もがくオーディオメーカー コンシューマーオーディオはどこへ行くのか? ゼンハイザー、オンキヨーの身売りで考える
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2105/25/news105.html
こんな記事をみかけた。割とここ最近の成功者と思えるゼンハイザーと凋落著しいオンキヨーが共にコンシューマーオーディオを今年売却している。
少し前にはこれまた最近の成功者であったOPPOが高価格帯の覇権を握ったと思った矢先にブルーレイプレーヤーから撤退したということもある。
パイオニアはコンシューマーAVをオンキヨーに売却している。
コンシューマーオーディオは大量絶滅時代に入ったと言ってもいいだろう。
原因やこうすれば良かったというのは総括されているが、
その一つとしてIT化の遅れが記載されている。
スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンなどのIT化したオーディオ機器が今売れており、今売れる物を先行して作れなかったからと言われている。
確かにこれは一理ある。それなりの規模を持つオーディオメーカーはそれなりの数を売らないと規模を維持できない。
数を売ろうとすれば売れるジャンルで一定の地位を確立することが必須となる。
ただオーディオメーカーにそれが実現できたかというと疑問は残る。
スマートスピーカーは基本的には音声認識システムとオンラインのネットワークサービスと紐付けされて機能するものである。
スマホOSのGoogleやAppleやネットショッピングやサブスクリプションサービスのamazon、SNSのLINEなどプラットフォーマー主導がほぼ前提となる製品である。オーディオメーカーが頑張れば主役になれたかというと無理だと思う。
BOSEがアレクサ対応のスマートスピーカーを作ったりなどオーディオメーカーも参加していないわけでもないが、スマートスピーカーは紐付けされている有料サービスに誘導する役割があり、スマートスピーカーの販売自体に粗利を追求する必要がない。
なのでプラットフォーマーが販売するスマートスピーカーは比較的割安のものが多く、プラットフォームを自前で持っていないオーディオメーカーが太刀打ちして数を捌くというのは無理があるように思える。
ワイヤレスイヤホンはBluetooth部分とバッテリー部分をどうにかすれば、後は従来イヤホンと同じ構造が多い。
なのでオーディオメーカーが現在でもそれなりの数の企業が商品を出していて一定の存在感もある。
ここをオーディオメーカーが市場を早期に開拓してシェアの多くを確保していればオーディオ業界も少しは違ったのではないかということになる。
この仮定はスマートスピーカー程ではないにしろやはり無理だったのではないかと思えてしまう。
理由がいくつかあるが、まず何よりワイヤレスイヤホンの前に有線のイヤホンやヘッドホンなどパーソナルのオーディオシステムのブームがあったが、それに注力したわけでもないのにワイヤレスのブームに先行出来るはずがないということがある。
一応オーディオコンポーネントを作っているメーカーも有線のポータブルオーディオブームの際に新たにイヤホンやヘッドホンを作ったりして参入していた(DenonやB&Wなど)。だが時期も遅く本気度も強くは感じられなかった。
それに彼らがホームオーディオのコンポーネントで一定の盤石な地位を確立しているのと同じように、ポータブルのシステムにも独自のノウハウや信頼感の蓄積が必要であり、元々ポータブルをやっていた企業を下剋上するようなことは容易ではなかったようである。
だからこそオンキヨーやパイオニアなどが生き残るためにITオーディオ機器、ワイヤレスイヤホンなどに力を入れて生き残るべきだったというなら、そもそも10年以上前にオーディオテクニカ、ゼンハイザー、ソニーなどを駆逐せんばかりの全力でイヤホンやヘッドホンのシェアを築くべきだったということになるが、それが正解かというと現在の視点から見ても当時の視点から見ても正解とはいいきれない。
結局のところ有線イヤホンヘッドホンブームの時も今のワイヤレスイヤホンブームも市場としてそんなに大きなものではない。老舗オーディオメーカーと言いつつも大してノウハウのない分野である上に、果敢にリスクを取って大胆に進出してもリターンは大して多くない。有線イヤホンヘッドホンブームでのブランドイメージ最上級であったゼンハイザーが事業譲渡している時点で否定しがたい事実である。
そしてもう一つ言えることはBluetooth部分のノウハウが特殊という点がある。例えばオーディオテクニカはワイヤレスイヤホンを開発していたが、2018年に発売予定のワイヤレスイヤホンが通信部分の性能不足で発売中止になったり、その後発売したモデルも今年に充電の発煙発火リスクありとのことで商品の無償交換を発表したりしている。
それ故に各企業が現在はワイヤレスイヤホンを発売しているものの、無線や充電の部分を自前で一から作れてその出来が優れているという製品はおそらく従来メーカーからは全く出せていないと思われる。無線や充電などは他社から調達したものであれば最終的な製品としての差別化が難しく、通信の品質や使い勝手や安定性などは一から全てを作っているようなメーカーに比べると劣ってしまう。
なので従来オーディオメーカーが作るワイヤレスイヤホンは割高な価格で、通信や充電などが安定しなかったり、規格が古かったりする。でもアナログ部分の音が良い(らしい)というなんとも微妙な製品になる。それでは市場を制覇はできない。
従来メーカーがワイヤレスイヤホンで新興メーカーにシェアを譲らず大手として売れるポジションを維持しようと思ったら、無線機器を幅広く作れるようなくらい注力し、ノウハウを積み上げておかねばならなかった。つまりは実質的にはPCやスマホ関連機器の製造に業態を拡大せねばできない話であったと言える。
そして今後の生き延びる道としてOEMとして裏方で音響パーツを作っていくことが提案されている。
ただこれは既に出来上がっている市場であり、今後伸びるというものではない気がする。
OEMの仕事は昔からずっとある中で、それをやっているだけでは乗り切ることができないからこそ今の大量絶滅時代が存在しているのである。
苦境に陥ったオーディオメーカーがこれからはOEMに全力でいくと決めたところで苦境を乗り切ることが出来るというわけではないのではないか。
これまでネガティブな私見ばかり書いていたが、ポジティブな私見もある。
「子どものころ、「ステレオ」が家になかったという20代〜30代は多い。多感な青少年期にいい音を聴いて感動した経験がないのに、大人になったからといってオーディオに金を出すようにはならないだろう。」
というくだりがあるが、今のオーディオやっている世代は必ずしもこういうものではない。
そもそも青少年期に家庭に高音質環境が整備されていて労せずハイファイが聴けた人が、大人になった時にいい音の為なら金を惜しまないというような音質への上昇志向があるかというと逆に疑問に思える。
自分のように低価格のイヤホンとネット情報から「音響機器を替えることによる違いの認識とその楽しさの目覚め」を覚える人は多いはずだし、イヤホンを上位機種に買い換えるだけでなく、ヘッドホンなどステップアップしていけば、その先にはスピーカーとオーディオコンポーネントにたどり着くことも珍しくないはずだ。青少年期に家にステレオあるかどうかは重要ではないというのが私見である。
純粋な音楽であれ、動画の音声であれ、再生音声を聴くという行動を大半の人は行っている以上、その品質を追求する人は出現し続けるはずである。世代が今後交代しようとオーディオファンは少ないとしても生まれ続けると思われる。
ただ趣味としてのステップアップが他の趣味と比べて現在はかなりクソと言わざるを得ない。
他の趣味として腕時計を追求する趣味とカメラ機材を追求する趣味がある。
趣味性の高い高級腕時計は別に時計としての性能が至上という訳ではない。性能を求めるなら水晶発振器と電波補正がある安価な時計で十分だ。
歯車で正確な日時を時を刻むというアナログな技術の精緻に憧れたり、高級感のあるデザインに惹かれたりと、性能よりもロマン重視の部分が多い。
対してカメラ趣味は本体にしろレンズにしろ周辺機器にしろ倍率であったり解像度であったり、数字の良さ性能の良さこそが製品の価値であり、高い性能を出せる機材にこそ憧れを抱くものである。
だがオーディオ機器はロマンと性能どちらに力を注いでいるのか現在は非常に不明瞭な商売形態になっている。
多くの機器は性能を良くすることにも力は入れているものの、ロマン性を持たせることもそれなりに努力している。
どっちにどれくらいの割合で注力した製品を作ったのかは明かさぬまま、ただ素晴らしい製品だと喧伝する。こういう所がはっきり言ってクソである。
別に腕時計のようにロマン性を高めて付加価値を付けることがあってもいい。腕時計に許されてオーディオ機器に許されないはずがない。
ただ高級腕時計は電波時計よりも正確などと宣伝はしない。だがオーディオは価格が高ければ高いほど正確なものだと平気で宣伝する。
そういう悪習がステップアップを挫折させ先を細らせる原因になっていると自分の中では思っている次第である。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2105/25/news105.html
こんな記事をみかけた。割とここ最近の成功者と思えるゼンハイザーと凋落著しいオンキヨーが共にコンシューマーオーディオを今年売却している。
少し前にはこれまた最近の成功者であったOPPOが高価格帯の覇権を握ったと思った矢先にブルーレイプレーヤーから撤退したということもある。
パイオニアはコンシューマーAVをオンキヨーに売却している。
コンシューマーオーディオは大量絶滅時代に入ったと言ってもいいだろう。
原因やこうすれば良かったというのは総括されているが、
その一つとしてIT化の遅れが記載されている。
スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンなどのIT化したオーディオ機器が今売れており、今売れる物を先行して作れなかったからと言われている。
確かにこれは一理ある。それなりの規模を持つオーディオメーカーはそれなりの数を売らないと規模を維持できない。
数を売ろうとすれば売れるジャンルで一定の地位を確立することが必須となる。
ただオーディオメーカーにそれが実現できたかというと疑問は残る。
スマートスピーカーは基本的には音声認識システムとオンラインのネットワークサービスと紐付けされて機能するものである。
スマホOSのGoogleやAppleやネットショッピングやサブスクリプションサービスのamazon、SNSのLINEなどプラットフォーマー主導がほぼ前提となる製品である。オーディオメーカーが頑張れば主役になれたかというと無理だと思う。
BOSEがアレクサ対応のスマートスピーカーを作ったりなどオーディオメーカーも参加していないわけでもないが、スマートスピーカーは紐付けされている有料サービスに誘導する役割があり、スマートスピーカーの販売自体に粗利を追求する必要がない。
なのでプラットフォーマーが販売するスマートスピーカーは比較的割安のものが多く、プラットフォームを自前で持っていないオーディオメーカーが太刀打ちして数を捌くというのは無理があるように思える。
ワイヤレスイヤホンはBluetooth部分とバッテリー部分をどうにかすれば、後は従来イヤホンと同じ構造が多い。
なのでオーディオメーカーが現在でもそれなりの数の企業が商品を出していて一定の存在感もある。
ここをオーディオメーカーが市場を早期に開拓してシェアの多くを確保していればオーディオ業界も少しは違ったのではないかということになる。
この仮定はスマートスピーカー程ではないにしろやはり無理だったのではないかと思えてしまう。
理由がいくつかあるが、まず何よりワイヤレスイヤホンの前に有線のイヤホンやヘッドホンなどパーソナルのオーディオシステムのブームがあったが、それに注力したわけでもないのにワイヤレスのブームに先行出来るはずがないということがある。
一応オーディオコンポーネントを作っているメーカーも有線のポータブルオーディオブームの際に新たにイヤホンやヘッドホンを作ったりして参入していた(DenonやB&Wなど)。だが時期も遅く本気度も強くは感じられなかった。
それに彼らがホームオーディオのコンポーネントで一定の盤石な地位を確立しているのと同じように、ポータブルのシステムにも独自のノウハウや信頼感の蓄積が必要であり、元々ポータブルをやっていた企業を下剋上するようなことは容易ではなかったようである。
だからこそオンキヨーやパイオニアなどが生き残るためにITオーディオ機器、ワイヤレスイヤホンなどに力を入れて生き残るべきだったというなら、そもそも10年以上前にオーディオテクニカ、ゼンハイザー、ソニーなどを駆逐せんばかりの全力でイヤホンやヘッドホンのシェアを築くべきだったということになるが、それが正解かというと現在の視点から見ても当時の視点から見ても正解とはいいきれない。
結局のところ有線イヤホンヘッドホンブームの時も今のワイヤレスイヤホンブームも市場としてそんなに大きなものではない。老舗オーディオメーカーと言いつつも大してノウハウのない分野である上に、果敢にリスクを取って大胆に進出してもリターンは大して多くない。有線イヤホンヘッドホンブームでのブランドイメージ最上級であったゼンハイザーが事業譲渡している時点で否定しがたい事実である。
そしてもう一つ言えることはBluetooth部分のノウハウが特殊という点がある。例えばオーディオテクニカはワイヤレスイヤホンを開発していたが、2018年に発売予定のワイヤレスイヤホンが通信部分の性能不足で発売中止になったり、その後発売したモデルも今年に充電の発煙発火リスクありとのことで商品の無償交換を発表したりしている。
それ故に各企業が現在はワイヤレスイヤホンを発売しているものの、無線や充電の部分を自前で一から作れてその出来が優れているという製品はおそらく従来メーカーからは全く出せていないと思われる。無線や充電などは他社から調達したものであれば最終的な製品としての差別化が難しく、通信の品質や使い勝手や安定性などは一から全てを作っているようなメーカーに比べると劣ってしまう。
なので従来オーディオメーカーが作るワイヤレスイヤホンは割高な価格で、通信や充電などが安定しなかったり、規格が古かったりする。でもアナログ部分の音が良い(らしい)というなんとも微妙な製品になる。それでは市場を制覇はできない。
従来メーカーがワイヤレスイヤホンで新興メーカーにシェアを譲らず大手として売れるポジションを維持しようと思ったら、無線機器を幅広く作れるようなくらい注力し、ノウハウを積み上げておかねばならなかった。つまりは実質的にはPCやスマホ関連機器の製造に業態を拡大せねばできない話であったと言える。
そして今後の生き延びる道としてOEMとして裏方で音響パーツを作っていくことが提案されている。
ただこれは既に出来上がっている市場であり、今後伸びるというものではない気がする。
OEMの仕事は昔からずっとある中で、それをやっているだけでは乗り切ることができないからこそ今の大量絶滅時代が存在しているのである。
苦境に陥ったオーディオメーカーがこれからはOEMに全力でいくと決めたところで苦境を乗り切ることが出来るというわけではないのではないか。
これまでネガティブな私見ばかり書いていたが、ポジティブな私見もある。
「子どものころ、「ステレオ」が家になかったという20代〜30代は多い。多感な青少年期にいい音を聴いて感動した経験がないのに、大人になったからといってオーディオに金を出すようにはならないだろう。」
というくだりがあるが、今のオーディオやっている世代は必ずしもこういうものではない。
そもそも青少年期に家庭に高音質環境が整備されていて労せずハイファイが聴けた人が、大人になった時にいい音の為なら金を惜しまないというような音質への上昇志向があるかというと逆に疑問に思える。
自分のように低価格のイヤホンとネット情報から「音響機器を替えることによる違いの認識とその楽しさの目覚め」を覚える人は多いはずだし、イヤホンを上位機種に買い換えるだけでなく、ヘッドホンなどステップアップしていけば、その先にはスピーカーとオーディオコンポーネントにたどり着くことも珍しくないはずだ。青少年期に家にステレオあるかどうかは重要ではないというのが私見である。
純粋な音楽であれ、動画の音声であれ、再生音声を聴くという行動を大半の人は行っている以上、その品質を追求する人は出現し続けるはずである。世代が今後交代しようとオーディオファンは少ないとしても生まれ続けると思われる。
ただ趣味としてのステップアップが他の趣味と比べて現在はかなりクソと言わざるを得ない。
他の趣味として腕時計を追求する趣味とカメラ機材を追求する趣味がある。
趣味性の高い高級腕時計は別に時計としての性能が至上という訳ではない。性能を求めるなら水晶発振器と電波補正がある安価な時計で十分だ。
歯車で正確な日時を時を刻むというアナログな技術の精緻に憧れたり、高級感のあるデザインに惹かれたりと、性能よりもロマン重視の部分が多い。
対してカメラ趣味は本体にしろレンズにしろ周辺機器にしろ倍率であったり解像度であったり、数字の良さ性能の良さこそが製品の価値であり、高い性能を出せる機材にこそ憧れを抱くものである。
だがオーディオ機器はロマンと性能どちらに力を注いでいるのか現在は非常に不明瞭な商売形態になっている。
多くの機器は性能を良くすることにも力は入れているものの、ロマン性を持たせることもそれなりに努力している。
どっちにどれくらいの割合で注力した製品を作ったのかは明かさぬまま、ただ素晴らしい製品だと喧伝する。こういう所がはっきり言ってクソである。
別に腕時計のようにロマン性を高めて付加価値を付けることがあってもいい。腕時計に許されてオーディオ機器に許されないはずがない。
ただ高級腕時計は電波時計よりも正確などと宣伝はしない。だがオーディオは価格が高ければ高いほど正確なものだと平気で宣伝する。
そういう悪習がステップアップを挫折させ先を細らせる原因になっていると自分の中では思っている次第である。