ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          アシアナ(医療監房)・・・・・18

2013-02-23 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ

 アシアナのゲートを一人の白人が入って来た。肩まで伸びた金髪、痩せてはいるが大きい男だ。気になったぼくはミーティング中にも関わらずトイレに行くような振りをして玄関フロアーに入った。男はぼんやりとドクター室の前の床に座っている、お互いの目線が会った時
「ハーィ」
と声を交わした、それがピーターだった。
午後の開錠後ぼくはマダムに呼ばれた。インド人とのベッドの共同使用を拒んでいたぼくにマダムはドイツ人ピーターとの共同使用を命じた。
「外国人同士でしょう、上手くやりなさい」
マダムは一時期、次々と患者を退所さていたがその方針を変えていた。11月中旬頃からだろうか、今ではぼくとシーク教徒ハルジュダム以外のベッドには2名が寝起きしていた。ベッドの間、通路にも収監者が溢れた。朝のティータイムでは不足しているコップを収監者同士が取り合った。朝6時の開錠後、水浴する為の行き帰りこっそり食器置場に入りコップを持ち出していたのだ。コップは列の前から配り始めるのだが早い順番の場所に莚を敷いてティー・コップを待ってもそれは回って来なかった。後から来た者が自分の前にコップを置きティーを待つ、コップのある所にしかティーは注がれない。先に使われたコップを洗いティーを飲む時には温くなり臭いが鼻につき不味かった。
 夕食が終わり施錠前の僅かな時間、患者達は病棟の外周を歩いていた。運動といえばそれくらいしかない、鉄扉を打つ金属音がした。玄関フロアーから外まで続いていた長い列が次第に短くなりぼくは病棟に入った。また遅々として進まない長い夜が始まる。


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