指定管理者という外部化のもとでブラック企業のような低賃金を強要
公共施設の管理などを民間企業などに代行させる指定管理者制度が広がるもとで、足立区立竹ノ塚図書館の副館長だった女性(51)が、図書館の指定管理会社から雇用更新を拒否される雇止め事件が起きました。女性は8月21日、東京地裁に地位確認などを求めて提訴しました。
最低賃金違反を指摘し是正を求めた副館長を雇止めに
「司書資格を生かし、好きな図書館で働き続けたかった。図書館で働く道が低賃金で無権利ともいえる民間企業しかなくて残念だ」と話します。
女性は指定管理者で竹ノ塚図書館の管理や運営をしているトミテック(株)の従業員。司書資格を持ち、ほかの図書館で勤務した経験があることから、同館の業務の中心を担っていたと言います。
時給180円は最低賃金法違反
会社は2011年8月、区の委託を受けて図書館内の約2万冊の蔵書に防犯用シールを張り付ける作業を従業員に指示。1枚7円で、勤務後に内職として作業するように命じたといいます。
9月から、13人の従業員が自分の勤務日の夕方に作業すると、蔵書録と照らし合わせながらの作業は複雑で、1時間に20~30枚程度しか進みませんでした。「1時間作業しても180円にしかならない。最低賃金法違反になる」ので見過ごせないと思い、副館長として作業をいったん中止し、改善するよう上司に進言しました。
しかし、会社が改善しようとしないため、女性は区に公益通報。ところが、会社は次の期間満了で契約を打ち切ると通告してきました。
雇い止め理由には、ルールを守れない、協調性がないなどの理由が挙げられています。しかし女性は副館長になって、地域の学校訪問や特に専門性が必要とされるレファレンス(※利用者の調べもののお手伝いなどをレファレンス・サービスという)も滞ることなく行っていました。
図書館の外部化によるコストカットが要因
女性は足立コミュニティユ二オンの組合員で、労組側が団体交渉で雇用の継続を求めても、会社は期間満了の一点張りで撤回しなかったと語りました。
記者会見で柿沼真利弁護士は「指定管理者が過度のコストカットを行ったことで、従業員が極端に低い賃金で働くことになり、これに対し改善を要求した女性への『報復』として雇止めが起きた。このことは、公益通報監察員による調査報告書でも詳しく述べている」と指摘しています。
足立区議会では日本共産党区議団が「指定管理者制度が官制ワーキングプアをつくり出している。外部化のもとで、ブラック企業のような低賃金を強要するなどは許されない。公共サービスの質と安定した労働条件を確保するべきだ」と求めています。
図書館をよく利用するという住民はこう言います。
「ニュースで裁判を知り、私が行く図書館も同じだなと言っていた。近くの図書館は自動車修理会社が指定管理者で、若い職員はすごく一生懸命働いているが、顔ぶれがしょっちゅう変わるので気になっていた。給料がすごく安いんじゃないかと思う。区も調査して改善するべきだ。本も新しいものを増やしてほしい。区の誠実な努力を求めたい」と語っています。
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