関西私鉄はレール幅がJR在来線と異なる1435mmの標準軌を採用している所が多いため、多くは陸送となっており、現在では南海のみ鉄道輸送の新車搬入となっています。
近鉄の場合
近鉄はグループに近畿車輛にて、すべての車両を製造しています。
近鉄は多くの路線のレール幅が1435mmの標準軌のため、陸送で高安検車区に送られます。
なお、南大阪線とその支線は1067mmを採用していますが、同じく陸送で一旦高安に入ります。ここから1435mmの台車を履いて、樫原神宮前まで回送され、ここで台車を付け替えて南大阪線に入るようです。なお、古市の検車区に直接陸送されたケースもあるようですが、近年は南大阪線への新車導入が少なく、どちらが多いのかはよくわかりません。
なお、南大阪線と直通する吉野線は吉野杉の輸送を目的に建設されたため、1970年代まで貨物輸送も行なっていました。その頃は吉野口駅で貨車の受け渡しがあり、そこで新車が搬入されたこともあります。
阪急の場合
阪急は子会社にアルナ工機という車両メーカーがあり、ここで車両を製造していましたが、同社が鉄道線の車両製造から撤退したため、現在は日立製作所に車両を発注しています。
阪急の拠点工場である正雀車庫は、阪急の京都線と東海道線吹田操車場に挟まれた場所にあります。東海道線とは道路を1本隔てただけなので、かっては正雀工場内に1067mmの引込み線が延びていて、ここから新車を搬入して、正雀工場内で台車をはきかえていました。現在引込み線はなくなりましたが、その痕跡は今も残っているそうです。
なお現在の阪急の新車搬入は陸送となっています。
南海の場合
南海の場合、どちらかと言うと、国鉄JR側の事情でルートがいろいろ変わってきています。以下にその遍歴を紹介します。
なお南海の新車は関西私鉄にしては珍しく、ほぼ全車が金沢の東急車輛で製造されています。
国鉄時代は吹田操車場~城東貨物線(現おおさか東線)~竜華操車場~阪和貨物線~杉本町~阪和線~和歌山駅~和歌山市駅というルートで輸送されています。
和歌山市駅は南海と紀勢線の間の渡り線があり、急行きのくにが紀勢線に直通する時に使用していました。
国鉄末期に竜華操車場が廃止されると、ここで城東貨物線内を牽引するディーゼル機関車と阪和線内を牽引する電気機関車の付け替えと、折返しが出来なくなったためルートが変更になりました。今度は京都~奈良線~木津~関西本線~久宝寺~阪和貨物線~杉本町~阪和線と運行されるようになり、これが長く続きました。
竜華操車場と阪和線を結んでいた阪和貨物線ですが、この貨物線は天王寺駅構内で接続に難がある阪和線と関西本線を結ぶために建設さたものです。貨物輸送や団体列車などが通過していました。国鉄の貨物輸送衰退と共に、阪和貨物線の貨物列車は年々減少していき、末期は臨時列車や稀にある南海向けの新車輸送のみで使われる状態でした。
2004年におおさか東線の建設や河川改修工事の関係で阪和貨物線が休止されると、南海向けの新車は百済貨物駅、続いて安治川口駅からの陸送となりました。
ところが2009年から再び和歌山市駅での車両搬入に変更されました。吹田操車場~城東貨物線・おおさか東線~久宝寺~関西本線~王寺~和歌山線~和歌山駅~和歌山市駅というルートになりました。和歌山線を全線走破するルートにも驚きますが、休止状態だった和歌山市駅の渡り線が加太線と和歌山電鐵との直通構想もあってなのか復活したのも大きいようです。
さらに2010年の輸送では、吹田操車場~梅田貨物線~西九条~環状線~天王寺~関西本線~王寺~和歌山線~和歌山駅~和歌山市駅というルートになりました。環状線経由という思い切ったルートですが、このルートは工事列車などの運行実績は多いようです。
なお、特急列車や関空快速・紀州路快速が使っている天王寺駅の環状線から阪和線への連絡線は、急勾配のため貨物列車の運行は難しく、南海とJRが線路を共有する関西空港も、貨物列車の運行には対応していません。
次回は名鉄や地下鉄などを扱う予定です。
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