長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『シン・シティ 復讐の女神』

2019-09-21 | 映画レビュー(し)

映画の神とは時に残酷なもので、2005年に独自の意匠とハードボイルドなストーリーで大ヒットを記録した『シン・シティ』は周囲の期待の高さにも関わらず、続編の実現まで10年の歳月を必要とし結果、その賞味期限を失って批評、興行共に不振に終わった。ミッキー・ロークもブルース・ウィリスも見た目に大した変化はないが、ジェシカ・アルバはその可憐さを失い、クライヴ・オーウェンもデヴォン青木も合流は叶わず、マイケル・クラーク・ダンカンとブリタニー・マーフィは鬼籍に入ってしまった。映画は撮るだけでも一苦労だが、続編に至っては諸条件を整え、完遂するまでさらなる難関なのだ。

とはいえこの『シン・シティ 復讐の女神』は前作のクオリティを少しも落としておらず、新味はなくともファンの期待は裏切らない仕上がりになっている。そして完成まで10年を要した御陰で魅力的な新キャストを得る事ができた。原作者フランク・ミラーが書き下ろした新エピソードでジョゼフ・ゴードン・レヴィットが流浪のギャンブラーをキザでクールに好演。第1作目にはこういう軽やかな身のこなしによる粋も魅力だったと思い出す。彼の幸運の女神となるマーシー役で今や引っ張りだこの若手ジュリア・ガーナーが出演しているのも注目だ。

そして原題“a dame to kill for”(=殺してでも欲しい女)というタイトルロールを演じるのがエヴァ・グリーンである。続編企画当初はアンジェリーナ・ジョリーが想定されていたというが、彼女が平和の使途となってしまった今、男を破滅させるファムファタールにはエヴァ様しかいない。同年公開のミラー原作『300 帝国の進撃』でもその魔性っぷりは際立っていたが、本作での妖気はその比ではなく、危険な色香にはむせ返る程である。アメリカ映画がかつて描いてきたファムファタールを今やフランスからハリウッドに輸入された彼女しか演じられないというのは何とも皮肉だが、ここまで来るとデパルマ版『ブラック・ダリア』でのヒロインも見たかった(なぜか代役はヒラリー・スワンクだった)。
かねてから言っているのだが、TVドラマ全盛の今こそジェイムズ・エルロイのハードボイルド小説を映像化し、ヒロインはぜひエヴァ様でやって欲しいところだ!


『シン・シティ 復讐の女神』14・米
監督 ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー
出演 ミッキー・ローク、ジェシカ・アルバ、ジョシュ・ブローリン、ジョゼフ・ゴードン・レヴィット、ロザリオ・ドーソン、ブルース・ウィリス、エヴァ・グリーン、パワーズ・ブース、デニス・ヘイスバート、ジェイミー・チャン、ジュノー・テンプル、レイ・リオッタ、ジュリア・ガーナー
 

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