世の善男善女は、朝な夕な、ご先祖さまに感謝の意を表してお祈り捧げるのだそうである。立派な家柄に生まれ、素晴らしいご先祖ばかりのお人はそれで宜しかろう。だが、私の先祖のように、どこの馬の骨か犬の無骨かわからない先祖を持つ者にとって、どうも感謝する気が起きない。
「お代官様、どうぞそればかりはお許しを」
「そう申すな、そなたは仰向けに寝転んで、天井の節目を数えておれば直ぐに済む」
「わたくしには、将来を言い交わしたお人がいます」
「黙って嫁になれば分からぬわ」
「そんなことは出来ません、あれーっ、ご無体な」
そんな風にして生まれたご先祖さまも居ます。
「きゃーっ、痴漢」
「静かにしておれば、命までは取らん」
麦畑に連れ込まれて、
「あーっ、やめてください、私はまだ子供です」
「その方が萌えるわ」
「助けてーっ、あっ痛い」
そんな風にして生まれたご先祖さまも居ます。
「ごめんね、貧しくて育てられないのだよ」
そして、お地蔵さんの前に捨てられているのを、狼が見つけて引きずって巣へ持ち帰り、狼として育てられたご先祖さまも居ます。
「嬶、今けえったぜ」
「お前さん、お帰り、今、食事の用意します」
「今夜はいらねえ、直ぐに布団を敷け」
「嫌ですよ、お前さん酒臭い」
「それは、酒を飲んできたのだから、あたりめえよ」
「じゃあ、今夜はなにもせずに、大人しく寝てくださいな」
「喧しい、亭主が女房に何をしょうと勝っ手じゃねえか」
「だって、酔っ払っているときは、必ず避妊に失敗するのだから、うちはもう五人も子供が居るのですよ」
「だまれ、さっさと布団を敷いて横になれ」
「もう、言い出したら聞かないのだから…」
六人目の子供に生まれて、泣く泣く育てられたご先祖さまも居ます。
「ご先祖さま、ありがとうございました」
こんなご先祖さまに手を合わせて拝むのは、何だかご先祖さまに対して、嫌味ではないでしょうか。
「お代官様、どうぞそればかりはお許しを」
「そう申すな、そなたは仰向けに寝転んで、天井の節目を数えておれば直ぐに済む」
「わたくしには、将来を言い交わしたお人がいます」
「黙って嫁になれば分からぬわ」
「そんなことは出来ません、あれーっ、ご無体な」
そんな風にして生まれたご先祖さまも居ます。
「きゃーっ、痴漢」
「静かにしておれば、命までは取らん」
麦畑に連れ込まれて、
「あーっ、やめてください、私はまだ子供です」
「その方が萌えるわ」
「助けてーっ、あっ痛い」
そんな風にして生まれたご先祖さまも居ます。
「ごめんね、貧しくて育てられないのだよ」
そして、お地蔵さんの前に捨てられているのを、狼が見つけて引きずって巣へ持ち帰り、狼として育てられたご先祖さまも居ます。
「嬶、今けえったぜ」
「お前さん、お帰り、今、食事の用意します」
「今夜はいらねえ、直ぐに布団を敷け」
「嫌ですよ、お前さん酒臭い」
「それは、酒を飲んできたのだから、あたりめえよ」
「じゃあ、今夜はなにもせずに、大人しく寝てくださいな」
「喧しい、亭主が女房に何をしょうと勝っ手じゃねえか」
「だって、酔っ払っているときは、必ず避妊に失敗するのだから、うちはもう五人も子供が居るのですよ」
「だまれ、さっさと布団を敷いて横になれ」
「もう、言い出したら聞かないのだから…」
六人目の子供に生まれて、泣く泣く育てられたご先祖さまも居ます。
「ご先祖さま、ありがとうございました」
こんなご先祖さまに手を合わせて拝むのは、何だかご先祖さまに対して、嫌味ではないでしょうか。