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モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

部屋の壁の遮音性に関する論文

2023-04-30 22:06:53 | オーディオ
最近あまり書くことが無く更新が途絶えていたが、日本音響学会で壁の防音性能の論文があり注目していたが、ようやくフリーアクセスが可能となったので読んでみた。

中空層内の吸音材・せっこうボードの積層方法が乾式二重壁の遮音性能に与える影響
杉江 聡
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/78/11/78_656/_pdf/-char/ja


まずは一般的な石膏ボード1枚ずつを合わせた間仕切り壁とその中にグラスウールを入れた場合の防音性能


ひとまず感じるのは中高域に関しては内部に吸音材を入れれば、かなり単純な構造であるにも関わらずそこそこの防音性能を確保できている印象がある。そして吸音材の密度は既に制御できている高音域の防音性能がさらに積み増しされるだけで大きな意味をなしていない。
そして吸音材を入れても入れなくても100Hz未満はかなり遮音性が悪い。吸音材を入れてもあまり改善せず逆に悪化している印象すらある。
逆に言えば100Hz未満はこれだけ外に漏れているので部屋の中に貯まりづらいことになる。防音的には良くはないが、定在波が目立ちにくくなったり、部屋の長辺を超える波長の超低域を再生することに寄与している。



石膏ボードの1枚貼りと2枚貼りでの遮音性能の比較。2枚貼りの場合は2枚のボンド接着の仕方での遮音性能も比較している。
基本的に2枚貼りの方が遮音性能は高いが、接着剤を多く使っている場合、1500〜2500Hzあたりでの2枚張りの遮音性能は逆に悪化してしまっている。
これだけを見ればオーディオルームの内装のボードは石膏ボード2枚張りにしつつ接着剤は少なめにするのがベストということになりそうな気もするがその他にも考慮すべき点はいくつかある。

1つはSound Reproductionの著者が石膏ボード2枚張りは低音が逃げにくく定在波が明確に出るため1枚張りを推奨している。
業者が試聴室だからと親切で2枚張りにしてくれたが、測定結果が思わしくなく原因を探っていると2枚張りが原因と判明し、1枚張りに直して貰ったところ結果が望ましいものになったという。
もちろんこの考えが絶対的に正しいと信じるのは危険ではあるが、いずれにしろ遮音性が良い≠音が良いではあることは肝に銘じておかなければならない。

2つ目は石膏ボード2枚貼りのボンドを少ない場合、ボードそれぞれが有害な共振することで遮音性能が向上している可能性がある。その場合は石膏ボードの板振動によってバストラップのように吸音効果は発揮されると考えられるが、一部の周波数ではその板振動が部屋の付帯音として再生音を濁している可能性も考えなければならない。いずれにしろ遮音性が向上するからオーディオルームにとって望ましいと考えるには注意が必要と思われる。

最後に石膏ボード2枚の場合にボンドを多めに付けた場合に1500〜2500Hzあたりで吸音性能が低下すると述べたが、その辺りは内部のグラスウールなどの吸音材が得意とする周波数ではあるので、そのあたりの性能が低下してもあまり問題にならないのかもしれない。