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インド・ネパール。心の旅・追想

保釈・・・21      最後の日 

2017-02-07 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

 大きな木の台座に座ってぼんやりと考えていた。数時間後、ぼくはここから去っていく。ぼくが夕方、リリースされる事を知っている者は近寄って来て祝福をしてくれた。1994年10月24日に逮捕されてから今日1995年9月23日までちょうど11ヶ月、デリー中央刑務所に収監された。ここに入った事を後悔はしていない、ここでしか得られない多くの出来事や出会いがあった。
 昼の施錠時間に荷物の整理をした。大切な3冊のノートと少しの衣類だけをビニール袋に纏めて入れた。残ったトレーナーやセーター等の衣類はこれから必要になる収監者たちへ、3時の開錠時間にそれを残る彼等に分けてあげた。
 夕方6時の施錠前、グラウンドでウオーキングをしていた。バナナ畑は大きくなった数本のバナナの木を残して少し荒れていた。木は高くなっているが幹が細い、花は咲かないだろう。鉄格子を打つガーン、ガーンという金属音がした。施錠を知らせる合図の音だ。薄暗くなりかけたグラウンドから収監者達が夫々のバラックへ向かってのろのろと歩いて行く、もう彼らに会う事はないだろう。ぼくのCバラック3房の鉄格子がロックされた。
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