ミニコンポも今は昔、オンキヨーが事業を売却 もはやサブスク時代に抗えず......
https://www.j-cast.com/kaisha/2021/06/08413227.html
この記事を読んで、大して目新しい内容があるわけではなかったが、確かに「質は問わないけれども好きな楽曲を聴きたい」というローエンド需要に対する供給側の変化はここ数年で急激に変化していることを実感し、ここ30年程度を俯瞰してみる。
CDが広く普及する1990年より前はローエンドではLPもしくはアナログカセットテープがメインであったはずであり、
LPを再生するためのそれなりに大仰な機器を使うか、カセットテープを再生するかになる。
LPの再生はLP自体が大きいので、質を重視しないとしてもそれなりに大きな据え置きの再生用音響機器を買わなければならない。そして再生機器の質が音質に直結しやすかった。
カセットテープを再生するラジカセにしても、やはり再生用の音響機器を買わないと聴けない。カセットテープで音源が収録されて販売されるケースが多いわけではなかったので、好きな楽曲を聴こうとするとラジオなどの録音も必要だった。
なので音楽を聴く習慣がある人にとって、音響専用機器を購入することは当然であった。
1990年以降にCDが広く普及していき、ローエンドでもCD再生が始まっていく。
CDを再生するにはローエンドであればCDラジカセ、CDウォークマン、CD再生可能なミニコンポなどであり、LPと比較すると好きな楽曲を聴くための手段は広くなり、大仰な機器の購入を回避する選択肢もできるようになってくる。質に関してもLPやカセットテープよりは最低限の品質の音を出しやすくなっている。
いずれにしろ音楽を聴く習慣を持っている場合音響専用機器を購入することは必要であり、CDウォークマンはバッテリーの持ちが悪かったり再生が止まりやすかったりで主役とまではいかず据え置きの方が主役であることは間違いなかったように感じる。
2000年の少し前にはMDが登場し、世界的には流行らなかったが国内のローエンドではかなりの存在感だった。
バッテリーもこなれてきておりポータブルで聴く実用性がかなり高くなっていた。
MP3プレーヤーなども出始めており、PCにリッピングしてライブラリ構築なども始める人も出ていたが、PCの普及率も低くローエンド界隈には普及するような時期ではなかった。
MDを使うにしても据え置きの音響専用機器で録音が必要なためそういった機器を購入するのは一般的であった。
2004年のiPodminiくらいからiPodが本格的に普及し始める。インターネット回線もADSLなどで高速回線が安価になり、PCで音楽ライブラリを構築する人も増えてはきていた。
ただローエンドで言えば、iPodやPCオーディオはPCが基本的には必要であり、個人用のPCがない場合は活用できなかった。
当然ながらローエンドのミニコンポよりもPCは高価であり、PCを所有していないローエンド界隈にとってはCDの再生機器は選ばれる需要が存在していた。
この頃の携帯電話での音楽鑑賞は着うたや着うたフルなどで楽しむ層がそれなりにいてローエンド界隈ではそれなりに存在感を示し始めていたが、音楽再生としては不便さはあった。
2010年あたりからiPhoneがこなれてきてAndroidスマホも出現する。
その辺りになると携帯電話で音楽を必要十分に鑑賞することもかなりできるようになっている。
ポータブル音楽プレーヤーのフル機能が携帯電話に内包された時代が明確に始まる。
この辺りで音響専用機器の需要が小さくなっていることがはっきりしてくる。
とは言えスマートフォンは機械に強いアーリーアダプターでないと選ばないし使いこなせない時期であった。
楽曲もまだ国内では豊富にはオンライン販売されておらず、PCから転送が必要であった。
ローエンド界隈で音響専用機器を買うことも減ってはきていたが確固たる代替手段が整った状態でもなかったように思える。
2015年くらいになるとスマートフォンが携帯電話の大半を占めるようになり、楽曲のオンライン販売もかなり網羅することになった。
定額聴き放題のサブスクリプションも普及を始める。
ライブの販促目的に動画サイトに公式からフルのPVがアップロードされるようにもなっていく。
こうなるとローエンド界隈が好きな楽曲を聴きたいときには持っている携帯電話(スマホ)でyoutubeから探すなり楽曲ストアからダウンロードするなりサブスクリプションで聴くなりの手段を取ることになる。
ローエンドとは言え今は楽曲のビットレートもそれなりの帯域が確保されており、デジタルなので品質の優劣が感じにくい。イヤホンも安価でそれなりの音質を出すには効率の良い媒体である。
ここにきてローエンドオーディオは音響専用機器を買うことなくそれなりの品質で好きな楽曲を聴ける時代が到来する。
この現代になって据え置きでCDを聴くのはオーディオマニアか、新世代の媒体を理解できない時代に取り残された人か、過去の音源資産が多すぎて乗り換えできずに立ち止まった人たちだけである。
という成り行きで音響専用機器メーカーが「一般人が使う物を作る企業」から「一部の人が使う物を作る企業」になってしまったわけである。
まだイヤホンやヘッドホンは「一般人が買う物」であり、それを作っているメーカーはそれなりの地位を維持できているのはそこにあるかもかもしれない。
ローエンドオーディオの流れとしては、アナログ据え置き専用機器主流の時代から、最低限の品質確保が容易なデジタルの時代になり、さらにポータブルがしやすい時代になり、最終的にはポータブルな汎用機器で十分な時代になった。
かつて大衆向けの音響機器を製造していたメーカーは
・規模を縮小して高級機路線で細々と生き残る
・縮小しつづける据え置きミドルレンジとローエンド帯を続けながら利益を出していく(実際はこれを選択したが採算を取ることは困難だったようだ)
・ポータブル機器に注力する
・業態変更し多角化もしくは撤退
これらの選択をしなければ今日まで生き残れないし、今後も生き残れそうにないということは歴史が証明してしまっている。
オンキヨーのオーディオ部門は高級路線を開拓することもなく、ポータブルに本気を出している感じもなく、普通の価格のミニコンやローエンド〜ミドルレンジのコンポーネント機器を出し続けたように感じる。
もちろんオーディオファンにとっては良心的な価格で入門機の選択肢を提示し、趣味としての裾野の大事な部分を作っていた功績は大きい。
だが今回まとめた時流というものを考えると売れずに存続の危機に陥るのは必然であったように感じた次第である。
https://www.j-cast.com/kaisha/2021/06/08413227.html
この記事を読んで、大して目新しい内容があるわけではなかったが、確かに「質は問わないけれども好きな楽曲を聴きたい」というローエンド需要に対する供給側の変化はここ数年で急激に変化していることを実感し、ここ30年程度を俯瞰してみる。
CDが広く普及する1990年より前はローエンドではLPもしくはアナログカセットテープがメインであったはずであり、
LPを再生するためのそれなりに大仰な機器を使うか、カセットテープを再生するかになる。
LPの再生はLP自体が大きいので、質を重視しないとしてもそれなりに大きな据え置きの再生用音響機器を買わなければならない。そして再生機器の質が音質に直結しやすかった。
カセットテープを再生するラジカセにしても、やはり再生用の音響機器を買わないと聴けない。カセットテープで音源が収録されて販売されるケースが多いわけではなかったので、好きな楽曲を聴こうとするとラジオなどの録音も必要だった。
なので音楽を聴く習慣がある人にとって、音響専用機器を購入することは当然であった。
1990年以降にCDが広く普及していき、ローエンドでもCD再生が始まっていく。
CDを再生するにはローエンドであればCDラジカセ、CDウォークマン、CD再生可能なミニコンポなどであり、LPと比較すると好きな楽曲を聴くための手段は広くなり、大仰な機器の購入を回避する選択肢もできるようになってくる。質に関してもLPやカセットテープよりは最低限の品質の音を出しやすくなっている。
いずれにしろ音楽を聴く習慣を持っている場合音響専用機器を購入することは必要であり、CDウォークマンはバッテリーの持ちが悪かったり再生が止まりやすかったりで主役とまではいかず据え置きの方が主役であることは間違いなかったように感じる。
2000年の少し前にはMDが登場し、世界的には流行らなかったが国内のローエンドではかなりの存在感だった。
バッテリーもこなれてきておりポータブルで聴く実用性がかなり高くなっていた。
MP3プレーヤーなども出始めており、PCにリッピングしてライブラリ構築なども始める人も出ていたが、PCの普及率も低くローエンド界隈には普及するような時期ではなかった。
MDを使うにしても据え置きの音響専用機器で録音が必要なためそういった機器を購入するのは一般的であった。
2004年のiPodminiくらいからiPodが本格的に普及し始める。インターネット回線もADSLなどで高速回線が安価になり、PCで音楽ライブラリを構築する人も増えてはきていた。
ただローエンドで言えば、iPodやPCオーディオはPCが基本的には必要であり、個人用のPCがない場合は活用できなかった。
当然ながらローエンドのミニコンポよりもPCは高価であり、PCを所有していないローエンド界隈にとってはCDの再生機器は選ばれる需要が存在していた。
この頃の携帯電話での音楽鑑賞は着うたや着うたフルなどで楽しむ層がそれなりにいてローエンド界隈ではそれなりに存在感を示し始めていたが、音楽再生としては不便さはあった。
2010年あたりからiPhoneがこなれてきてAndroidスマホも出現する。
その辺りになると携帯電話で音楽を必要十分に鑑賞することもかなりできるようになっている。
ポータブル音楽プレーヤーのフル機能が携帯電話に内包された時代が明確に始まる。
この辺りで音響専用機器の需要が小さくなっていることがはっきりしてくる。
とは言えスマートフォンは機械に強いアーリーアダプターでないと選ばないし使いこなせない時期であった。
楽曲もまだ国内では豊富にはオンライン販売されておらず、PCから転送が必要であった。
ローエンド界隈で音響専用機器を買うことも減ってはきていたが確固たる代替手段が整った状態でもなかったように思える。
2015年くらいになるとスマートフォンが携帯電話の大半を占めるようになり、楽曲のオンライン販売もかなり網羅することになった。
定額聴き放題のサブスクリプションも普及を始める。
ライブの販促目的に動画サイトに公式からフルのPVがアップロードされるようにもなっていく。
こうなるとローエンド界隈が好きな楽曲を聴きたいときには持っている携帯電話(スマホ)でyoutubeから探すなり楽曲ストアからダウンロードするなりサブスクリプションで聴くなりの手段を取ることになる。
ローエンドとは言え今は楽曲のビットレートもそれなりの帯域が確保されており、デジタルなので品質の優劣が感じにくい。イヤホンも安価でそれなりの音質を出すには効率の良い媒体である。
ここにきてローエンドオーディオは音響専用機器を買うことなくそれなりの品質で好きな楽曲を聴ける時代が到来する。
この現代になって据え置きでCDを聴くのはオーディオマニアか、新世代の媒体を理解できない時代に取り残された人か、過去の音源資産が多すぎて乗り換えできずに立ち止まった人たちだけである。
という成り行きで音響専用機器メーカーが「一般人が使う物を作る企業」から「一部の人が使う物を作る企業」になってしまったわけである。
まだイヤホンやヘッドホンは「一般人が買う物」であり、それを作っているメーカーはそれなりの地位を維持できているのはそこにあるかもかもしれない。
ローエンドオーディオの流れとしては、アナログ据え置き専用機器主流の時代から、最低限の品質確保が容易なデジタルの時代になり、さらにポータブルがしやすい時代になり、最終的にはポータブルな汎用機器で十分な時代になった。
かつて大衆向けの音響機器を製造していたメーカーは
・規模を縮小して高級機路線で細々と生き残る
・縮小しつづける据え置きミドルレンジとローエンド帯を続けながら利益を出していく(実際はこれを選択したが採算を取ることは困難だったようだ)
・ポータブル機器に注力する
・業態変更し多角化もしくは撤退
これらの選択をしなければ今日まで生き残れないし、今後も生き残れそうにないということは歴史が証明してしまっている。
オンキヨーのオーディオ部門は高級路線を開拓することもなく、ポータブルに本気を出している感じもなく、普通の価格のミニコンやローエンド〜ミドルレンジのコンポーネント機器を出し続けたように感じる。
もちろんオーディオファンにとっては良心的な価格で入門機の選択肢を提示し、趣味としての裾野の大事な部分を作っていた功績は大きい。
だが今回まとめた時流というものを考えると売れずに存続の危機に陥るのは必然であったように感じた次第である。