2014年の『ジョン・ウィック』で監督デビューを飾ったスタントマン出身コンビ、チャド・スタエルスキーとデヴィッド・リーチはその後、単独でアクション映画を連発し、今夏ついにリーチは『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』で、そしてスタエルスキーは『ジョン・ウィック:パラベラム』で共にメガヒットを記録した。フィジカルとコレオグラフィにこだわる彼らのメソッドがついに天下を取った格好だ。
日本公開順は逆になったが、フィジカルアクションにシリーズ伝統のド派手なCGを盛り込んだ『~スーパーコンボ』に対し、本作はスタエルスキーの集大成とも言えるボリュームと気迫で圧倒する。前作『ジョン・ウィック チャプター2』の直後から始まるためキアヌは負傷しており、ロクに装備もない。そんな彼が逃げ込むのは19世紀頃の武器を扱った博物館だ。リボルバーを組み立て、展示されているナイフをほとんど枕投げの如く投げ合う。アンドレ・ジャイアントも真っ青な巨漢には何と本1冊で立ち向かい、ついには馬まで使いこなして刺客を撃退する。相棒リーチが『~スーパーコンボ』でコメディに寄ったのに対し、スタエルスキーはあくまでフィジカルを突き詰める事で驚きを超えて笑いを生むという異様なスラップスティックに到達している。
相変わらず裏社会のハードボイルド+コミックな描写になるどどうでも良くなってしまうのだが、豪華キャストの顔触れで魅せている。イアン・マクシェーン、ローレンス・フィッシュバーンの再登板に加え、キアヌの育ての親としてアンジェリカ・ヒューストンが登場(『女と男の名誉』!)。『ゲーム・オブ・スローンズ』最終決戦をサボったブロンことジェローム・フリンや、いつまでも『ウエストワールド』にいるようにしか見えないクリストフ・コリンズJr.の顔出しも嬉しい。動くとエリザベス・デビッキ似の裁定人エイジア・ケイト・ディロンの丸刈り姿も麗しかった。
さらには中盤、ハル・ベリーまで登場する。『キングスマン:ゴールデン・サークル』では何ともナメられた扱いを受けていたが、その鬱憤を晴らすかのような大立ち回り。犬2頭にまで完璧に振り付けらた華麗なアクションは眩暈がするほど格好良かった(だから犬殺すなって!)。
そして本作のラスボスとなるのがNYの路面店できゃりーぱみゅぱみゅの『にんじゃりばんばん』を流している寿司屋の店長マーク・ダカスコスだ。彼ら殺人寿司職人軍団は憧れのジョン・ウィックを目の前にして舞い上がるラブリーな連中で、最近のトム・クルーズ映画もそうなのだが撮る側はもちろん、敵も味方もキアヌのことが大好きなのが伝わってきて何とも微笑ましいのである(スピードと技で勝る彼らを多人数を同時に相手できるジョン・ウィックがスタミナ勝ちするというアクション演出もスタエルスキーならではだろう)。
それは刺し、蹴り、撃ち、殴り、華麗に舞うキアヌ・リーヴス55歳の献身を見れば全く疑いようのない事である。シリーズ完結編と目されていたが、キアヌもスタエルスキーも続編をやる気マンマンの終わり方だ!
『ジョン・ウィック:パラベラム』19・米
監督 チャド・スタエルスキー
出演 キアヌ・リーヴス、ハル・ベリー、イアン・マクシェーン、ローレンス・フィッシュバーン、アンジェリカ・ヒューストン、エイジア・ケイト・ディロン、ジェローム・フリン、ジェイソン・マンツォーカス
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