長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』

2017-01-24 | 映画レビュー(し)

マーヴェルに死角なし!
ビッグタイトルでありながら2016年最大の失敗作となった
『バットマンVSスーパーマン』の直後に、何ら臆する事なくアメコミ映画全盛期の立役者である充実を見せつけた会心の1本だ。『キャプテン・アメリカ』シリーズの一応の完結編でありながら、これまでのマーヴェルヒーローがほとんど登場するゴージャスな布陣はさながら“アベンジャーズ2.5”といった様相であり、各キャラクターの掘り下げはもちろん、看板であるキャップの存在意義、ドラマを深化させた監督ルッソ兄弟の手腕には並々ならぬものがある。

今作ではアベンジャーズのヒーロー活動中に民間人の犠牲者が出た事から、国連の管理下に入るか否かでチームが分裂する。
『エイジ・オブ・ウルトロン』での失敗ですっかり気が弱くなったトニー・スタークは国連傘下に入る事を表明するが、事件の主謀者と目される親友バッキー(akaウィンター・ソルジャー)を想うキャップはそれに異を唱える。ペギー・カーター亡き今、キャップという人の出自を知るのはバッキーのみであり、何よりその出自にこそ本作の胆がある。
キャップは元来、第二次大戦の戦意高揚のために担ぎ出されたプロパガンダであった。その後、長い原作コミックの歴史において反共主義、ベトナム戦争と尽く時の権力に利用されてきた過去を持つ。大きな力には大きな責任が伴うが、それは一時の国家のために使われるものではない。友愛のために発揮されるべきがアメリカの国是であり、そんなアメリカの“ピュアネス”を体現するのがキャプテン・アメリカなのだ。

 この大きな力は誰の監視もなく、野放しにされるべきなのか?という命題はヒーロー映画につきまとうものであり、奇しくも『バットマンVSスーパーマン』とテーマが丸かぶりなのだが、そこはマーヴェル、陽性の魅力で乗り切ってみせる。各ヒーローの個性と技がぶつかり合う空港での大乱闘シーンはコミック映画ならではの楽しさで、中でもアントマンとついにソニーから権利が戻ったスパイダーマンが大いに笑わせてくれる。

このスパイダーマンの“Home coming”をアシストするのが【座長】ダウニーJr.だ。
彼がいるとキャストアンサンブルにも活気が増す。新生スパイディが家に帰るとセクシー過ぎるメイ叔母さんマリサ・トメイが『オンリー・ユー』以来にダウ兄とアッセンブルしているではないか!アイアンマンによるスパイディ勧誘シーンは本作のハイライトだ。

 いよいよ“フェイズ3”に突入したマーヴェル・シネマティック・ユニバースがどんな進化を見せるのか。まさかのバディコメディへと舵を切ると噂される雷神サマ完結編
『ラグナロク』に期待が高まる。


『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』16・米
監督 アンソニー&ジョー・ルッソ
出演 クリス・エヴァンス、ロバート・ダウニーJr.、スカーレット・ヨハンソン、セバスチャン・スタン、アンソニー・マッキー、ドン・チードル、ジェレミー・レナー、チャドウィック・ボーズマン、ポール・ベタニー、エリザベス・オルセン、ポール・ラッド
 

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