松川事件
2021-11-10 | 書評
国鉄を舞台にした終戦後の占領下におけるの3大事件の一つ、松川事件。未だにその犯人は謎とされていますが、松川事件については免罪の再審に関わった人とは別に、その真相に迫った人が多くいます。
松川事件の確信に最初に迫ったと言われるのが、推理小説作家の松本清張氏で、日本の黒い霧で松川事件を取り上げ、それが米軍の謀略と指摘しました。歴史学者の家永三郎氏は「現代史家の歴史認識能力が、推理小説作家に及ばないとは情けない」と同氏を称賛しています。
その松本清張氏の日本の黒い霧に次ぐのが、吉原公一郎氏の労作「松川事件の真犯人」です。同著では、松川事件に至る庭坂事件と予讃線事件の取材から始まり、松川事件に至る経緯が述べられています。それでかなりのところまで踏み込んだ内容で、進駐軍内部の派閥抗争も事件の一因ではないかと推理しています。
松川事件については、経緯はある程度知られていますが、松川事件と同様の予讃線事件については、あまり取り上げられる機会はなく、まとまった書籍ではこの本だけかもしれません。予讃線事件は松川事件と同様の列車妨害事件で、進駐軍の共産党や日本の労働運動に対する謀略なのですが、ある事情で愛媛県の警察当局が米軍の謀略らしいと感づいて、迷宮入りしています。
ところが、松川事件は福島の警察当局が、米軍の思惑通りに共産党と国鉄及び東芝松川工場の労働組合を犯人と見立てて逮捕したのではないかと、この本では推理しています。
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