日本のゆくえ

日本の経済と、日本人の精神はどこへ行くのか? 新自由主義社会に反乱を起こし、生き残るためのブログ

長銀問題の無罪判決

2008-08-07 08:34:20 | Weblog
森永卓郎「構造改革をどう生きるか」より
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/144/

 7月18日、経営破綻した旧・日本長期信用銀行の大野木克信元頭取ら、旧経営幹部3人に対する最高裁の判決があった。粉飾決算を行なっていたとして、証券取引法違反と商法違反の罪に問われていたが、最高裁は一審、二審の有罪判決を破棄し、逆転無罪の判決を下した。

 この判決に対して「納得がいかない」という意見も見受けられるが、わたしは見識のある素晴らしい判決であり、最高裁が正義を貫いた結果であると評価している。なぜなら、この事件自体が、世論を収めるために無理やり犯人を仕立て上げた「国策捜査」だからだ。

(中略)

 わたしは、次の三者が事件の真犯人であると考えている。それは、政策を誤った政治家と大蔵官僚、そして日本銀行だ。

 まず政治家である。橋本内閣の1997年には、消費税率の引き上げ(3%から5%へ)、特別減税の廃止、サラリ-マンの医療費の本人負担増(1割から2割へ)という9兆円の国民負担増が課せられた。だが、いま冷静に振り返ってみれば、その政策が大きな誤りであった。アジアの金融危機も起こり、経済が危険な状況のなかで、とんでもない負担増をしたことで、経済が一気に失速したのである。

 銀行の不良債権が大きく増えたのは、この急激な景気失速が原因だった。もちろん、長銀によるバブル時代の乱脈融資があったにせよ、一番の原因は政策の失敗だった。

 大蔵官僚も、そうした状況下で不良債権の認定基準を厳しくするという判断ミスを犯した。そもそも、日本の銀行は土地を担保として融資することが多い。だから、景気が落ち込んで地価がどーんと下がれば、みな不良債権になってしまう。

(中略)

 昨今の不動産不況も似たような構造である。ここにきて、日銀は当座預金をものすごい勢いで絞っており、不動産業者に対する銀行の融資は非常に厳しくなっている。どうやら、金融庁がミニバブルによる地価高騰を抑えるために、銀行に不動産融資を厳格化するよう行政指導をしたようだ。

 だが、不動産業者というのは、大量の資金を投入して土地を仕入れ、マンションを建てたのち、それを売った時点でないと金が入ってこない。その途中で資金を止められたら倒産するに決まっているではないか。


(引用終わり)

僕も、長銀事件の最高裁の逆転判決は、見識のある素晴らしい判決だと思いました。

話しは簡単で、1997年の橋本内閣の逆噴射が原因で、日本は急激な経済失速をしてしまったわけですが、自民党は、不良債権に全ての罪をなすりつけて、ただの一度も政策不況であったことを認めてはこなかったようです。

巨額の不良債権の生みの親が、後の竹中内閣で不良債権を処理したと大見得を切るわけですから、なんとも盗っ人猛々しい(苦笑)

日銀が行う量的緩和と、景気には何らかの関連性があるとか無いとか、経済学では長い間議論されてきたわけですが、超金融緩和で景気が劇的によくならないしても、金融引き締めをしてしまえば、景気が悪くなるに決まっています。不動産を買うにも、設備投資するにも、事業拡大するにも、資金繰りを行うにも、それに必要な金を、銀行から借りられなくなるわけですから。

近年でも、昨年当初から日銀の金融引き締めと公定歩合の引き上げが、サブプライム・ローン破綻の原因であったと言われていますし、建築基準法の急激な厳格化(いわゆる冬柴不況)で、不動産業界は未曾有の倒産の危機にあります。

繊細さの無い政策やら、金融引き締めによる景気失速は、バブル時代から続く、いつか来た道の繰り返しであります。

日本の国会議員と大蔵官僚というのは、まったく学習能力の無い人たちばかりですが、サブプライム・ローン問題解決に取り組む米国のように、青天井に資金供給しようとする姿勢を、日本も少しは見習って欲しいものだと思います(笑)

どうしてサブプライム・ローン被害の少ない日本が、これほど不景気に陥ってしまったのかと言えば、それ以前に、不景気要因が山ほど存在していたからでしょう。

あと、長銀問題で忘れてはいけないのは、8兆円の公的資金を投入して国が救済措置をとったものを、リップルウッド・ホールディングスにたったの10億円で売却。新生銀行に変わって2200億円の上場利益がでたものの、本拠地が外国ということで、ニッポンは1円も課税できませんでした。

その上場利益で、日本テレコムやら、コロンビアやら、フェニックスリゾートやら、山之内製薬やらを、次々買い占め・転売を許してしまうありさま。

彼らがやってきたことを振り返ると、この国に憎悪の感情があるとしか思えません(苦笑)