【MOVIE】
監督 ケンプ・パワーズ、他
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2、『TAR/ター』
監督 トッド・フィールド
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3、『別れる決心』
監督 パク・チャヌク
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監督 シャーロット・ウェルズ
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監督 スティーヴン・スピルバーグ
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6、『AIR/エア』
監督 ベン・アフレック
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監督 ルカ・グァダニーノ
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監督 ロバート・エガース
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監督 イエジー・スコリモフスキ
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10、『PEARL パール』
監督 タイ・ウエスト
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【TV SHOW】
製作 ジェシー・アームストロング
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製作 クレイグ・メイジン
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3、『バツイチ男の大ピンチ!』
監督 シャリ・スプリンガー・バーマン、ロバート・プルチーニ、他
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4、『DEVS/デヴス』
監督 アレックス・ガーランド
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5、『ラブ&デス』
製作 デヴィッド・E・ケリー
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6、『ガンニバル』
脚本 大江崇允
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7、『BEEF/ビーフ』
製作 イ・サンジン
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8、『イエロージャケッツ』
製作 アシュリー・ライル、バート・ニッカーソン
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人生の可能性と家族愛を謳ったマルチバース映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞ほか計7つのオスカーを獲得してから3か月後、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の主人公マイルズ・モラレスはマルチバースによって定められた運命を「ぶっ潰す!」と言い放った。各ユニバースで“ベンおじさんの死”に相当する事件が起きなければ宇宙は均衡を崩し、破滅を迎えてしまう。アルゴリズムによって正確に管理された宇宙を監視しているのは各ユニバースから集まったスパイダーマンその人自身。彼らは親を死の運命から救うことなくシステムに隷属している。
2023年上半期のもう1つの重要作『サクセッション』もシステムについての作品だった。スコットランドから裸一貫でアメリカへと渡り、一代で巨大メディア・コングロマリットを作り上げたローガン・ロイの後継を巡って一族が骨肉の争いを繰り広げる。ローガンの作り上げた極右ニュースメディア(FOXニュースがモデルになっている)は国民世論を操作し、ついには恐ろしいポピュリストに次期大統領の当確を打つ。2010年代後半からのアイデンティティポリティクスによって悪しきシステムは淘汰され、より良い誰かへ継承されると錯覚したが、システムはさらに劣悪な何かにすり替わって持続していくのだ。
ハリウッドはシステムによってがんじがらめになっている。スーパーヒーローを交錯させることに腐心したアメコミ映画の寡占によって映画は3部作どころかTVシリーズまで見なければ話がわからず、ファンダムへのサービスを過積載して3時間近い長尺作品ばかりが居並ぶ。2時間という映画ならではのナラティブが求められることはなく、作家にとっても観客にとってもパーソナルな物語形式ではなくなってしまったように思える。そんな中、「あなたの物語を語りなさい」と言われたマイルズ・モラレスはシステムから逸脱し、『アクロス・ザ・スパイダーバース』はアメコミ映画を総括して、再び映画を個人の物語へ集束しようとする。ダークな社会風刺コメディの『サクセッション』がシステムの外れにいる頑迷な老人に「それでも踏みとどまる」と言わせた事に中年の筆者は寄りかかってしまう所だが、2023年の現在(いま)多くの若者に見られるべきはマイルズの物語だろう。また、劇場公開と配信の両輪で映画製作を行うAmazonでベン・アフレックが『AIR/エア』を撮り、80年代のエアジョーダン開発秘話から新のクリエイティブとは既存システムの外にあることを描いた明晰さは短い劇場公開期間から見逃すには惜しい。
ベスト10には時代を的確に捉えた作品と、心動かされたパーソナルな作品を並べた。TVシリーズは昨年の活況が嘘のようで、10本を選ぶに至らなかった。ハリウッドでは現在、脚本家組合、俳優組合によるストが数週間に渡って継続しており、ほとんどの映画、TVシリーズの製作が中断している。ストリーミングメディアの台頭とコロナショックによって急速に進んだシステムの変化と崩壊は、これが無事に終息を迎えてもかつての活況を取り戻すことはないだろう。PeakTVは終わり、ハリウッド映画もまた終焉に向かいつつある。悲嘆し、世をすねてしまいたくなる所だが、それでも見続けるのは僕が自身と世界の距離を知るためであり、内なる部分を照らしてくれる物語と巡り合うためである。
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