュレーションで引き続きやってみることに。

段差がわかりにくいので一時的に明るい色に変更

間接照明点灯した場合の光を黄色や白の物体で代用的に表現した場合



窓を開けた場合



遠近法の錯覚をさせる意味では段差は等間隔ではなく遠近法に近い段差にした方が良さそうだ。溝が拡散できる周波数的にも整数倍出ない方が良い。奥に行くほど光源が上方向にシフトすると遠近法的にはなお良いか。


のっぺりしたシミュレーション画像にも関わらず、設定値以上の奥行きを感じることができる。少なくとも圧迫感や近接感は感じないような印象はある。
所詮は視覚効果でしかなく聴音への影響は若干あることは言われているが、決して大きなウエイトを占めているというものではない。その程度の効果に対してここまであからさまな施策を行うことが正当化されるのかは結構疑問なところはある。

ただリスニングルームのインテリアは
・出音に見た目なんて関係ないから音が良くなるような物を最大限設置するのが良いに決まってるという考え方
・出音に見た目なんて関係ないから何も考えずに好きな見た目にすればいいという考え方
・視覚情報がうざったいから、黒か青か白一色だけでいいという考え方
・塗装の少ない木の音が良い反射音のはずだから全面木目を出せばいいと言う考え方
この辺りが支配的である中で、好み好みでないという基準でなく、現在ある知見を利用するととどのような内装が聴感の良さに貢献できうるか、という観点からインテリアデザインを考えるきっかけにはなったので意義はあったのかなとは思っている。
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