ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅         マリー・・・・・13

2011-07-11 | 2部1章 マリー
ぼくとA書記官は事務的な後処理を行った。日本からの送金と弁護士、裁判所それにぼくの生活費等の収支明細と残金を確認した。大使館の金庫に保管されていたぼくのお金は百ルピー紙幣で二千枚、二十万ルピーは小さなダンボールに入れて運ぶ量だった。簡単に開けられないようにダンボールに入れガムテープで封印した。日本から荷物が届いていた。A5サイズくらいの英和、和英二冊の中辞典、これはたぶんA書記官が面会に来られたとき日本から送ってもらうようぼくが依頼していたものだ。スタッフのせいだろうか、随分と目が悪くなっているぼくにとってフォント数の大きい中辞典は見易かった。ぼくと甥はよく熱海や真鶴に釣りに行っていたが、ぼくがどんな本を読んでいるか知らない筈なのに、辞典と一緒に大江健三郎著「あいまいな日本の私」という新書を同封してくれていた。
引き取る荷物の整理が整いBさんの所へ挨拶に行くと
「これで当分お金の心配はないでしょう。あ、ひとつ頼みが有るのですが、刑務所内のレポートを書いてくれませんか?」
ぼくは顔を上げてBさんの目を捉えた
「いや、一応、刑務所の実態を知っておきたいので、何でも構いません収監者の日常生活や、それに刑務所内の略図のようなものがあれば分かり易いですね・・・」
「分かりました、出来上がり次第お届けします」
パールガンジ警察署に面会に来てくれた女性のCさんが玄関フロアーへ出るドアの所まで送ってくれた。執務室に入って一時間くらいは経っただろうか、見るとマリーは待合室でマガジンを読んでいた。ぼくに気付くとそれをテーブルの上に置き、待っているぼくの所へ来ると一緒に玄関へ向かった。少し感傷的になっていたのだろう、黙って歩くぼくを彼女は記遣い声を掛けなかった。


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