雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

猫爺のコラム「蟻が蝶を引いて行く」

2015-10-03 | コラム
 昔、某「学生文芸誌」に、二行詩の投稿欄があった。学校の授業では「目に映った情景を切り取って文にすればよい」と教わって、そのように書き留めた二行詩を精出して投稿したものだが、全てボツだった。だが、三好達治の詩集・南窗集(なんそうしゅう)の中の、「土」という詩に触れて、ただ情景を切り取るだけではダメだと知った。その詩がこれだ。(窗=窓)

   土 (つち)

    蟻が
     蝶の羽をひいて行く
    ああ
     ヨットのやうだ(ようだ)

 この詩を、猫爺は「動画」として鑑賞するか、「静止画」として鑑賞するかで違ってくると考えた。

 土の上を、蟻が一生懸命に自分の体より余程大きなモンシロ蝶を引っ張っているギクシャクとした動きと、水の上を(見た目は)スイスイと走るヨットでは、動き方が全く違う。蟻が蝶を引く動きがヨットのように見えないのだ。ヨットが蟻に引かれる蝶のような動きでは、すぐに横倒しになってしまう。

 猫爺は、この詩を静止画と見て、画面に顕れない力の対比を見た。順風満帆のときはともかくとして、逆風のときは力を込めて帆を操る。蟻の力と、人の力がこの画に窺えるのだ。

 題が蟻でもなく、ヨットでもないことから、水上と地上を対比しているようにも思える。


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