長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『激突!』

2018-11-11 | 映画レビュー(け)

スティーヴン・スピルバーグ、24歳の監督デビュー作。元々はTVムービーとして製作されたが評判を呼び、ヨーロッパや日本では劇場公開された。
しばしば「映画監督はデビュー作に全てがある」と言われるが、まさにサスペンスアクションの達人スピルバーグの原点がここにある。リチャード・マシスンの短編小説を原作に、アメリカの田舎道で暴走トラックに追い回される恐怖は今見ても全く色褪せない。また撮影期間16日、放映まで3週間という強行スケジュールは後に彼を驚異の早撮り監督へと進化させる事になるが、それでいてカメラワークや編集は緩急自在。一本道のカーチェイスを手練手管で見せる手腕は新人離れしている。

 本作の最大の恐怖は迫りくる大型トラックの運転手の姿が全く見えない事だ。トラックはまるで怪物のような威容を誇り、次第にエスカレートする凶行は社会に潜む得体のしれない病理を思わせる。このサスペンスホラーの手腕は75年の『ジョーズ』で早くもピークを極めた後、彼のフィルモグラフィに2度と現れないのも興味深い。


『激突!』71・米
監督 スティーヴン・スピルバーグ
出演 デニス・ウィーバー
 

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