長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『GODZILLA』

2021-05-29 | 映画レビュー(こ)

 98年のハリウッド版『ゴジラ』にガッカリしたのは今でも克明に覚えている。ティラノサウルスのような外見、『ジュラシック・パーク』のようなプロット、『エイリアン2』の間抜けな模倣…あぁ、ハリウッドの壁は高いのだ、日本のコンテンツは海外に通用しないのだと子供ながらに感じた。
 それから10余年、ハリウッドをオタク監督達が席巻する今、ゴジラは満を持しての大スター待遇で再デビューに成功した。レジェンダリー・ピクチャーズによるモンスターズユニバースの始まりだ。

 65年オリジナル版『ゴジラ』へ最大限のリスペクトを払った本作は、日本が大震災と原発事故の傷口を恐れた2014年に世界的怪獣アイコンのアイデンティティを甦らせ、その本懐を遂げている。日本の原発が大地震に見舞われ、メルトダウンを引き起こす冒頭に僕らはコントロールできない力を持つべきではないと改めて恐怖がこみ上げた。この象徴が放射能を喰う新怪獣ムートーであり、いわば地球の浄化作用として立ち向かうのがゴジラである。彼が海から身を起こした瞬間、大津波で容赦なく人々を飲み込む。2016年に『シン・ゴジラ』が公開されるまで、金も心意気もハリウッドに圧倒され、日本がゴジラを作り直せる余地はないのかと思える程だった。全長ウン百メートルの巨体をカメラが見上げ、ついにゴジラがその姿を現す瞬間、伊福部サウンドが鳴り響く!ゴジラに強い思い入れがない僕も座席から飛び上がりそうになってしまった。

 豪華キャストは主役ゴジラを引き立てるための添え物に過ぎず、この傾向は後のユニバースでも変わりはない。『ジョーズ』よろしく見せない演出はサスペンスに乏しく、エドワーズ監督の演出力不足は大抜擢となった『ローグ・ワン/スター・ウォーズ ストーリー』でも今ひとつのまま、終幕の追加撮影分をトニー・ギルロイに譲る結果となった。

 それでも我らが大スターに恥をかかせるには至っていない。背びれが光る放射火炎チャージをはじめ、ゴジラのシーンはどこを取っても格好いい。本作の成功により『キングコング 髑髏島の巨神』ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』そして『ゴジラVSコング』へと続く一大人気シリーズへと成長し、ついにゴジラは世界制覇を果たす事となる。


『GODZILLA』14・米
監督 ギャレス・エドワーズ
出演 アーロン・ジョンソン、エリザベス・オルセン、ブライアン・クランストン、渡辺謙、デヴィッド・ストラザーン、サリー・ホーキンス、ジュリエット・ビノシュ
 

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