モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

仮想リスニングルーム現時点でのまとめ

2022-04-10 01:01:24 | オーディオ
 今後リスニングルームを新しく作るとしたらどんなものが良いか、現時点での近日中の予定はないからこそ自由にじっくり考察できるので、それを考えてみようと始めたのが2020/06/19だった。2年近くが経過しようとしている。
 断続的に考察しつつその中身は紆余曲折を経てきた。様々な視点から重視すべき点があるため最適解というのが簡単には見えてこないので面白いとは思っている。最初は特性的にどうすると良いのだろうというところから悩み始め、次第に調節性であったり視覚効果であったり居住性であったりなど考察する部分も変化しつつ、ある程度煮詰まってきたかなと思えてきたのでここらでその情報をまとめてみる。

3D外観





 部屋の性質としては1人で居住することを想定したセカンドハウスである。
そのタイプとしたのは、まず家族も居住する家の一角をリスニングルームとしようとすると、同一建物内での音漏れを完全に防ぐ必要があり防音コストがかなり大変というのが理由のひとつである。
そして高度な防音自体が室内の居住性にマイナスの影響を及ぼしてしまうことも踏まえてリスニングルームは1棟独立の方が良いと考えた。
 1棟独立型とはいえ、独居を想定したセカンドハウスというコンセプトとしたのには理由があり、オーディオのリスニングをする場合1人で誰にも邪魔されないという視聴スタイルが結局は一番の基本になるだろうというのがその根拠である。他の人と一緒に音楽を聴くスタイルを否定する訳ではないが、そういったスタイルではハイファイオーディオのクオリティを可及的に追求する意義はそこまで大きくない。
 高いクオリティでの音楽再生ができるようにするのであれば、1人でじっくり聴ける環境は少なくとも必要であるように思われる。母屋の一角にリスニングルームを作ったという場合、アルバム1枚分を室外の事は何も気にせず1人でじっくり聴けるかは各家庭環境には依るが、個人的にはやや疑問である。
 ただの「離れの建物」ではなく、その建物内ですべての生活行動を送ることが可能なセカンドハウスとしたのも理由があり、音楽鑑賞だけの用途としてではなくオーナーが1人で好きなことをしたいときに活用できるからである。
 逆に言えば、母屋の一角にリスニングルームがあるとすれば音楽鑑賞以外にはあまり使わない部屋となり、使い勝手の悪い滅多に使わない部屋になりかねない。敷地内の離れにリスニングルームを作るにしても音楽鑑賞以外のことをしようとした際に母屋に戻る必要があるのであれば、音楽鑑賞以外には使わない空間となってしまう。
 母屋の敷地外にセカンドハウスを造ってリスニングルームとした場合は、セカンドハウス内でもひととおりの生活ができるので音楽鑑賞以外の日常生活行動をしたいときにも活用できるし、食事や睡眠などの際にもリスニングルームから離れる必要が無い。極論を言ってしまえばオーディオに飽きたとしても存在価値が十分にある部屋になる。
 またセカンドハウスは居住実態が認められればファーストハウスと同じような固定資産税の優遇措置を受けられるのでそういった意味でも同一敷地内の離れとして作るよりもメリットがある(ライフラインの基本料金は個別にかかってしまうデメリットもあるが)。
 マイホーム建築の際に夫が書斎を希望し、室内面積の取り合いが新築住宅のよくあるパターンであるように、趣味を持つ男性というのは自分専用の空間を欲するケースが多いのが事実である。そして専用の部屋があったとしても不十分で、隔絶された空間がより望ましいというのが自分の実感である。つまるところセカンドハウスとしてのリスニングルームという構想は別にオーディオが趣味でなくても、他の趣味に目移りしたとしても活用価値が十分にある構想となる。

内面間取り図


 セカンドハウスの生活のためのアメニティは基本的に最低限のものでいいと考えている。要はワンルームマンションと同じようなコンセプトである。リスニングルームがメインなのでリスニングルームから仕切れた空間は狭くして余分なコストをつぎ込むべきではないし、独居を想定したものなので広く取る必要もなければ豪華なものにする必要もない。そういった趣のアメニティは母屋で家族とともに使用するものに用意すべきである。
 逆に小さな空間の中にアメニティが全て揃っているというのは独居の場合はメリットにもなる。そしてリスニングルーム内で音楽を聴きながら色々なことができるというコンセプトにもつながる。リスニングルームのアメニティはあえてコンパクトな方が良い感じになる。当然ワンルームマンションと同じようなアメニティであればコストの面でも有利である。

リスニングルーム格子区切りイメージ


 室内の構成はリスニングルームとアメニティスペースに分かれるが、リスニングルーム内もリスニング専用スペースと生活空間スペースを格子で区切っている。格子はスペースとして2つに区切る効果があるが、音響透過性があるため室内音響としては同一空間として扱えるという性質を活かしたものだ。若干の拡散効果も期待できる。 
 音響的なスイートスポットはリスニング専用エリア内にあり、真剣なリスニング時にはそちらを用いる。
 PC見ながら、寝転がりながら、お茶を飲みながら、食事をしながらなど、あまり真剣なリスニングをしないときは生活空間エリアで音楽を聴く。音響的にはベストな位置ではないが、ながら聴きなので音質的な有利さよりも居心地よい生活と音楽鑑賞が密着できれば良いと考えてのエリアである。
 1つの部屋を2つのエリアに区切るのではなく、2つの部屋を用意してカジュアルに鑑賞するときはサブリスニングルームでサブシステムを用いて聴くという方が一般的な考え方かもしれないが、それをやると結局メインルームでの鑑賞が面倒になり足が遠のきがちなので、あえてワンルーム・ツーエリアの構想とした。

棚エリアの間取り図


壁面棚+格子戸イメージ




 リスニング専用スペースの壁は手の届く高さは殆どの面で棚を設け、その表面を着脱式もしくは扉の格子で覆う設計となっている。格子や棚自体が若干の拡散効果を持たせつつ、棚の中に響きの調整を行う物体(吸音材や拡散体など)を設置して響きを整えるというコンセプトになっている。
 格子はそれ自体に拡散効果があるだけでなく、大部分が透過することによりその奥にある音響調整材の効果を発揮させることができる。そして見栄えが悪くなりがちな音響調整材を目立ちにくくするための視覚的な遮蔽効果も期待できる。

格子戸を外した状態の棚


 音響調整材を置くための内部の棚は、音響に変化を与える材料を「置く」ことができるという点で利点がある。一般的な壁面の音響調整は壁掛け式のものであるが、「掛ける」より「置く」方が調節がしやすく、安全性が高く、壁掛け出来ないような素材や形状のものも使用できる。そしてある程度は音響調整だけでなく収納スペースとしても使用できるので居住性の改善につながる。

 格子の音響拡散性と音響透過性と視覚遮蔽性のために用いているが、和室風のイメージも与える。それをデメリットと考えずにモダン和風のリスニングルームを意識してデザインしている(実際に和風と感じられるかは別問題だが)。正面の棚はあえて格子を取り付けず、床の間のデザインを意識した飾り棚として、飾りとして利用できつつ、音響的にもある程度調整効果のあるものを飾れるようにしている。また一部はオーディオコンポーネントの収納スペースにも利用できるようにしている。

高所部分イメージ




 リスニング専用スペースの高所は高所作業用の通路を四方に設置しつつルーバー天井としている。一般的な高所作業用通路と同じように高所の採光用の窓のメンテナンスの役割も果たしてはいるのだが、格子の廊下と格子の手すりにより多少の拡散効果を期待している。
 そして一番のミソは、その廊下に音響調整材を「置く」ことによって高所の音響調整をできることにある。ルーバー天井にもルーバーの上に音響調整材を「置く」ことができる。
 高所の音響調整はかなりの困難を伴う上にそれを調整するために試行錯誤しようとなると相当に厳しい上に落下の危険も伴う。しかも高天井だとさらに難易度が上がる。そういった困難さがあるため無対策もしくは決め打ちにならざるを得なかった高所や天井部分の音響調整が安全かつ簡易にできるというのがこの構造の最大のメリットである。

 窓はあまり音響的にメリットはないが、最低限ながらも目的をしっかり決めて付けるようにしている。窓を潰した防音室を利用していると、やはり外の情報が分からない、太陽光による時間の感覚が分からない部屋というのはあまり好ましくない、面白くない、快適でないと感じる。
 高所に採光用の窓を設置しつつリスニングポジションの正面に景観用の窓を設置している。どちらも必要ない時には音響的に好ましい1DのQRDのようなものを扉にして開閉できるよう考えている。音響的に多少の妥協をできる時は採光や景観を優先し、音響最優先の時は窓を閉じるという切り替えができれば窓があってもデメリットは少ないのではないだろうか。

 照明は太陽光の採光のように自然で落ち着くような建築化照明をメインとしつつ、高所作業用通路の手すりに補助の照明を設置する形を考えている。メインの照明は落ち着く柔らかい光をメインにしつつ、補助の照明は演出的なものとし、補助は気が向いたときだけ付けられると良いのではないか。
 照明もなかなか決め打ちが難しいので補助のものは壁埋め込みではなく交換や調整が容易になるよう手すりに固定するくらいのものが良いと考えている。

生活空間スペースのイメージ


 後方の生活空間スペースはリスニング専用スペースとは格子および格子扉で区切られているが、境界が格子のみなのでこのスペースでも音楽鑑賞自体は可能である。
 PC操作や読書などができるデスクはスイートスポットから外れてはいるものの、ステレオイメージを損ないにくいポジションになっている。快適にデスクワークや読書をしながら良い音楽が聴ける場所があると素晴らしいのだが、ガチガチのリスニングルームだとそういうことはしづらくなるのだがエリアを区切ってできるようにした。
 生活空間スペースの後方の壁には他の壁と同じように棚を設置している。ここは積極的に音響調整材を入れてもいいのだが、主に生活用品の収納をするスペースとしても想定している。衣類などは吸音効果があるので、日用品で調整しようというコンセプトだ。後方の反射音はある程度不明瞭化してくれた方が良いと考えているので、日用品収納の棚は後方の壁で採用することになった。
 後方にはソファとベッドを用意している。ソファでくつろぎながらでも、ベッドで寝転がりながらでもメインシステムの音楽を楽しめるようにしたいというコンセプトである。このあたりのエリアは音響的に優れたスポットとは言い難いが、間接音の割合が多くなり、あまり神経使わずに聴く分にはそういう音の方が気楽で良いのかもしれないと思っている。
 生活空間スペースにはミニキッチンも設置している。居室にキッチンがあるのはワンルームマンションみたいだが、居室にキッチンがあることによって、お茶を入れるとか軽食を用意するくらいであれば音楽を聴きながらできるというのがメリットだ。(冷蔵庫は騒音の元になるので隔絶しなければならないが。)
 作業や仕事をやりたいから、疲れたから、眠いから、飲食をしたいからリスニングルームで音楽鑑賞はできないということがないよう、せっかく良い音楽の再生環境が作れたなら可及的に使いやすくして活用できるようにすべきというコンセプトとなっている。
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仮想部屋を一部勾配天井に設計し直す

2022-04-08 23:30:16 | オーディオ
様々な観点からより良いリスニングルームを目指して試行錯誤しながら設計している仮想のリスニングルームだが、勾配天井を一部採用してみることにした。
勾配天井は床と天井が並行にならないので音響的に有利ではあるが、今まで組み込んでいなかった。

横から見た平面図はこんな感じで、居室部分は一般的な天井高としつつ高天井のリスニングスペースを二寸勾配に変更している。



今まで勾配を組み込んでいなかった理由としては、中2階が勾配天井により一部の高さが1.4mを越えると居室面積とカウントされ固定資産税的に不利になるかもしれないからという理由があった。だが、そもそも中二階の構想もあった高所部分は現在は完全に居住用と見なされない作業用通路になったので無理に天井高を意識する必要がなくなったのだ。

高所のみカリモクのシミュレーターで別個に再現(3D視点の高さ調節機能がないため高所のシミュレーションは別に作った方が分かりやすい。)



勾配天井を採用すると採光用の高所窓や間接照明などの設置部分の自由度があがるので採用した方が良さそうだというメリットもある。
さらに建物自体の高さも低く出来そうだというメリットもある。勾配天井を採用していなかった時の設計では天井高は3.9mで設計していたが、同条件の天井高3.5m程度でも勾配天井にすると同等の容積を得ることができる。

ある程度煮詰まってきたのでここらへんで仮想ルームのコンセプトの現時点でのまとめ記事を作っていこうと思案している。
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室内音響のハウツー方式の解決策をまとめ

2022-04-03 17:26:03 | オーディオ
今までどのような室内音響処理がいいのかと考えることが多かったが、今の音をこうしたいと言うときにどのようにすべきか、という観点でまとめたことはなかった。
考え方の整理として、備忘録として、早見表として今回の機会に記事にしてみる。
理屈的な観点からもある程度妥当性があるだろうというというもののみを扱うので実践でどこまで効果があるかは断言できないところはある。
今回言述するものは全てステレオ再生のみのケースが前提となる。

●音像を明確にしたい
 →間接音の不整を改善する。直接音の割合を増やす。
・室内を左右対称にする
・できなければ吸音を多くする
・スピーカーをリスニングポジションに近づける
・ホーンスピーカーを採用する

●音像に奥行きを付けたい
 →ITDGを増大させる。早期反射音の割合を減らす。
・スピーカーと壁との距離を離す
・スピーカーとリスニングポジションとの距離を離す
・大きな部屋に設置する
・拡散体を設置する(特に早期反射面)

○音像を近づけたい(ボーカル等を前に出したい)
 →ITDGを縮小する。早期反射音の割合を増やす。
・スピーカーを壁に近づける
・スピーカーとリスニングポジションの距離を近づける
・小さい部屋に設置する
・反射板を設置する

●音像をワイドにしたい(横に広げたい)
 →ASWを増大させる。早期反射音の入射角を大きくする。
・スピーカーと側面の壁との距離を広げる
・側面の壁を拡散させる
・大きな部屋に設置する

●音像を大きくしたい(縦に広げたい)
 →音源を縦に大きい物にする。下方からの反射音を減少させて合成音像が下方に移動する要因を除去する。
・スピーカーとリスニングポジションを近づける
・床を吸音させる(特に早期反射面)
・アレイスピーカーを採用する
・仮想同軸のスピーカーを採用する
・ホーンスピーカーを採用する

●音場感を出したい
 →LEVを確保する。
・後壁と側壁と天井を拡散させる。
・天井高を確保する

考えがまとまり次第適宜加筆予定。
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物価高時代のオーディオについて考える

2022-04-02 12:41:05 | オーディオ
ピュアオーディオ関連の値上げはここ数年ではオーディオ業界のニュースの大半を占めるくらいの日常茶飯事だが、コロナ禍とウクライナ情勢の影響でそこに拍車がかかった様相を呈している。
ソニーやヤマハやパナソニックやオーディオテクニカなど大手も耐えきれずに値上げを発表している。


https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00112/033000069/


記事の無料部分にもあるように家電製品の中でオーディオの値上げが顕著のようである。
ハイエンドオーディオのように独自かつマイナーすぎる市場で値上げをされても他の要因を疑う余地があるが、
ゼネラルオーディオのメーカーが相次いで値上がりしつつ、それがニュースとしても取り上げられるくらいなのだから、オーディオ製品の製造コストの大幅上昇は否定しがたい確固たる事実となりつつある。

なぜオーディオ製品でコスト上昇が顕著なのかと考えてみると、
・そもそも市場が縮小中であり規模拡大によるコスト低減を生み出しにくい。
・技術進歩によるコスト低減が期待できない。(CPUやメモリの場合プロセスルールが微細化すれば従来機のハイエンドと同等の性能の廉価モデルを作れるが、オーディオに関して同様の事例はほとんどない)
・物量や重量を要求されるため材料費や輸送費の高騰の影響を受けやすい。
・半導体や金属など高騰が著しい分野の使用量が多い。
・材料に輸入品が多く、海外ブランドも多いため円安の影響を受けやすい。

この辺りが原因となってくるのだろうか。
そもそもプロ用はまだしもコンシューマー用途の高品質のオーディオシステムは必需品化と言われれば全くそんなことはない。いわゆる贅沢品である。

・疫病の大流行で供給や物流が滞っている。
・戦争の影響で物資が少ない。
・現在の我が国の中央銀行が極度なハト派であり円の価値が毀損されている。

この辺りの要因が重なっている中であえてオーディオシステムを買い進めるという時期ではないのかもしれない。
来年の2023年以降にそれぞれの要因が和らいでくるとは思われるので、それ以降に大きな買い物は検討してみようとは考えている。
俯瞰してみると今の時代は世界的に見ても豊かとは言いづらい状態にはなってきている。ピュアオーディオのような贅沢な趣味はその時代には逆風なのは仕方ないように感じる。
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