この猫、阪神大震災の仮設住宅が撤収されたあとに残されたノラ。私が勝手に「ボス」と呼んでいた。毅然とした態度で、姿勢も良く、人間から一定の距離をおいて微動だにせずに座っている風格はまさに「ボス」。他の猫たちは、餌をくれる人にはすり寄ってきたり、膝の上に乗ってくることもあった。しかし、ノラはノラ。膝の上に乗ってきても、膝にしっかり爪を立てているので、飼い猫とは違いギンギンに警戒をしている。抱き上げようとでもしたら、爪を立てて大暴れをする。半ノラとでも言おうか、この猫たち20匹以上いたが、半数は飲み水に入れた毒物で、何者かに殺されてしまった。残りの半数は、この事件を憂えた愛猫家の人に引き取られた。庭に6畳ぐらいの小屋を建ててその中に閉じ込めて飼われた。解き放せば、殺されてしまうからだ。捕獲には私も手伝った。捕獲用のゲージを仕掛けて餌で引き付けたが、3日かかってしまった。
「動物の愛護及び管理に関する法律」では、「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」とあるが、ノラたちはこの法律で護られることはなかった。