ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅        アシアナ(医療監房)・・・・・22

2013-03-15 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ


 気の抜けた午前のミーティングが続いていた。そこにテレビ局の撮影機材を乗せたリヤカーが入って来た。度肝を抜かれたインド人達はてんやわんやの大騒ぎだ。プライバシーの侵害なんて関係ない、目立つことが大好きなインド人だ。技術者が動き回り玄関フロアーから黒いコードが延び機材に接続された。カメラがセットされ照明係りが位置の指示を受けていた。本番前、カメラのテストをやっているのだろうか、そのカメラに向かってインド人達は喋ったり手を振ったりしている、後ろに下がれと大声で怒鳴っていた事務官は一番目立つ最前列に陣取った。彼らは自分の生涯で二度とないであろうテレビに写るというチャンスに興奮している。ぼくとピーターは立ち上がったインド人達の後ろに隠れるようにして座っていた。写っては不味い、どういう目的の取材なのか何も知らされていない。カメラマンが収監者を撮り始めスタッフはマイクにレポートを送っているようだ。暫らくするとマダムは取材者らしき人物と玄関に現れた。何時ものように用意された椅子にマダムはゆっくりと腰を掛けた。今日のために装ったのかもしれない優雅にサリーを着こなし束ねた長い髪がマダムの背中で揺れた。インドには確然としたカースト制度がある。最高カースト家系に育ったマダムは気品と愛、そして厳しさを合わせ持っているように思えた。

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