ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅         マリー・・・・・23

2012-02-16 | 2部1章 マリー
 フィリップスからスーツ、ネクタイ等を借りたがサイズが大きい、まぁしょうがない。
それを着てパスポート用の写真をとる、デリーで用意出来るのはそれだけだ。住民票と戸籍抄本は日本にある、どうするかは大使館に行って相談してみよう。日本の姉へはマリーの身元保証人の依頼とぼくの裁判は年内にも終り年明け早々にでも帰国する事が出来るでしょうと書いた手紙を出した。大使館のBさんから依頼されていた第一刑務所のレポートを書き終えていた。
 駄目だ、何もかも上手くいかない。
「ご存知でしょう、貴方のパスポートを再交付する事が出来ない理由を」
Cさんは優しく噛んで含めるようにぼくに説明をされた。パスポートが欲しい、それだけしかぼくの頭の中にはなかった。状況を正常に理解する能力を失っている。渡航中に有効期限に達した時、ページに余白がない、盗難で紛失、不可抗力によるパスポートの破損、パスポートの記載事項の変更、等が再交付の条件だ。判決が出るまで何年掛るのか分からない、有罪判決が確定すれば再びぼくは刑務所に収監される、保釈中のぼくに在インド日本大使館は新たにパスポートを交付する事は出来ない、当然の事だ。ぼくはBさんに提出するレポートをCさんに渡し大使館を出た。
 マリーとメトロポリスで夕食をする約束をしている。このレストランはメインバザールの中では一流だ、ぼくにとってはと限定すべきだろうが。冷房の設備がある、乾季の暑い日には良く冷えたビールが美味しかった。メトロポリスの一階は吹き抜けになっていてぼくが座っている中二階のテーブルから入口が良く見える。ブラックティーを飲みながら本を読んでいると店に入ってくるマリーに気付いた。テーブルを挟んでぼくの前に座ると
「どうだった?パスポートの件」
「駄目だ、どうにもならない、パスポートを作るのは無理だ」
「他の方法、可能性を考えてみましょう」
彼女は以前から考えていたのではないだろうか、ぼくに話すべきか少し迷った様子を見せたが
「一つの方法よ」 と、次のように話し出した。
「偽造パスポートを使ってネパールへ入国し、在ネパール日本大使館へ行く。そこで新しいパスポートを作り日本へ帰国する。偽造パスポートはフィリップスが何とか用意してくれるわ」
 

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