靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

ぴかぴかのカーテンレール

2014-01-12 08:05:02 | 子育て風景
週の初めの夕食前、壊れたカーテンレールを直しに業者の人がやってきた。コケージャンの夫さんとアジア出身の奥さんと二人で。夫婦二人、二十年近くカーテンレールを取り付ける仕事をしているそう。

夫さんがスクリューやらドリルやらを操る横で、あちらを拭き、部品を渡しと奥さん。息の合った様子でちゃくちゃくと仕事が進む。

背後できゃ~きゃ~と走り回る子供達。デイケアしてるの? いやあの全部家の子なんです、え~! なんて会話を交わしながら。(笑)



仕事の手が空くと、横で料理したり子供の宿題を見たりとしている私に、気さくに話しかけて下さる奥さん。あなた何年アラスカに?十四年です。どこから?日本から。私達は三十年よ、結婚して三十一年。

行ったり来たりと入れ替わる子供達の一人一人に、お名前は?何歳?と聞いて下さり。

私達夫婦に子供はいないのだけれど、私には十二人の兄弟姉妹がいてね、でもね半分くらい死んじゃったのよ。生まれて数ヵ月後に双子が、あと五歳と六歳と八歳で弟妹がね。フィリピンの小さな山の上の村で、病院なんてものも無かったからね。病気になったり怪我をすると、もうね、どうしようもなかった。苦しんだり痛がったりする傍で、ただただ撫でたり手を握ったり。今でもね、あの子達のこと思い出すと涙が出るのよ。

四十年くらい前の話だけれど、今も地域によっては同じような状況かな。米国や日本とは、全く違う世界よね。貧困ってね、残酷なものよ。



三女と次男がきゃっきゃとふざけ合いながら傍に来る。「ママ~、おなかすいた~、今日の夜ご飯な~に?」

ぱっと明るい表情になり、冗談を言って二人を笑わせる奥さん。あなたは大きくなったら何になりたいの? と尋ね、目を細めて三女が答えるのを聞いている。

ぴかぴかのカーテンレールが取り付けられ、しゃっしゃとカーテンを開けたり閉めたりと点検するお二人。お礼をいい、雪の中に笑顔で手を振る姿を見送り。



いつもと同じ夕食風景、それでも、何だか全く違って見える。

「いただきま~す!」と子供達。

「いただきます」の一文字一文字が、心に響いた。


出会いに、感謝をこめて。


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2 コメント

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Unknown (テッサー)
2014-01-12 21:58:07
そう、フィリピンて薬がすごく高い。知人のお父さんが(すでに故人)腎臓悪くして透析が必要になったとき、家や車を売り、学校やめて働いて何とか治療費を捻出したらしいんだけど、そういう財産なかったら、どうしようもないって…。
つらいよね。
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テッサーさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2014-01-16 06:44:22
家や車売って、学校も止めて働いて、それほどしなければならないほどの額なんだね。

「どうしようもない」
やり切れない言葉だね。こうして命を支える最低限に見えることさえ、諦めざる得ない人々がいる。

キング牧師の言葉にね、「あなたがあるべきあなたにならない限り、私は決してあるべき私にはなれない。これが相互に関係する現実の構造なのです(I can never be what I ought to be until you are what you ought to be. This is the interrelated structure of reality).」というのがあって。

これは本当にそうなんだなあと思う。

与えられた一瞬一瞬を大切に、自分にできる限りのことを、落ち込んでしゃがみこんでいても、何も変わらないと自分に声かけてます。この痛みを、立ち上がる力に。

テッサーさん、いつもありがとう!
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