モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

DTS: X Proについて

2020-10-31 20:08:54 | ホームシアター
シアター関連は正直停滞しているなあというのが自分の印象で、あまりアンテナ張っていなかったのだが、
DTS: X Proという次世代のマルチチャネルサラウンド規格が新製品に実装されてきているようだ。

日本語ソースはあまり多くない。とりあえず紹介しているyoutube動画のリンクを以下に
https://www.youtube.com/watch?v=hUqNNQqssXs

ピックアップすると、基本的にはDTS:Xの延長線上のもの。オブジェクトベースのシステムになる。
Proに対応していない環境でもPro対応のディスクの音は鳴らせるし、対応していない音源を擬似的にProにすることはできそうだ。

ただXだと11.2chだったものがX Proになると30.2chまで拡張できる。



最近のAVアンプが13.2chになりはじめている中でMAX11.2chという天井が不利に感じてきたのだろうか。
NHKの22.2chともかなり似通っている配置にもなっており、今後多チャンネル対応機器の登場が待たれる。

とは言ってもAVアンプ側が今13ch程度。当面は急にチャンネル増やせないだろうと思われる中で、
どこにチャンネルを増やすという選択肢をメーカーは提示するのか、そのあたりの動向が注目されるところだろう。

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サボテン型リブのヘルムホルツ共鳴シミュレーション

2020-10-24 15:43:24 | オーディオ
昨日の渦巻型のメタマテリアル拡散体の断面で
浅いリブ溝の空きスペースに深いリブ溝を折り込む構造の断面図であることがわかり(便宜上以下はサボテン型リブと表記する)、
それは深いリブを省スペースで設定するのに有用である。


だがヘルムホルツ共鳴器の様にもなっているので、どこかの周波数が共振するはずである。実際にどの周波数が共振するのか簡単な計算でできるのでシミュレーションしてみた。

サボテン型リブを等間隔にしつつ、溝の深さをいろいろ変えてみたモデル。

①は550Hz、②は671Hz、③は1054Hzと算出された。
理想的なヘルムホルツ共鳴器とはかなり異なるので現実的には異なるだろうが、
目安として中域あたりが吸音されてしまうのかなと思われる。
同じ寸法の構造を繰り返すと特定の周波数の帯域が怪しくなると思われる。

では長い溝の入り口を狭くしたり広くした場合はどうなるか



④219Hz⑤392Hz⑥1368Hz⑦714Hzと入り口を狭く、中の容量を大きくすると低音も吸音できそうだ。
とはいえ実際は拡散性を重視すると400-700Hzが集中的に共鳴してしまいそうな気がする。
使いづらそうだなというのが正直なところだ。
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室内音響かいつまみ⑫ 蚊取り線香型拡散材

2020-10-23 12:52:08 | オーディオ
前回の宿題のPlanar binary amplitude diffusorについて。
米国特許の仕様書が見つかったので下記リンク
https://www.freepatentsonline.com/5817992.pdf

QRコードのようだけれども計算された位置に穴を開けた有孔ボードのようである。



100Hz以上を拡散させるそうだ。
QRDのBADという商品として市販されているのがこの理論を活用したもののようだ。


どのような理論でどのように拡散するのかはよく調べ切れていないので、また今度しっかり調べたいが、正直なところあまり興味はない方式にはなる。
完全に取って付けてのお手軽品ではあるので何時でも取り外しできそうなものなので後回しにできそうだし、これが素晴らしければ他の鈍重なグッズが存在する理由がなくなる。
ライセンス生産しているところが吸音的な目的で使用しているし、木材以外はかなり柔らかめの素材を使用していることからも反射音としてかなりソフトに仕上げる方向のものだからだ。


今回はもう一つ取り上げる。
metamaterial的なアプローチから拡散体を研究した2018年の論文(簡潔なので学会発表の要旨?)
12thInternational Congress on Artificial Materials for Novel Wave Phenomena - Metamaterials 2018より
Vortex-sound diffusers using spiral metasurfaces

https://nojigon.webs.upv.es/pdf/conferences/2018-META-Jimenez-Vortex_Sound_Diffusers.pdf


なんと蚊取り線香のような渦巻きで拡散を試みようとしている。なぜアコースティック関連は渦巻きに惹かれてしまうのか。。。



大きな蚊取り線香は、作るのは難しいので真似はできないが、参考になるポイントは断面図にある。
簡略に書くとこうなる。



QRDのような溝の連続体にしつつ、浅い溝の背後に深い溝が折り込まれて空きスペースを溝の深化に用いている。
折り込むとヘルムホルツの共鳴器の原理が働くので一般的な一次元QRDより単純ではないが、スペースを有効利用した拡散方法としては有望である。
特に横リブというか棚板みたいなものを壁に並べて配置した場合、コの字の材料を棚板に置くだけでこの構造が作れる。
着脱も容易だし、位置調整も容易になる。先日述べた可変性のある機構になってくれるかもしれない。
ヘルムホルツ共鳴器の原理をよく分かっていないのでDIYで作ることができ吸音ではなく拡散に用いるという条件で原理を用途特化させて、簡潔にシミュレーションに利用できないか今後検討しようと思う。
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室内音響かいつまみ⑪ メタディフューザーとかいうパワーワード

2020-10-22 12:57:06 | オーディオ
KEFの高域の背面にmetamaterialを装着していたのがオーディオ界で話題になっていたけれども
コンピューターの進歩により従来不可能であった緻密なシミュレーションが行えるようになっている。
それによって様々な分野で従来の設計で限界があった特性の上限を打ち破るような特殊な材料や形態を持たせる研究が進んでいる。

そしてそれは音響拡散についても同じであったようだ。
今回取り上げるのはNatureの2017年の論文
まさかNatureで拡散パネルの研究論文が出ているとは驚き
さらにmetadiffuserという単語のパワーで二重に驚き。
Metadiffusers: Deep-subwavelength sound diffusers
https://www.researchgate.net/profile/Noe_Jimenez/publication/318459712_Metadiffusers_Deep-subwavelength_sound_diffusers/links/596df76aaca272d552fe27de/Metadiffusers-Deep-subwavelength-sound-diffusers.pdf

音響メタマテリアルの概念で拡散パネルを設計したところ3cmの厚みで250 Hzから2 kHzまで拡散させるということだ。
原理としてはヘルムホルツ共鳴器をリブの中に組み込んだというのものである。
ヘルムホルツは吸音でよく用いられるが、ネックとキャビティの大きさをほぼ同じにすることで、ちょうど狙った周波数が位相的に吸音率が低いようにあえて設定されている。
周波数特異的な吸音機構として用いられるものを、あえて吸音できない設計にすることで、残った拡散効果を利用するという設計思想のようだ。


大した形でもないように思うがしっかり拡散する。


広帯域対応型がこんな形で深さ56cmのQRDよりもさらに拡散性が高い。3cmのQRDなど比較にもならない。


すごい性能ではあるが、ちょっと木材で作るのは無理がありそうな設計である。
アルミサッシメーカーなどであればできるのだろうか。

まあなんとも夢広がる発想ではあるが、残念ながら細かい設計図などは論文中に示されていない。
自作してみるにもヘルムホルツを寸法も分からず作れば、高い確率で周波数特異的に吸音される影響の方が出てしまうだろう。
しかし従来と異なる拡散板の機構を見ることが出来たのは良い機会だった。

昨日の記事ですら、取って付けたような薄い拡散パネルは拡散性が十分でないから、作り付けでないとあかんと書いたが、metadiffuserはそれを簡単に覆してしまうかもしれない。迅速な商品化が望まれる。

同じ著者が2019年にもメタディフューザーに関しての論文を出している。
Applied Physics Lettersで発表した
Experimental validation of deep-subwavelength diffusion by acousticmetadiffusers
https://nojigon.webs.upv.es/pdf/2019-APL-Ballesteros-Experimental_validation_metadiffusers.pdf

同じようなヘルムホルツ共鳴器型の拡散パネルで研究をしているようだ。こちらも詳細な設計図などは扱っていないのでよく読んでいない。





ただ序説の中にPlanar binary amplitude diffusorという比較的新しい発想で作られたディフューザーが米国特許を取得し商品化もされていると記載があった。
Planar binary amplitude diffusorについて今度は調べてみたいと思う。
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拡散リブについて再度考える

2020-10-21 22:10:23 | オーディオ
以前に紹介したいくつかのリブに関する拡散性の研究論文で
なぜあの周期や深さでああいう結果になるのかいろいろ考えを巡らせてみたが、
リブ自体というよりリブとリブの間の溝になる部分が拡散性に重要になってくるのかなという考えになりつつある。
まあ普通に考えてみれば当然と言えば当然なのだが、それでは拡散性が望ましいリブというのはどういうものかと考えてみると、

①幅が狭く、深いリブが数多くあるほど低域も含めた広帯域の拡散が可能である
②リブ間の溝の深さと幅が同じ寸法や整数倍だと拡散性が悪くなる。
③溝は直方体でなく不整形の方が偏りのない拡散が可能である。
④溝の深さや幅は変化があった方が偏りのない拡散が可能である。

ということになるのではないだろうか。
溝を作り出すという意味では一次元のQRDの拡散パネルで良いような気もするが、
QRDのパネルを張りまくった場合に自分としてあまり歓迎できない欠点について考察してみると、

①QRDは減衰や拡散する周波数に多少偏りがある。これは溝の幅が全て一定であることから溝の幅と音の振幅が合ってしまうと減衰しなかったり極端に減衰したりすることが原因と思われる。


②拡散も結局は反射の一種である。QRDの溝と溝との間の板はかなり薄い。薄い板の間に挟まれた溝の中で数回反射して外に出てくるわけである。
薄い板は共振しやすかったり、反射の特性が良くない、聴感上もショボく感じやすい音になる。そういう反射板で複数反射した音なので特性上良くても聴感上楽しめるのか確信が持てない。

③先の述べた様に木の板で複数回反射して出てくるのが拡散パネルの特徴だが、木材は反射の際に高域の吸音率が高い特徴がある。木材に何度も反射した拡散波は高域の減衰率が大きいことが予想される。
ある程度は仕方ないが、全ての反射波の高域を鈍らせるのはどうかと思える。

④そもそも理想的な拡散を自分は追い求めていない。鏡面反射を全否定してはおらず、強さを弱めるため副作用を減らす手段として拡散リブを検討している。なので全ての反射波を溝の中に通して方向を変える必要性を感じていない。

なので一般的な一次元QRDではなくリブで拡散させようとすると、自分の望んだ特性を具有しつつ特性も問題ないものにしようとすると、

①リブはQRDの仕切り板よりも分厚いものを使う。だが論文のように厚さ10cmや15cmのものである必要はないと思われる。3cmくらいでいいか?
 (乱反射の際に剛性の強い反射体で反射させられる。リブ出っ張り部分で反射する音は乱反射しないので程よく拡散することが期待できる。)
②溝の深さや幅はなるべく変化させる。
QRDの欠点の一つとして溝の間隔が一定という部分が原因であると思われる。
QRDは溝の入り口の位置は一定だが、溝の底を上げ底をして周波数特性の変化を狙っている。同じ事をしてもいいが、そもそも入り口の位置を変えてもいいかもしれない。
③なるべくなら金属やセメント系も使ってみる?
ヒートシンクの改造したものや波状鋼板の裏打ちをすれば高域だけ減衰率の高い傾向を無くせる?コストと重量的に無理がありそうだが。
④溝さえあれば良いので、厚い板に大きさの異なる、穴を掘るのでも良い気がする。有孔ボード的なものの改良品になる。ただ厚さ10cmのボードとかだとかなり無理がある。


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リスニングルームの可変性と固定すべきもの

2020-10-20 12:25:44 | オーディオ
今も大して分かっている訳では無いが、今のリスニングルームを作った時はほとんど無に近いくらい分かっていなかった。
何が分かっていないかというと、それは音響学的な知識よりも何よりも「自分がどのような響きにしたいか」と「どう設置したいのか」ということである。

自分の今のリスニングルームは概ね石井式リスニングルームを模した物ではある。
石井式リスニングルームは賛否両論あれど自分のような「とりあえず音の良い部屋にしたい」「いろいろ設置も試行錯誤したい」という顧客にとっては良く出来たものではあると思う。
セッティングに関して横長に使うのか縦長に使うのか、スピーカーをどこに置いてどこに座るのかそういったものを、直感的に設置するだけの施主に委任する場合、
どこかにスイートスポットを作るというのは無意味なことになる。
大雑把にどこでもそれなりに破綻無い音にするというのが目標にならざるを得ない。
それでいて建築関連の規制に準拠し、耐震性を確保し、予算を抑制し、室内空間を無駄に狭くしない、施主がどういう響きが好みなのか本人すらもよく分かっていない、という状況では石井式リスニングルーム以上の最適解を提示するのはそれなりに難しいと思える。

だが、逆に言えばどこも凄い良いというポイントがないことにもなる。
吸音、遮音を交互に設定するのが設計のポイントになるが、あまり細かくすると施工難度が上がり、反射壁の強度も取りづらい。
なので交互の周期が広くなりがちだが、周期が広い場合、セッティングの際に左右と天井と前後の壁の吸音の影響、反射の影響がはっきりでてしまう。その条件を簡単に替えられない。
実際に自分で体験した例を示してみると、前後と左右的に丁度良いスピーカーとリスニングポイントを設定したつもりだったが、それだと天井の一次反射面がしっかり吸音されてしまっていた。せっかくの高天井なのであまり積極的に吸音する必要もなかったのに。だが高天井の埋め込み構造の吸音面のため簡単には改修できない。
だからと言って天井の条件が問題ない場所に設置しなおすと、今度は前後左右の壁の関係がうまくいかなくなる。そんな事例を経験した。

つまりどう使ってもそれなりに使える物というのは、どう使ってもそれなりにしかならないということになる。
専用室まで作らせておいて言うのもなんだが、ある意味初心者向けであり、沼の入り口であり、少なくとも言えることはマニュアル通りに作ればそこで上がりではないということである。
自由度が低い、リスニングエリアが狭いというのは良いことではないが、上記のとおりある程度決めておかないとそれなりのものにしかならないのであれば、ちゃんと想定した設計が必要である。
つまり「どう使ってもそれなりに鳴る」というより「想定したセッティングで具合を良くしつつ、他の置き方が駄目にならないようにする」というコンセプトが次なるステップになっていくのではないだろうか。

ただ実際のところプロの設計者でも完成後の微調整が必要となる分野である。
アコースティックな補正がしきれない場合、躊躇無く電気的補正が行われる。
アマチュアが設計し、電気的補正もあまりできない場合、不確実性が格段に上がるし、想定通りの特性になったとしても聴覚上好ましいと感じるかは聴いてみないと分からない。
好み自体も利用者の考え方や趣向の変化によって変わってくる。
そもそもオーディオ趣味は別の機材に交換することで改良を目指すことがよくあるが、交換して変化すること自体を楽しんでいる節もある。
つまり結果の不確実性と趣向の流動性、そして変化させること自体が楽しむ手段になっているという点から、どこの壁を反射するか吸音するか拡散するか、DIYレベルの難易度で可変できる機構が必要と考えられる(毎回大工を呼んでいられない)。そういう意味でも壁の埋め込まれた吸音部反射部は可変性が少ないという欠点を持っていると思われる。

市販の調音パネルは扱いやすさ、施工のしやすさなどから軽く薄い傾向がある。
だが軽く薄いものよりも重厚な物の方がより広い周波数でより大きな効果を得ることができる。
ある程度重かったり厚かったりする音響材を容易に着脱できるような使い勝手の良さを持たせる、そういうことをやろうとすればできるのも専用室の利点ではないかと思っている。

専用室の設計についてまとめると
・スピーカーの位置とリスニングポイントは予め大体は決めて設計すべき。そうしないときっちりすべてを揃える場所が存在せず、そこそこの良い止まりの部屋になってしまう可能性がある。
・だが、壁面の処理を替えられる可変性は大事。せっかく専用設計にするなら、普通の部屋では無理なレベルの可変性を持たせられるのも専用設計の強み。
・それでいて調音パネル張りまくりの野暮ったさを持たせないための工夫も必要。
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横長配置のリスニングルーム設計で再考

2020-10-18 08:07:50 | オーディオ
何度も仮想ルームを再設計をしているが、まあそれだけアプローチの門戸が広いので退屈はしないなあと思うところ。
今まで側方の一次反射音の同じ方向からは受け入れ、左右の反対方向からは受け入れないというトリッキーなコンセプトを考えていた。
そういう選択的な処理を行おうとすると側壁とスピーカーの距離をある程度近づけなければならなかった。
そのため必然的に縦長配置での設計になっていたが、今はいろいろ考察した結果、RFZのコンセプトに志向が寄っているので縦長配置にする意義がなくなっている。

スピーカーの横長配置で問題ないなら横長の方が良いんじゃないか、ということでまた部屋の設計を行ってみる。
今回の拡散構造は基本的には以前の記事のリブ配置から変更なしとしてレイアウトのみの考察にしている。




↑が横長配置で部屋の再設計をした図。以前のものよりも奥行きが短いのでスピーカーを17cmだけ壁に近づけている。正面の壁は少し近づいたが、側面はとにかく余裕ができた。
背後の拡散+吸音部は縦長設計の時の1畳全部吸音材というものではなく、半分は居住スペースにした。横長配置にすると後壁との距離が近くなりがちだが、リスニングポイント付近の壁は距離を十分取りつつ吸音もされているので影響が最小限に抑えられている。
正面の一次反射面をRedirectionしつつ、機材や窓の吸音をしてしまおうというふかし壁は、スピーカーと壁の距離を近づけたためさらに巨大化が避けられず、恩恵がたいしたことない割に巨大なので廃止し、側壁のようなくさび状とした。

下は比較用に縦長設計のもの。


今回の部屋の音波の挙動のシミュレーション。RFZにはなっている。縦長よりも若干ゾーンが広くなった感じはある。


三次反射音までをシミュレーション。11.6msまで反射音が入らないようになっている。11.6msと12.1msの反射音はスピーカーの真後ろが出発点であることから、実効性はあまりないと思われる。
そう考えると18.6msまでフリーとなる。15msはフリーにしておきたいという目標を概ね達成できていることになる。
鏡面反射理論通りに行かない音、床の音(一次反射面は緩和処理をする)、拡散処理で散った音のみで15ms以内はインパルス応答特性を積み上げていくことを想定。



下図はRFZの処理をしていない場合の三次反射までのシミュレーション。RFZによりリスニングポイントに入る反射音の量がかなり減っているのが分かる。



五次反射までシミュレーション。五次まで想定すると結構入ってくる。遅れて弱ってから入ってくる分にはウェルカムなコンセプトなので狙い通りではある。



ソファの配置を想定。家具が入ると狭くは感じる。




Stndwave2でシミュレート。縦長よりやや特性が悪い。
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ステレオ再生のためのリスニングルームチューニングについて

2020-10-15 08:14:14 | オーディオ
何度か今ある知見を整頓しようと思っていたけれど、うまく整頓できなかったので、今回こそはということで扱ってきた情報を纏めてみる。
検索で引っかかって見る人も想定した記事です。


オーディオを楽しむ場合部屋の重要性は各所で述べられていますが、
具体的にどうすればいいか、分からないことも多いと思われます。
amazonで売っているような凸凹の吸音材を張ると良い。
柱が沢山並んだような構造体を置くと良い。
部屋が大きい方が良い。天井が高い方が良い。
どれも一概には間違いではないですが、なぜ良いのかなぜ悪いのか、
そもそもどういう部屋の響きにしたいのか、
それを考えていかないと良くなるとは限りませんし、大した効果は期待できません。
チューニング材を適当に貼り付けたことで得られる最大の効果は、
「自分のリスニングルームは音響処理してある」という安心感です(自分はそうでした)。

それならどういうところに気を付けていけばいいのかを整理していこうと思います。
この記事では具体的な解決案は提示しません。解決策は複数ある上に長くなってしまうからです。

①周波数特性を整える
低い音と高い音の違いは音の周波数の違いです。
周波数毎に大きな音が出るか、小さな音がでるかを調べたもの、それが周波数特性です。
周波数特性の揺らぎは音色の変化や、特定の音量が大きかったり聞こえづらかったりする効果があります。
リスニングポイントで再生音の周波数特性を調べると、例えフラットな周波数特性のスピーカーと使用しても、周波数特性はフラットになりません。
部屋の定在波や反射音による位相干渉、周波数毎に異なる吸音率により周波数特性が変化してしまうからです。
周波数特性をフラットにするだけなら簡単で、吸音材を全面にもの凄く厚く入れておけばフラットに近づきます。
ただし後述するような響きの効果が得られないので、一般的にリスニングルームでひたすら吸音するという手法は用いられません。
つまり周波数特性をベストにする手法はあるけれども、あえてそれを使わずに次善の策で対応し、他の効果とのバランスを図るのが基本コンセプトになります。
またフラットな周波数特性は一つの正解ではありますが、絶対的な答えではありません。
志向に応じてある程度の傾向を持たせてウォームな音色、クールな音色を持たせることもあります。

例)自室の周波数特性(上)と同じスピーカーの無響環境での特性(下)





②響き(トランジェント、過渡特性、インパルスレスポンス)を整える。
オーディオ再生で音を聴く際に、スピーカーから出た直接音だけでなく間接音も多く聴取します。
部屋で響く時間は普通の部屋でも0.3秒くらいあることが多いですが、0.3秒の間に音は100メートルくらい進みます。
全方位に放出された音波が狭い部屋の中で壁に跳ね返りながら100メートル分飛び回れば、それなりの音波が耳の中に入ってくることは想像が可能ではないでしょうか?
部屋の響きの計測としてよくインパルス応答というテストが使われます。
もの凄い短い音をスピーカーから出して、マイクで直接音と間接音を拾って時系列に測定された音量を記録するという検査です。
その検査をしたときの一例が下のグラフですが、


ここで表される直接音は横軸が0msの縦軸が-0dBの1本だけです。他の膨大な音の柱は全て部屋の響きが測定されたものです(実際にはスピーカーの特性による付帯音が混在している可能性がありますが)。
横軸は直接音からどれだけ遅れて測定されたものか(単位は1000分の1秒)、縦軸は直接音よりどれだけ小さい音か(単位はデシベル)です。
「部屋の響きが大事」と言われる所以はここにあると言っても過言ではありません。最初の1本以外は全て部屋の壁の性質に影響された音だからです。

人間は直接音だけでなく間接音の性質も無意識に聴いて情報を解析しています。
インパルス応答が示す聴覚への影響は不正確を承知で図で簡潔に表すと下図のようになります。


何はともあれリスニングルームとして大事なことは左右のインパルス応答の特性を揃えることです。
つまり左右の寸法や吸音率や反射の挙動を同じにし、スピーカーと壁との関係を左右で高精度に同じ位置にすることを意味します。
それを行わないと反射音による定位の影響が左右で異なることになるため、真正面で定位するはずの音像が上下左右にズレたり不明瞭になったりします。

左右を揃える以外でインパルス応答をどのようにすればいい音になるのでしょうか?
それは様々な考え方があり、研究も現在進行形で行われている分野なので明確な答えは現在のところありません。
そもそも心理的によく感じるかどうか、という研究テーマであり、よく聞こえる音源、ジャンル、好みなどもあるので今後も絶対的な正解を設定できるものでもないのかもしれません。

ただ参考となりうるデータがあります。
下図はステレオ音像のイメージを阻害しないための反射波の必要減衰量を調べたデータです(data from Toole, 1990)。


インパルス応答の大きさをこのグラフ以内にすると音響障害の少ない響きを作れると考えられます。
また音の明瞭さを得るためには-23dB減衰させるのが最適という研究もあります。
そういったデータを参考にすると、響きはあるけれども極端に大きな反射波を極力減らしていくのがルームチューニングの基本となると考えられます。

それを踏まえて、小さな部屋、大きな部屋、吸音をした部屋、目指すべき部屋のインパルス応答を考えてみます。
これが正解という自信があるわけではないのですが、上記を踏まえるとこんな感じになると考えられます。


では比較的小さな部屋でインパルス応答を整えようとするとどういう処理が必要になってくるでしょうか?
これも一つの正解がなく、誤解や不正確を恐れずに言えば、
・大きな部屋では存在し得ないはずの早すぎる反射音は除外する
・大きすぎる反射音は音像に影響を与えるので音圧を抑える
・残響は減らさない
ということになります。


こういった響きを目指そうとすると吸音よりも拡散をしようとする昨今のトレンドに乗る必要性が出てきます。
大きな反射波が来る壁に乱反射する拡散体を設置することで、反射音を消さないが減らすことができます。
ですが吸音をしているわけではないので残響はあまり減りません(拡散しすぎると吸音効果が出ますが)。
また拡散体を多く設置すると、広範囲に望ましい響きの性質が得られるのでリスニングポジションのスイートスポットが広がります。



③残響を整える

残響は直接音やそれとセットで感じる早期反射音とは別物として知覚されます。
残響がないのはいわゆる「つまらない音」という印象を与え、マイナスイメージとなります。
ただ、メインの再生音とは別の音と知覚される以上、S/N(シグナル/ノイズ)で考えるとノイズに相当します。
要は残響が多すぎると不明瞭でノイジーな音になってしまいます(逆に早期反射音はS/Nを良くする効果が期待できます)。
残響はメインの再生音とは別物と認識されるので、残響感は直接音との音量の比率だけでは決まりません。
響きのある部屋だとしても小音量だと残響感は出ませんし、あまり響かせていない部屋でも大音量だと残響間は多少感じることができます。
ステレオ再生での残響がどれくらいが良いのかというのは明確な答えが確立されていません。
ただ、質の良い残響がもたらす好ましい音響効果として「音の包まれ感(LEV)」という概念があります。
音の包まれ感を感じられる残響にするためには側方や上方からの細かい反射音が重要と言われており、スピーカーのある正面からの残響音は包まれ感にはあまり有効ではありません。
音源に収録されている収録場所の残響音を再生するだけでは良質な残響を作れない理由がそこにあります。多少響かせて側方や上方からの残響音を作る必要があるので部屋を響かせているわけです。
実際にリスニングルームで聴取する残響の成分としては
・直接音の後期反射音が残響となったもの
・音源に収録されている収録場所で実際に存在し記録された残響
・ミキシング時にエコーをかけた場合に機械的に作られた音源の残響成分
・音源の残響が部屋で反射された残響の残響
が混在した状態と考えられます。

ただしこれはステレオ再生の話であって、マルチチャネルスピーカーを用いた3Dサラウンドの場合は全く話が別になってきます。側方や上方の残響を人工的に作れるからです。
マルチチャネルの場合、デッド気味が好まれる理由の一つと言えるのではないでしょうか。


④反射音の方向を整える

前述の通り残響はその方向が大事であったように、初期反射音もその到来方向やタイミングによってプラスに働きやすかったりマイナスに働いたりするようです。
これも研究途上であり、かなり雑多なので詳細は割愛しますが、大事なのはインパルス応答のデータには音源の到来方向という要素が含まれていないということです。
周波数特性が整っていて、インパルス応答を整えた上で、反射音の到来方向も望ましい方向から来るようであれば、それなりに客観性が担保された「良い音がする部屋」が手に入るのではないでしょうか。



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音響壁の処理の仕方について自分なりに分類を定義してみる。

2020-10-12 21:43:06 | オーディオ
反射、吸音、拡散とおおまかに言われているが、
不完全であったり、複数の目的があったり、微妙に定義が違ったりと、
もっと正確に表現できないと表現できていないなと思う事が多い。
恐らく研究者の中で定義している人もいるのだろうが、ちょっと探す分には見つからないので、小規模のリスニングルームでの利用に特化したものを自分なりに考えて分類定義してみる。

①反射
まあ普通の大きく平らな壁で起こり得る音の反射である。理想的には厚み重量のあるコンクリートの様な壁で表面に研磨処理してあるような壁だとおそらくはシミュレーションに似た結果の挙動を示すと思われる。
ただ理想的な反射は音響的に好ましくないことが多く、理想に近づけようという努力はあまり行われない。それなりの厚さがある平らな木の壁であれば反射壁として扱って良いのだろう。

②吸音で反射率を抑えた反射
反射率が1.0に近付くほど音響障害になるが、それは好ましくないと考える場合。
反射率を0.5に下げた上で、なるべく周波数特性や遅延などの数値は変えずに反射はさせる、そういった処理がこれにあたる。
吸音部と反射部を細かく交互配置する、格子の隙間に吸音材を入れたような状態にすると上記の様な特性を獲得できると思われる。

③拡散で反射率を抑えた反射
上記の処理で吸音する所をその代わりに拡散させるというのがこの手法。
吸音材を入れない格子がこれにあたる(格子の表面が反射部で溝の中が拡散部)。
ただしこれは基本的には鏡面反射するとリスニングポイントに入射する壁とそうでない壁では概念が変わってくる。
他の壁にとっては、普通に鏡面反射する分にはリスニングポイントに到来しない筈の壁が拡散処理によって少量ではあるもののリスニングポイントに新しく入射することになる処理である。
なので反射率という考え方をする場合、リスニングポイントに入るか入らないかで同じ構造の壁でも数値が違ってくる。

④吸音
入射した音が消滅する壁の状態である。理想的な状態とするには相当の厚みの吸音材が必要となる。理想的な吸音が望まれることは多くあるが、なかなかそれも困難であることも多い。低域から高域までそれなりの吸音率がある場合、これに該当すると考えられる。

⑤不完全な吸音
薄い吸音パネルなどを張った状態が該当する。低域が十分吸音されないので中高域が吸音率が高いが、低域が吸音率が低いままである。
不完全だから完全に害悪とは言えず、定位などが分かりやすく処理もし易い中高域を操作するだけでもそれなりのメリットは享受できる。

⑥周波数特異的な吸音
有孔ボード、ヘルムホルツ管、板振動型のバストラップなどがこれにあたる。
特性として特定の周波数のみ吸音する性質がある。
どの周波数をどう吸うか、シミュレーションが難しく、実際に理想通りになっているかの検証も難しい。
既製品が圧倒的に有利にはなるが、そもそも理想通り動くとしても使い道が難しい。

⑦3次元の拡散
入射した音波が偏りのない半円球状に分散されて反射される。理想的な拡散音場の壁がこれにあたる。どうすれば理想的な拡散をするかは研究段階であるが、かなり複雑な形態が必要なことは間違い無い。
そのため理想の拡散ができる構造が判明したとしても製造上の困難が想定されるため、理想の形態が判明したとしても一般的には実用されるとは思えない。
リスニングルームで実用される三次元的な拡散としては二次元のQRDがこれにあたる。壁に半円球を並べてもそれに近くなるかもしれない。周波数特異性もあるためなかなか理想通りにいかないだろうが、そもそも理想を目指すべきなのかは考える必要はあると思われる。

⑧二次元の拡散
入射した音波が半円形に分散されて反射される。1次元のQRDやリブ、柱状拡散体、スリットなどがこれにあたる、特定の軸には拡散され特定の軸は反射に近い挙動を示す。
多くの既製品がそうであるように、作りやすい拡散体を作るとこうなりがちであり、拡散性は理想的ではない。その分拡散であるにもかかわらず、音波の挙動はある程度読めるので、その偏りを想定した設計が可能とは思われる。

⑨時間軸の拡散
反射によってリスニングポジションに入射する壁において壁から反射して音が入ってくるという状態に変わりはないものの、一気にドバっとくるのではなく、少しずつ来るようにした反射の処理を示す。
四次元の拡散と言えばものすごい事のように聞こえるし間違いでもないのだが、やっていることは大したことでもない。
基本的には時間軸を拡散させるとき、反射方向もある程度は拡散される。意図して設計すれば方向は拡散されないまま時間軸だけを拡散することも理論上可能だが、そもそもある程度の拡散は好ましいことの方が多いので、時間軸だけが拡散されることは基本的にはない。
単純に時間をずらすだけではあるが、案外それだけで室内音響のあるべき要素の半分をパスできるのではないかと思われる。
単位時間あたりの反射波が小さくなるので、反射音が大きすぎるという音響障害がなくなる上に、位相干渉も分散されるので影響が小さくなる。
とはいえそもそも時間をしっかりずらすのは難しい作業ではあるが。

⑩方向転換
反射した音がリスニングポイントに入るはずの壁面に対して適用されうる処理。
拡散とは異なり、反射波に偏りがあるという意味では紛れもなく反射であるが、
リスニングポイントに反射波が入るはずの壁の反射角が変更されることによりリスニングポイントに反射波が入らなくなる。そういう処理になる。
リスニングポイントに入ってこなければその音波が生きていようがいまいが聴取者には影響されない。
方向をずらして観測されずに生き残った音波は何度か反射を繰り返し後期反射音や残響となってようやくリスニングポイントに入射される。
デメリットとしてはこの処理で響きを整える場合、響きの整ったエリアは狭くなる。
また鏡にレーザービームを当てたような綺麗な鏡面反射をする訳でもないので、方向をずらしても多少はリスニングポイントに入ってくる。
そういったデメリットもあるが、小空間では案外相性がいい気もする。
・小空間だと初期反射音が過剰になりがち、かつ残響が少なくなりがちなので、それを補正する効果としては有用。
・小空間の拡散は近すぎて細かくなりきらない可能性がある。また乱反射を伴うため高域が弱りやすい。
・部分的な吸音は僅かだが吸音材の反射音があり、吸音部とリスニングポイントが近いのでそれも聞こえる(らしい)。それが音の鈍さにつながる。
また音響インピーダンスが極端に変化するのは耳を少し動かすだけでも音の性質が極端に変わりやすいと言われている。
不完全ながら方向を逸らすというのは反射音を減量させる意味では吸音させず周波数特性の変化を最小限に抑えて減るのでデメリットが少ない。
・響きの整ったエリアは限られるが、そもそもホームリスニングの場合、真面目に聴く場合と、流して聴く場合があり、毎回どの場所でも整った響きが提供される必要がない。

とこんな感じで分類しつつ、今のトレンドではないが、方向を逸らす手法がそれなりにホームリスニングでのメリットを感じた次第。
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ダイヤ型にスピーカーセッティングした場合のシミュレーション

2020-10-11 16:22:15 | オーディオ
部屋の長辺と短辺のどちらを縦横に使うかはリスニングルームの利用の際に選択肢があるが、
もう一つ左右の条件をそろえつつセッティングする方法がある。
正方形の部屋を設計して斜め45度に使う方法である。

正方形なので定在波が分散できないという欠点があるが、
真正面と真後ろと真横が逆ホーン型になるので、そこからの反射音があまり来ないことが期待はできる。
採用するものではないとは思われるがメリットデメリットを考えてみる。

一次反射のシミュレーション


二次反射のシミュレーション


メリット
・極端に近い壁からの一次反射音がなくなる
・後ろからの反射音が、後ろやや側方の反射音となる。つまり後方成分を減らし側方成分が増える。
・同様に前方成分が減り側方成分が増える。
・側方成分が増えることは明瞭性の向上につながることは期待できる。
・部屋の四隅の一角にスピーカーを配置することになり、部屋の占有エリアを節約できる。

デメリット
・正方形の部屋でしか適応できず、定在波が偏在する。
・正方形の弊害かディレイが似たようなところで偏る。
・ダイヤ型でなく、斜め45度に傾けて見ると、スピーカーからリスニングポジションまでフラッターエコーが生じやすそうな配置であることがわかる。

総合的に考えると少しデメリットの方が多いような気はする。使えなさそうなものが本当のところどうかを考える機会も大事だとは思うのでこれはこれで。
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