ダウン症候群の研究から現れる先天性心臓欠損の遺伝的性質の手掛かり
Clues to genetics of congenital heart defects emerge from Down syndrome study
ダウン症候群は21番染色体の全部、または一部が3つ目のコピーを持つ染色体の異常である。
ダウン症候群の人は知的障害に加えて先天性心臓欠損のリスクが高い。しかし全てのダウン症候群でそうなるわけではなく、およそ半分は構造的に正常である。遺伝学者たちはダウン症候群の人たちの先天性の心臓欠損の原因について調べてきた。
今回、エモリー医科大学、ジョンズホプキンス大学、オレゴン健康科学大学、ピッツバーグ大学の研究者たちは、ダウン症候群の先天性心臓欠損について最大の遺伝子研究による結果を学術誌Genetics in Medicineで報告する。
彼らの報告によれば、ダウン症候群を背景とする先天性心臓欠損の乳児は、まれにしか見られない大きい遺伝子欠失を生じている可能性がより高い。その欠失は、繊毛(cilia)に影響する遺伝子と関係する傾向があった。繊毛は胚の発達におけるシグナル伝達とパターン化に重要な細胞構造である。
今回の新しい発見が示唆するのは、ダウン症候群での先天性心臓欠損のリスクは、余分な21番染色体による大きなリスクに加えて、いくつか別の遺伝子ならびに環境的ファクターに由来する可能性があるということである。
研究には452名のダウン症候群の人々が含まれ、210名が完全房室中隔欠損(complete atrioventricular septal defect; AVSD)だった。AVSDは心房を心室から切り離すための心臓の中心領域が適切に形成されない障害で、ダウン症候群のおよそ20パーセントに見られる。残る242人の心臓は構造的に正常だった。
エモリーの研究チームは高密度マイクロアレイを使用してヒトゲノムの90万箇所以上を探索し、DNAの欠失または重複を含む構造的な変異を検出した。研究の結果、AVSDと繊毛の間のつながりが証明された。
繊毛関連疾患(Ciliopathies)は遺伝子疾患の一種であり、腎臓、眼、神経発生的な障害が含まれる。気道の細胞には肺から粘液とほこりを押し流す可動性の繊毛があり、そしてほとんど全ての細胞は一次(感覚)繊毛(primary (sensory) cilia)を持つ。
「ダウン症候群とAVSDの子供には繊毛に関連する遺伝子(ciliome genes)に障害があるかもしれないという発見は、彼らの終生の治療で大きな違いを示すかもしれない」、エモリー医科大学で人間遺伝学と小児科学の准教授でありシニア・オーサーのマイケル・ズウィック博士は言う。
「これはより多くのグループでの確認が必要とされる示唆的な結果である。」
学術誌参照:
1.ダウン症候群に関連する房室中隔欠損に対する、コピー数多型の寄与。
Genetics in Medicine、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141025152706.htm
<コメント>
ダウン症候群では一次繊毛に関連する遺伝子にも欠失が生じやすく、それが房室中隔欠損(AVSD)という遺伝子疾患につながるという記事です。
一次繊毛はレプチンシグナルにも関与することが最近明らかになりました。
http://www.nutritio.net/linkdediet/FMPro?-db=NEWS.fp5&-format=news_detail.htm&-lay=lay&KibanID=44791&-find
>FTO遺伝子の発現が増えたり減ったりするのに連動して、近傍の遺伝子RPGRIP1Lも影響を受ける。
>RPGRIP1Lは一次繊毛(primary cilia)の制御に関与する。
>FTO遺伝子のイントロン領域には、RPGRIP1Lの発現に影響を与える転写因子CUX1が結合する部位が存在する。
>RPGRIP1Lのひとつを欠損したマウスは摂食量が増え、有意に体重と体脂肪が増大し、さらにRPGRIP1L欠損マウスはレプチンの信号経路に欠陥があった。
>レプチン受容体は一次繊毛の周辺にある。
実際、ダウン症候群ではレプチン抵抗性が生じやすいという研究があるようです。
http://blog.livedoor.jp/pumpkin1205/archives/50210851.html
>ダウン症の子には体脂肪率で考えられるよりも多くのレプチンがあることを示している。
>レプチンをコードする遺伝子は7番染色体にあるため、21トリソミー単独ではこのレプチン増加を説明することはできない