長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『モリーズ・ゲーム』

2018-05-24 | 映画レビュー(も)

こちらもびっくりするような話だ。オリンピック候補のモーグル選手から一転、ハリウッドセレブが通い詰める高額闇賭博ポーカーの主催者となったモリー・ブルームの手記を『ソーシャルネットワーク』『スティーブ・ジョブズ』の脚本家アーロン・ソーキンが映画化した。

自ら脚色も手掛けたソーキンは冒頭からヒロインの頭脳明晰さを怒涛のセリフ回し、編集スピードで表現する。ケガにより競技人生を諦めたが、ロースクールに入れる程の頭脳を持った人だ。闇賭博の熟知も実に理路整然。そして厳格な教育を受けてきただけに義理堅い。彼女はFBIに逮捕されても顧客リストを公開する事はなかった。

 事実は小説よりも奇なり、といった所だが意外と品行方正というか、彼女に破綻した歪さがなく、その実話ゆえの生真面目さが本作の欠点でもある。主演ジェシカ・チャステインは色気タップリの装いでも知性があふれ出るモリーの生真面目さにピッタリだ。前作『女神の見えざる手』同様、配役における性別格差をぶち破る力演だが、『ゼロ・ダーク・サーティ』のようなエグ味が出なかったのは監督の個性ゆえだろうか。

 そしてここでも『アイ、トーニャ』『ボストンストロング』同様、親が不在だ。ケヴィン・コスナー扮する厳格な父はいくら努力しても認めてはくれない。なるべきロールモデルを見失ったモリーを救うのは弁護士チャーリー(知性的なイドリス・エルバ)であり、このもう1人の父親の存在によって彼女は再起していく。決してへこたれない、バイタリティあふれる強さ。モリーはもがき、倒れても再び立ち上がり、次のステージへと向かっていくのだ。

 ソーキンは役者の扱い方もしっかり心得ており、マイケル・セラ(モデルはディカプリオか!?)、クリス・オダウド、そしてこのところ好投の続くビル・キャンプ(『ナイト・オブ・キリング』)らのシーンスティラーぶりにも触れておきたい。


『モリーズ・ゲーム』17・米
監督 アーロン・ソーキン
出演 ジェシカ・チャステイン、イドリス・エルバ、ケヴィン・コスナー、マイケル・セラ、ビル・キャンプ、クリス・オダウド
 

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