ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

保釈・・・15    一本の注射

2016-03-14 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

   9月15日(金曜日)
 朝、クラスでスペイン語の勉強をしていると、インド人が来て診療所のドクターがぼくを呼んでいると知らせてくれた。ポケットの中に危ない物が入っていないかチェックし急いで診療所へ向かった。診察室に入るとドクターはリラックスしてベッドの上で横になるようにと言った。今から一本の注射を君に打つ、ちょっと意識が乱れて身体が痙攣するが心配する事はない、数時間後には元に戻る。君も少し意識して激しく痙攣しているように振舞ってくれた方が良いだろう。
 本当にそんな薬があるのか、薬の量を間違えて意識の乱れと痙攣が治らないなんて事があったら不味いよ。こういう微妙な匙加減となるとぼくはインド人を信用出来ない。不安はあったがここはもうドクターに任せるしかないだろう。ドクターは注射器を持って来てぼくの腕に針を刺した。数分すると本当に意識が薄れ身体の痙攣が始まった。ドクターの大きな声や人間が動き回る音がする、ぼくは直ぐタンカーに乗せられ第一刑務所のセンターゲートへ小走りで運ばれた。ゲート前にいた数名のアフリカンが心配してぼくの顔を覗き見していた。
「どうした大丈夫か、トミー?」
声は聞えるがぼくは話せない、痙攣は続いていた。
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