実在の人物、事件を扱った作品は相変わらず賞レースの人気題目だ。今年のアカデミー賞でもワシントンポストの報道を描いた『ペンタゴン・ペーパーズ』や、ダンケルク撤退線に的を絞った伝記モノ『ウィンストン・チャーチル』がノミネートされ、ドラマでは近過去のタブロイド的な事件から現在を読み解いた『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』も記憶に新しい。そしてトーニャ・ハーディングである。1994年、ライバル選手を襲撃し、重傷を負わせたとされるフィギュアスケーターだ。映画は再現ドラマの形式だが度々、俳優が第4の壁を突破して観客に話しかけてくる“メタノンフィクション”とも言うべきユニークな構成になっている。
トーニャは貧しい母子家庭で育った所謂“レッドネック”だ。母は常に口汚くトーニャを罵り、手を上げる。徹底的に蔑む事がトーニャを奮起させると信じた毒親であり、当然トーニャも同じような品性に育ってしまう。アメリカ人として初めてトリプルアクセルを成功させた実力者となりながらも自己顕示欲と言葉遣いがキャリアの足を引っ張った。だが頂点を逃す度に彼女の闘志に火が付く。認められる事なく生きてきた彼女はみんなに愛されたいからだ。
『アイ、トーニャ』はアメリカに対する批評だ。冒頭、トーニャは自分を例えて「アメリカみたいなもんね」と言う。愛されたいがために自分を華美に装うが、知性も品性も欠いたそれはすぐさま一転して“炎上”し、人々は叩いて叩きまくって消費し尽くす。アメリカンドリームをもてはやしても、暴力にまみれたホワイトトラッシュの生活実態には無関心だ。アメリカが求める理想のアメリカ人像にはなれず、自己愛とプレッシャーによってメルトダウンしていくトーニャをマーゴット・ロビーは可笑しさと哀しみを湛えて演じ、見事アカデミー主演女優賞候補に挙がった。インタビューに答える彼女はあけっぴろげにズバズバ話すが、そこにはなりたい自分になれなかった者の挫折の表情も滲む。年齢的におそらくトーニャを知らなかったであろうロビーが自ら本作をプロデュースした理由はおそらくそこにあったのかも知れない。
エンドクレジットでは当事者達の姿が映され、本作の徹底した再現ぶりがわかる。とりわけ度を超えたアホである主謀者ショーンを演じたポール・ウォルター・ハウザーと、トーニャの母を演じたアリソン・ジャネイは強烈。ジャネイはいつだって名演技を披露してきた名バイプレーヤーだが、ここまでインパクトのある役はおそらく初めてだろう。アカデミー賞では初ノミネートで助演女優賞に輝いた。
トーニャは貧しい母子家庭で育った所謂“レッドネック”だ。母は常に口汚くトーニャを罵り、手を上げる。徹底的に蔑む事がトーニャを奮起させると信じた毒親であり、当然トーニャも同じような品性に育ってしまう。アメリカ人として初めてトリプルアクセルを成功させた実力者となりながらも自己顕示欲と言葉遣いがキャリアの足を引っ張った。だが頂点を逃す度に彼女の闘志に火が付く。認められる事なく生きてきた彼女はみんなに愛されたいからだ。
『アイ、トーニャ』はアメリカに対する批評だ。冒頭、トーニャは自分を例えて「アメリカみたいなもんね」と言う。愛されたいがために自分を華美に装うが、知性も品性も欠いたそれはすぐさま一転して“炎上”し、人々は叩いて叩きまくって消費し尽くす。アメリカンドリームをもてはやしても、暴力にまみれたホワイトトラッシュの生活実態には無関心だ。アメリカが求める理想のアメリカ人像にはなれず、自己愛とプレッシャーによってメルトダウンしていくトーニャをマーゴット・ロビーは可笑しさと哀しみを湛えて演じ、見事アカデミー主演女優賞候補に挙がった。インタビューに答える彼女はあけっぴろげにズバズバ話すが、そこにはなりたい自分になれなかった者の挫折の表情も滲む。年齢的におそらくトーニャを知らなかったであろうロビーが自ら本作をプロデュースした理由はおそらくそこにあったのかも知れない。
エンドクレジットでは当事者達の姿が映され、本作の徹底した再現ぶりがわかる。とりわけ度を超えたアホである主謀者ショーンを演じたポール・ウォルター・ハウザーと、トーニャの母を演じたアリソン・ジャネイは強烈。ジャネイはいつだって名演技を披露してきた名バイプレーヤーだが、ここまでインパクトのある役はおそらく初めてだろう。アカデミー賞では初ノミネートで助演女優賞に輝いた。
『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』17・米
監督 クレイグ・ギレスピー
出演 マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン、アリソン・ジャネイ、ポール・ウォルター・ハウザー
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