ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・48

2012-09-24 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録
   12月25日(月)(入院して22日)

 明日、Bさんが来る。退院の日が決まるだろう、27か28日の2日しか残されていない。ネパール行きをBさんに話すべきか、そればかり1日中考えていた。
 アルコール中毒だった父の血を受け継いだのか、ぼくはスタッフ中毒で薬物が止められない。金だらいに激しく吐血した父の濃い小豆色の液体をぼくは見た。もう吐き出す力はなかったのか、胃壁に開いた穴から出血した血液は腹膜に流れ出していた。最後のアルコールを口に含んだ時、父は何を考えていたのだろうか。スタッフでブラック・アウトしたぼくは父と語った
「親父さん、あんたは偉いよ。アルコールに飲まれたのではない、飲み尽くしたんだ」
父は黙ってぼくを見ていた。
 裁判を終らせてネパールへ行きたい、だがいつ終るか分からない。その間にまたスタッフをやりだすに違いない。奴との関係を断ち入院している今でさえ、抜け切ってしまえば吸いたいと思っている。体重も50kgに回復してきた、スタッフを断った今しか帰国するチャンスはない。退院してもすぐには手を出さない、2週間ぐらいなら何とか我慢できるだろう。その間にスタッフが吸えない日本へ帰ろう、奴への依存症から逃れるにはそれしか方法はない。国境で再逮捕されデリー中央刑務所で薬物死するならそれでも良い。国境を無事通過し日本へ帰ることが出来るなら、それも良い。
 カトマンズで土産物店をやりながら学校へ通う、ネパールの子供を養子として育て、平穏なネパールの生活を考えて出国した5年前、何もかも狂ってしまった。人生とはそうしたものなのか、ぼくには分からない。明日、ぼくは本音でBさんに話そう、話すだけで良い。

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