長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『タイラー・レイク −命の奪還−2』

2023-06-30 | 映画レビュー(た)

 クリス・ヘムズワース主演、Netflixオリジナルのアクション映画第2弾が早くも登場だ。前作のラストで瀕死の重傷を負い、生死不明となったタイラー・レイク。九死に一生を得た彼は過酷なリハビリを経て、元妻の妹を救出すべく東欧に向かう。

 近年『ジョン・ウィック』シリーズのチャド・スタエルスキやデヴィッド・リーチなど、スタントマン出身監督によるフィジカルを重視したアクション映画が人気を集めており、長回しでスタントマンの“技”を見せていく手法はアカデミー賞スタント部門設立がささやかれる程の勢いがある。やはりスタントマン出身のサム・ハーグレイヴ監督は、今回もあの手この手のシチュエーションで過酷なスタント技を披露し、前半にはなんと21分間にも及ぶアクションシークエンスが用意されている。しかし映画のアクションがリアルでハードになるほど被弾、裂傷描写からの回復が早すぎるという、あまり上手ではない嘘が目立ち、「そうか負傷ダメージは応急処置と時間経過で自然回復するのだな」とシラけるのである。刑務所潜入から脱出、車での逃走から最後は走行中の列車上でのアクションという長回しはハーグレイヴ監督以下スタントチームの力作であるものの、ほとんど荒唐無稽な場面転換と顔のないモブ敵(彼らにもゲームよろしく耐久値がある)にいよいよ“ゲームっぽさ”は増すばかりで、そもそも映画におけるアクションのパワーとスピード、アドレナリンとは編集と撮影、そしての俳優のチャームによって生まれたのではないかと思わずにいられないのである(この点、スタエルスキもリーチも俳優の疲労までキャラクター描写として撮っている)。ヘムズワースにはスピードと重量感があり、ゴルシフテ・ファラハニの女傑ぶりも実に凛々しいだけに絶対作られるであろうシリーズ第3弾にはアクションの斬新性のみならず、“映画”的興奮も期待したいのである。


『タイラー・レイク 命の奪還2』23・米
監督 サム・ハーグレイヴ
出演 クリス・ヘムズワース、ゴルシフテ・ファラハニ、アダム・ベッサ、ティナティン・ダラキシュビリ、オルガ・キュリレンコ、イドリス・エルバ
※Netflixで配信中※

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