長内那由多のMovie Note

映画レビュー、俳優論など映画のことを中心としたブログ

『アントマン』

2017-08-10 | 映画レビュー(あ行)


スケール感を増し続けるマーベル・シネマティックユニバースだが、そのリリースタイミングには観客を飽きさせない抜群の戦略が見て取れる。2014年は“ダークナイト方式”をマーベル流に昇華した傑作『ウィンター・ソルジャー』の後に、懐メロ×スペースオペラという手法の活劇『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を年間1位のメガヒットに送り込んだ。2015年は屋台骨とも言える大ヒット作続編『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でスケールもシリアスも行きつく所まで行き、その肥大化にやや食傷感も覚え始めた所で本作『アントマン』だ。

ズバリ“アリ男”。
特殊スーツで1.5cmにまで縮小する主人公アントマンがアリたちの力を借りて悪に立ち向かう。
「名前変えちゃダメ?」(←なぜ予告編のこのセリフを使わない)と言いたくなるようなダサさだが、次第に愛さずにはいられないキャラクターになるのだから侮れない。アントマンことスコット・ラングは前科者でバツイチ、サーティーワンのバイトも務まらないダメ男で、これをジャド・アパトウ監督などのコメディ作品でお馴染みのバイプレーヤー、ポール・ラッドがオフビートな魅力で好演している。クリス・プラットに続くコメディ畑からの大胆人事。マーベルのスター発掘の才はやはり長けている。

本作はヒーロー映画でありながらケイパー映画の体裁を取っているのも魅力の1つだ。『がんばれベアーズ』よろしくな落ちこぼれ強盗団の凸凹アンサンブルでマイケル・ペーニャがファニーな魅力をさく裂させている。圧倒的に話が下手な(こういう人、いる)彼がヤマを持ちかけるシーンは本作で最も笑える場面になった。

『アントマン』はエドガー・ライト監督の離脱劇など、マーベルには珍しく製作段階でトラブルが多く、急場しのぎの苦しい場面が多いのは難点だ。滑るギャグ、ストーリーと噛み合わない父娘ドラマなど前半は居心地の悪さが続く。終盤、ようやく大きさを活かしたアクションと怒涛のギャグがハマって劇場は大爆笑に包まれるのだが、この“天丼”っぷりもワンパターンが過ぎてしまう。これらの責任を現場を救った職人監督ペイトン・リードの無個性さに求めるのは酷だろう。

アントマンは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でアベンジャーズに合流、単独作『アントマン・アンド・ザ・ワスプ』ではついにエヴァンジェリン・リリーとのW主演になる(マーベル発の女性主人公!)。大ヒットを後押しにマーベルらしい完成度の続編を期待したい。


『アントマン』15・米
監督 ペイトン・リード
出演 ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、マイケル・ダグラス、コリー・ストール、マイケル・ペーニャ

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