10年ほど前から鉄道ダイヤ情報で電車基礎講座が連載されていて、2012年に電車基礎講座として一冊の本にまとめて出版されました。その後、SiC素子の実用化と、永久磁石モータ、蓄電池の記述が追記された改訂版が刊行されました。
SiC炭化ケイ素は、学生時代にかなり結晶の組成が難しいと、研究会で聞いたことがあります。格子欠陥のため、歩留まりが悪いという話で、技術的に相当難航している様子でした。
永久磁石モータにも記述があり、同期モータである関係上、1C1M、つまりインバータとモータが一対一である必要があります。鉄道車両の車輪は1軸づつ微妙に直径が異なるので、同期モータ駆動の場合、複数のモータを1台のインバータで駆動する1C2Mや1C4Mとすることができないようです。
永久磁石モータの場合、消費電力が20%も少ないのですが、高価なモータということも合わせて、なかなか広まらないようです。
余談ですけど、223系1000番台2000番台と313系ではモータとインバータの台数が異なります。313系はMT比が1:1で粘着係数に余裕があることもあり、インバータ1台で2機のモータを駆動する1C2Mとなっています。それに対して223系はMT比が1:2のため、粘着に余裕がなく個別にモータを駆動できる1C1Mとなっています。8両編成の場合、313系は4M4Tでモータは16機、インバータは8台に対して、223系は3M5Tで、モータは12機、インバータも同じく12台です。223系は組成にもよりますが、223系よりも313系の方がインバータの台数は少ないので、どちらが低コストなのかは微妙なところです。
この本では、鉄道雑誌の特集などでは断片的に紹介される制御の情報や、台車の構造、ブレーキの方式などが体系的に書かれていて、鉄道車両技術に興味のある人は一読の価値があると思います。
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