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α-シヌクレインの凝集物が細胞間を伝わる仕組みを発見

2016-10-02 06:06:27 | 
New treatment strategy could cut Parkinson's disease off at the pass

September 29, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160929142756.htm


(α-synuclein aggregates in the brain cells of mice with (top) and without (bottom) the LAG3 protein.

Credit: Xiaobo Mao)

ジョンズホプキンスの研究者は『哺乳類の脳内で自然に生じる有害な凝集物』が細胞から細胞へと拡散することを可能にする原因のタンパク質としてLAG3を突き止めたことを報告する
また、彼らはLAG3の働きを阻害する方法も明らかにした

彼らの研究はマウスと培養細胞でのものだが、今回の結果は既に臨床試験に入っている免疫療法がパーキンソン病の進行を遅くする方法としてもテストされるに違いないことを示唆していると研究者は言う
この報告は9月30日にScience誌で発表される


研究のリーダーの一人、Ted Dawson, M.D., Ph.D.はジョンズ・ホプキンス大学医学部細胞工学研究所の科学顧問scientific directorである
彼によると、今回の新しい発見は『α-シヌクレインの凝集物』がどのようにして脳細胞の中に入るのかについて注目hinge onしたものだという
α-シヌクレインの異常な凝集はしばしばパーキンソン病患者の病理解剖autopsyで観察され、ドーパミンを産生する脳細胞が死んでいく原因と考えられている


数年前、ゲーテ大学(ドイツ)の研究者の一人がパーキンソン病の進行についての新しい理論に関するエビデンスを発表した
それによると、α-シヌクレインの凝集物は脳内の細胞から細胞へと広がり、それまで正常だったα-シヌクレインタンパク質を凝集させながら、動きと基本機能を担当する脳構造の『低いlower』場所から記憶や推論のような高度なプロセスに関与する『高い』場所へと徐々に移動していくのだという

「多くの懐疑論が出されたものの、やがて別のラボからもα-シヌクレインが細胞から細胞へと広がる可能性が示された」とDawsonは言う
興味を抱いた彼の研究グループは神経学の教授であるValina Dawson, Ph.D.と助教授のHan Seok Ko, Ph.D.らと共に、この凝集物がどのようにして細胞に入るのかについて調査を開始した

彼らは自分たちが探しているのが『膜を貫通する受容体/transmembrane receptor』という特定の種類のタンパク質であると知っていた
膜貫通受容体は細胞の外側でドアの『錠/lock』のような働きをしており、それに合う正しい『鍵/key』だけを通すのである

彼らが最初に発見したのは、α-シヌクレインの凝集物が入れない細胞だった
研究室で培養されている特定の脳腫瘍の細胞系統に凝集物は入れなかった

この細胞系統に膜貫通受容体をコードする遺伝子を一つ一つ加え、凝集物を細胞に入れるようにする受容体があるかどうかを調べたところ、3つの受容体が該当した
その内の一つのLAG3という受容体は、凝集していないα-シヌクレインよりも凝集したα-シヌクレインに結合する傾向が特に強かった


次に研究チームはLAG3を持たないマウスを育てて、α-シヌクレインの凝集物を注入した

「典型的なマウスは注入後すぐにパーキンソン病のような症状を発症し、そのマウスのドーパミンを作るニューロンの半分が6ヶ月以内に死ぬ」
Dawsonは言う
「しかし、LAG3を持たないマウスはそのような影響からほとんど完全に保護された」

培養ニューロンにLAG3を阻害する抗体を投与しても同様の保護的な効果が見られた


「α-シヌクレインの凝集物がどのようにして脳内を拡散するのかを発見しただけでなく、その進行が既存の抗体によって阻害されうるとわかったことに我々はとても興奮している」
Dawsonのラボで助教/research associateであり研究の筆頭著者のXiaobo Mao, Ph.D.は言う


Dawsonは、LAG3を標的とする抗体が既に 化学療法中に免疫系を強化できるかどうかを調べる臨床試験 に入っていることに言及する
もしそれらの試験で薬剤の安全性が実証されれば、パーキンソン病の治療薬として使うための臨床試験のプロセスが加速されるかもしれないという
さしあたって研究チームはLAG3抗体のマウスでのテストの継続と、LAG3の機能のさらなる調査を計画中である


アメリカでは100万人以上がパーキンソン病である
この疾患は徐々に運動能力を失わせ、具体的には遅くぎごちない足取りslow and awkward gait、四肢の強剛rigid limbs、振戦tremors、足の引きずりshuffling、バランスの欠如が症状として現れる
疾患の原因は十分理解されていない


http://dx.doi.org/10.1126/science.aah3374
Pathological α-synuclein transmission initiated by binding lymphocyte-activation gene 3.
病理学的なα-シヌクレイン伝達はLAG3との結合によって開始される



(LAG3の削除または抗LAG3抗体は、α-シヌクレインの『既に形成された原繊維preformed fibrils (PFF)』の伝達を遅らせる
野生型ニューロンと比較すると、抗LAG3抗体またはLAG3削除により、α-シヌクレインの既形成原繊維(PFF)の結合ならびにエンドサイトーシスは劇的に低下し、結果として病的なα-シヌクレインの伝達ならびに毒性は遅れる
Illustration credit: I-Hsun Wu)


構造化抄録/Structured Abstract


論理的根拠/RATIONALE
病的なα-シヌクレインが細胞から細胞へと伝達される原因となる根底のメカニズムならびに分子的な実在entityは知られていないが、病的なα-シヌクレインがニューロンに入ることはアクティブなクラスリン依存的なエンドサイトーシスプロセスを通じて起きると考えられている


結果/RESULTS
ミスフォールドしたα-シヌクレインのニューロン間の伝達を研究するモデル系として我々は組み換えα-シヌクレイン既形成原繊維(PFF)を使い、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ/alkaline phosphatase(AP)の検出を介して、α-シヌクレイン-ビオチンPFFとの結合候補に関して 膜貫通タンパク質をコードするライブラリをスクリーニングした

※ストレプトアビジンはビオチンに対して強い親和性を持つ

結果、α-シヌクレインPFFに結合する陽性クローンが3つ同定された
・リンパ球活性化遺伝子3/lymphocyte-activation gene 3 (LAG3)
・ニューレキシン1β/neurexin 1β
・アミロイドベータ前駆体様タンパク質1/amyloid β precursor-like protein 1 (APLP1)

これら3つの膜貫通タンパク質の内、LAG3が最も高い比率でα-シヌクレイン単量体に対するα-シヌクレインPFFへの高い選択性を持つことが実証された

α-シヌクレインPFFはLAG3に対して飽和可能であるsaturable(高濃度で飽和する)ように結合する(解離定数dissociation constant = 77 nM)
一方でα-シヌクレイン単量体はLAG3には結合しなかった

共免疫沈降では、病的なα-シヌクレインPFFは特にLAG3と結合する

タウのPFF、βアミロイドのオリゴマー、βアミロイドのPFFはLAG3には結合しない
これはLAG3がα-シヌクレインPFFに対して特異的であることを示す

α-シヌクレインPFFの取り込み/内在化internalizationにはLAG3を必要とするinvolve
なぜなら、LAG3を削除するとα-シヌクレインPFFのエンドサイトーシスが減少するからだ
α-シヌクレインPFFによるLAG3への結合は、α-シヌクレインPFFのエンドサイトーシスと伝達、毒性を開始させる

LAG3は、エンドソーム・グアノシントリホスファターゼのRab5とRab7と共に局在し、病的なα-シヌクレインと共にエンドサイトーシスする

病的なα-シヌクレインのニューロン間の伝達と、それに随伴するaccompanying病理かつ神経毒性は、LAG3の削除またはLAGへの抗体によって大幅に緩和される
LAG3を欠如させると、α-シヌクレインPFFによって誘発されるin vivoでのドーパミンニューロンの喪失は大幅に遅れ、生化学的な欠陥ならびに行動的な欠陥も遅れる



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患者の脳の抽出物をマウスとサルに注入すると数ヶ月後にドーパミン産生細胞が変性し、離れた箇所にも拡散した



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パーキンソン病では運動症状が出る数年前から嗅覚の喪失などの前駆症状が見られるが、今回開発されたモデルはそのような状態を再現した
嗅球の領域はα-シヌクレインの拡散に対して脆弱であり、運動症状が出る前にα-シヌクレインは嗅球に沿って移動し、結果として嗅覚が失われる
α-シヌクレインの凝集は最終的にドーパミン産生細胞の存在する脳幹など複数の脳領域に到達する