モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

オーディオを通じて心理的な豊かさを得るための方法を考える。

2022-02-23 19:04:38 | オーディオ
若い人がオーディオをやらない、先細りが著しいなどが定期的に言われているが正直なところ思うところは多くある。
基本的には時代の価値観に合っていない趣向だからというのが大きいのだと思う。
物を所有することに重点を置かない価値観が優位になりつつあること、音楽鑑賞を趣味とする人口が減少していること、都市部の人口集中により集合住宅に居住している人の割合が増加していることなど時代に合っていない点が多すぎる。

ただ最先端の価値観を持っている人達がケチだったり貧乏だったり酸っぱい葡萄の自己正当化をしたりしているわけではなく、むしろより正しい価値観を持っているとは思える。
一昔前の世代の人間が車や腕時計などでやっているような、よりグレードが高い物を競い合うように買い集める価値観の方が望ましいとは言えないのではないか。

ただし、オーディオ機器や音楽鑑賞に時間をかけて浸っていることで、人生における充実感や心の豊かさを感じる人がいるのはいるのは、どの世代でも自分を含めて一定数いるのは事実である。
そういう人種が自らの充実感や心の豊かさのためにオーディオ趣味を続けていくというのはどの時代の価値観であれ概ね肯定されるべきものである。

逆説的な例を挙げてみる。オーディオ機器を買い揃えることで充実感を感じ、他に特に趣味と言えるものがない人に対して、物を買い集める行為など悪趣味だと批判して抑止して、余裕資金を有効に使わせないまま一生を終えさせることが良いことなのかというと違うだろう。

ただ、オーディオ趣味であったとしても音質を追求すること、良い高価な機材を買うということは心の豊かさを得るための手段の一つでしかないということは留意せねばならない。
オーディオ趣味は機材を吟味することで音質を追求する過程に充実感を感じたり、音楽鑑賞による心理的な充足効果を高めることが目的であると考えている。
良好な音質や高価な機材はその目的を達成するために有効な物ではあるが、高価な機材で音質が良くなったからと言って必ずしも心理的な充足感を得られる訳では無い。
音質的にはプラスに働きそうではあるものの、心理的には豊かにならない方向のものは採用に慎重になった方が良いのではないか。
例を挙げるとするなら、機材の価格がオーナーにとって高価すぎるため購入することで生活に影響を及ぼす場合、機材が大きすぎるなどして部屋の居住性を損なう場合、デザインが個人的に好みでなかったり設置により室内の美観を損なう場合、オーナーにとって取るに足らない程度の音質向上効果しかない場合、オーナーにとって望んでいない方向に改善する場合などがそれに該当する。

そして割とやりがちになってしまうことではあるのだが、同じ趣味を持つ人達に対して優越感を持つことができるようにすることを目的に機器を買い進めること、マウンティングの道具に使うのは可及的に慎むべきではないだろうか。
副次的にそう言った効果が多少はついてきてしまうのは仕方ないにしても、メインとすべきではないと思われる。

理由としては、ある一面では優越感に浸ることで快感にはつながるが、それで人生として豊かになるかというと微妙な気はしている。
オーディオ趣味は上を見ればキリがないだけに優越感を感じるには効率が相当に良くないし、一般人にも理解されないから他者から承認される機会も限られる。
間違いない優越感を得るためには最新世代のウルトラハイエンドを買い換え続けなければならないがそれが現実的な人は相当に限られる。
また、同じ趣味を持つ他者をマウントすることで優越感という快感を得る行為は他者を踏み台にして自分を楽しませるため、他者から批判されやすく、批判されても仕方ない行為である。

そういった人生を充実させるためのオーディオという視点を大事にしていきたいものとは考えている。
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ワンルーム一人暮らしの延長線上のリスニングルームを設計する。

2022-02-22 00:04:34 | オーディオ
しばらくブログの更新が止まってしまった。
理由はいくつかあるのだが、1つは現在の家族構成的に防音室に1人で籠もれる時間が取れないためあまりオーディオをやっていないことにある。
さらに言えばあまりオーディオ関連で注目するような新製品や新技術がなかったこと、日本音響学会のフリーアクセスで扱いたいと思える新しい論文が見つからなかったことなどもある。

それに加えて、仮想リスニングルームがある程度まとまったこともあるのだが、仮想ルームのコンセプトとして引っかかっていた部分が1つあったことに気付いた。

仮想リスニングルームは室内音響も重視しつつ、日常生活の中で自然と音楽鑑賞ができるようなアクセスの良さを重視すべきと考えている。防音や調音だけをひたすら突き詰めたリスニングルームは日常生活からは隔絶されたアクセスの悪い部屋になってしまうからだ。

真剣なリスニングを家族の迷惑をかけず、リスニング中は家族の干渉を受けないようにしようとするならリスニングルームは別棟にすべきだが、日常生活の中に良質な音楽と共にありたいと思うならリスニングルームでもある程度の生活ができる機能が必要だ。

なのでリスニングルームに隣接して一般住宅も備えているようなアメニティを設置した小部屋を以前に設計したのだが、そこで生活ができるように水回りなどを設置していくと12畳くらいになってしまった。24畳のリスニングルームに対して12畳ものスペースを用いて音響的に寄与しない部屋を追加しないといけないというのは、ややコストが大きすぎる気がする。





そのあたりをより合理化しようというのが今回の記事での試みである。
なるべく生活に寄り添ったリスニングルームを想定すると先述したが、まずどのような生活スタイルを想定しているのかというのを考え直してみた。
別棟になるので、自宅で家族と関わる用事がない上で1人でいたい時間でありかつ、仕事場にいく必要のない時間を愉しむという目的になる。

その時間をどのようにして音楽とともに生活したいのかということを考え直してみたが、結局のところ自分は大学生で一人暮らしをしていたときのように気ままに音楽鑑賞を追求したいというのが一番のようだ。
大学時代は狭い1Kの住宅で一人暮らしをしていたので、室内生活のすべては概ね1部屋内で完結していた。その部屋にオーディオシステムがあるので何をしながらでも音楽が聴けたし、気が向けば即時に真剣なリスニングができたのである。

今の戸建ての現在の住宅では食事スペースや生活スペースや寝室が分けられている上で、専用のリスニングルームが設定されている。しかも家族という同居人もいる。
そのため大学時代と比較すればオーディオシステムのグレードも防音も室内音響も向上したものの日常生活と音楽鑑賞が切り離されてしまった。その隔絶を解消したいけれども、大学時代に大きく妥協を余儀なくされていた音量とシステムのサイズと室内音響を気兼ねなく好きに出来るという部屋が個人的には理想的なのだと思う。

そのあたりを加味した結果、1Rの住居の間取りの居室部分をそのまま音響調整されたリスニングルームにするという発想で部屋を設計してみることにした。



間取りの下方はそれほど特殊ではない1Rとして(水回りが左右に分割されているのは一般的ではないが)、居室部分が上下に延長された形でリスニングルームが設置される。
リスニングルーム部分は高天井となっている。






居室部分とリスニングルームは緩い区分けはされているが同一空間となっているため、音響的に考えた場合の容積は両方の和となる。
居室部分とリスニングルームの区切りはある程度拡散効果がある仕切りを作ることで居室部分の左右対称性が完全でなくても音響効果の左右差が現れないようにする。
リスニングのみに集中する時はリスニングルーム内で鑑賞し、作業時や食事時や寝転がりながらなどの視聴の場合は居室スペースでの鑑賞を行うというコンセプトである。



マイホームクラウドというページで外観のシミュレーションもできるのでやってみた。
ただの箱になっていないいので外見もそこそこにはなっている印象







これによって、リスニングルームの容積と関係ない空間が12畳→7畳に減少した。リスニングルーム+居室の面積として24畳→27畳と増加した。
リスニングルーム+居室部分は高天井の部分16.5畳と一般的な天井高の部分10.5畳の領域ができることになり、高さ方向の定在波が分割されることになった。
後方のみ低天井のため天井が低いことによるデメリットはあまり多くなく定在波が分割されることの方がメリットが大きそうである。
そして1R型の居室部分は特に高コストを必要とする構造にはなっていないのでコスト低減になると思われる。
またリスニングルームと居室部分はどちらも単独でも成立する建造物となっており、それをつなげたものとなっている。
そのため見た目上は大部屋だが、設計上は中くらいの部屋が2つ連結しているだけなので設計的強度的に無理がなく、その分強固に作る分にも有利となる。
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