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にしみの鉄道情報局付属ブログ

ATSとATCの違い

2011-04-01 | 鉄道技術
自分は長年ATSとATCの違いは、閉塞信号現示や速度信号現示が地上信号方式か車上信号方式かの違いだと思っていました。

車上信号方式は車内信号方式ともいい、上の写真のように、速度計の周りに現在の許容速度が表示される方式で、この速度を超えると、ブレーキが自動的に掛かる仕組みになっています。
東海道新幹線で初めて導入され、その後山手線京浜東北線や総武横須賀線東京地下トンネル、青函トンネル、各地の地下鉄(都営浅草線を除く)、新交通システムなどで採用されています。このうち総武横須賀線東京地下トンネルはATS-P形に変更されています。
地上信号は言うまでもないのですが、線路脇に立っている信号の事です。

すっかり車上信号と地上信号がATCとATSの境界だと思っていたのですが、日本初のATC採用路線は東海道新幹線ではなく営団日比谷線と言われています。車上信号ではなく地上信号のなのですが、ATCを名乗っています。このタイプのATC(WS-ATC)は東京メトロ日比谷線と東西線、大阪市営地下鉄の御堂筋線、谷町線、四つ橋線、中央線、堺筋線で採用されています。日比谷線と東西線は車上信号式のATC(CS-ATC)に更新され、現在は大阪市営地下鉄のみで見られるようです。
速度照査付きのATSと地上信号式のATCの違いがよく分からないのですが、速度照査で制限速度以上になったら、ATCは常用最大制動で減速し制限速度以下になったら、自動的にブレーキを緩和する機能があり、ATSは非常ブレーキを作動させて停止させるようです。
つまりATSとATCの違いはブレーキの自動緩解機能があるか無いかとなりますが、それだけでは一概には言えないんです。

青函トンネル用の青函ATCは貨物列車や客車列車など機関車けん引の自動ブレーキ車が多数運転されており、自動ブレーキは込め不足になるなど技術的にブレーキの自動緩解機能が難しいため、速度オーバーの場合は直ちに非常ブレーキが作動し停止します。これではいきなり非常ブレーキが作動して運転が出来ないので、1閉塞手前から予告を表示させて、運転士が常用ブレーキでその速度まで落とし、落とさなかった場合に非常ブレーキが作動するようにしています。自動緩解機能が無いためATSの一種という扱いをする予定でしたが、車上信号のためATC扱いになったと言われています。

またATSの改良型のATS-P形は、パターン(上限速度で自車の制動性能と走行距離から変化する)が発生した場合は、自動的に常用最大制動が作動し、所定速度まで低下したら自動的にブレーキを緩和します。パターンによっては即時停止になることももちろんあります。
なお青函ATCと同じ理由から、機関車や気動車などの自動ブレーキ車はパターン発生時即座に非常ブレーキが作動して停止します。JR東海が導入するATS-PTはこの方式となっています。

もう一つの例外が都営浅草線、京成電鉄、京浜急行(後に北総鉄道、芝山鉄道、新京成電鉄でも採用)で使用されている1号型ATSで、このATSもブレーキの自動緩解機能が有ります。
45km/h以上の速度照査の場合、45km/hまで減速した時点で自動緩解し、45km/h未満の場合には非常制動で停止させ、それ以降は15km/hの速度照査が常時作動します。
1号型ATSは45km/h以上の速度照査でも、一律45km/hまで速度を落としてしまうため、必要以上に速度が抑制されるため、新型のATSへの更新が進んでいるようです。
かっての日比谷線と東西線の地上信号式のWS-ATCは40km/hと25Km/hで速度照査と自動緩和なので、1号型ATSと何処が違うのかよく分かりません。
なお1号型ATSの後継のC-ATSはATS-P型と同じパターン形で(点照査と軌道回路照査という違いがあるが)、照査速度で自動緩和が可能ですが、地上信号のためATSの範疇に入れられています。

詳しい資料が無いので分からないのですが、阪急神戸線などで採用されているATSにも1号型ATSに近い機能があるようです。

このようにATSとATCの境界は明白ではないのですが、今後は自動緩和の有無ではなく、地上信号と車上信号の違いに定義が変化するかもしれません。
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