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にしみの鉄道情報局付属ブログ

抑速ブレーキ考察

2010-09-06 | 鉄道技術
長い下り坂を下る場合、物理的な摩擦ブレーキを使い続けると、ブレーキが加熱してブレーキが効かなくなる場合のは自動車も鉄道も同じで、自動車のエンジンブレーキに相当する機能が電車や電気機関車の一部には装備されています。
抑速ブレーキと言われるブレーキで、電気制動の一種に分類されています。



抑速ブレーキというと上の写真のように、マスコンを逆回しするという方式のイメージが強く、通常のブレーキとは別系統なのですが、電気指令式ブレーキの場合、ブレーキの1段目が抑速になっているケースが最近は多くなっています。
写真の近鉄5200系の場合、マスコンを右に回すと加速して、左に回すと抑速ブレーキが作動するようになっています。

さて、電車や電気機関車に使われる直流モーターは回路をつなぎ替える事によって、発電機としても使えます。そのため、ブレーキパットの減りを防止するため、古くから電気制動が行われていました。
近鉄(当時は参宮急行電鉄)や南海電鉄などの関西私鉄は、山岳路線対策で戦前から電気制動を行っていました。その後のカルダン駆動の普及と同時期に進んだ制御器の改良によって、1960年代には電気制動がほぼ普及しました。

さて、国鉄や関東私鉄などで採用された電磁直通ブレーキの場合、ブレーキは空気制動と電気制動が同じブレーキハンドルを用いたセルフラップ式で、自動的に空気制動と電気制動を切り替える方式になっています。
ブレーキを掛ける場合、全編成での制動力を均一にするため、初めは編成中の全車の空気制動が作動します。その後、電気制動が効き始めて、編成中の電動車のみ、空気制動を緩めて電気制動で減速し、付随車はそのまま空気制動で減速します。ある一定の速度以下になると、電気制動では十分な制動力が確保できなくなるため、再び空気制動を用いて摩擦ブレーキによって停止します。
この方式は、1960年代以降国鉄私鉄とも長年にわたって採用し、日本の電車の主流になりました。

ところがこの方式には欠点もあって、長い下り坂を下る場合、モータのない付随車は空気制動使い続けることになります。そのためブレーキの摩耗や加熱が問題になります。
そこでこれ以降の電車で、山岳路線向きの車両には長い下り坂専用の電気制動、抑速ブレーキが装備されています。国鉄の電車では157系から採用され、その後の特急電車や急行電車の多くは標準で装備していました。

この方式は、ブレーキハンドルではなく、マスコンを加速とは逆方向に回す形になります。戦前の関西私鉄で採用されていた電気制動は、技術的にも空気制動と電気制動の連携と自動切り替えが難しく、ほとんどすべてこの方式でした。

さて次回はこの抑速ブレーキによって発電した電気はどこへいくのか。つまり発電制動と回生制動について扱っていきます。
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