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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『THE BATMAN ザ・バットマン』(寄稿しました)

2022-03-28 | 映画レビュー(は)

 リアルサウンドに『THE BATMAN ザ・バットマン』のレビューを寄稿しました。かつてジム・キャリーが奇天烈に演じた悪役リドラーの現代的な再設定や、満を持してメインストリームに帰還した怪優ロバート・パティンソンによるバットマン像、名手グレイグ・フレイザーの撮影など見所満載の176分(!)です。ぜひ御一読ください。


『THE BATMAN ザ・バットマン』22・米
監督 マット・リーヴス
出演 ロバート・パティンソン、ゾーイ・クラヴィッツ、ポール・ダノ、ジェフリー・ライト、アンディ・サーキス、コリン・ファレル、ジョン・タトゥーロ
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『ハウス・オブ・グッチ』

2022-01-30 | 映画レビュー(は)

 1995年、人気ファッションブランド“グッチ”の社長マウリツィオが妻パトリシアによって暗殺されたこの事件を、リドリー・スコットは思いのほか笑える映画に仕立てている。パトリツィア役に『アリー スター誕生』で女優としての才能を証明したレディー・ガガが扮し、マウリツィオをスコット監督の前作『最後の決闘裁判』からアダム・ドライヴァーが続投。グッチ家総帥アルドにアル・パチーノ、マウリツィオの父にジェレミー・アイアンズと大御所が居並び、そしてグッチ家の屋台骨を傾けたパオロに特殊メイクで大変身したジャレッド・レトが扮した。オールスターキャストがイタリア訛りで仰々しく演じる様は、さながらハリウッド最上級のコント大会だ。スコットはやはり実在する大富豪一族を描いた『ゲティ家の身代金』で、家族の命よりも金を優先する家長ゲティにこの世の非情と無情を見出していたが、本作では崩壊の一途を辿るグッチ家の姿に滑稽さと“もののあわれ”がある。

 2010年代後半、アイデンティティポリティクスを経て旧来的なコメディのネタが見直されてからというもの、ハリウッドが大手を振るってイジることができるのは“白人特権”だ。巨大メディア・コングロマリットの後継者争いを描いた『サクセッション』(A.K.A『メディア王』)は『ハウス・オブ・グッチ』に大きく影響を与えている。市井感覚なんて持ち合わせていない“天上人”たちの絢爛豪華、傍若無人な振る舞いが時に清々しいほどで、ついつい“推し”を創りたくなってしまうところに前澤やマスク、そしてトランプが人気を集める僕ら衆愚性も笑われている。

 今年のアメリカ俳優組合賞では『サクセッション』のプロデューサーでもあるアダム・マッケイ監督作『ドント・ルック・アップ』と本作『ハウス・オブ・グッチ』が伸び悩んだ批評をものともせず、作品賞に相当するキャスト賞にノミネートされた。とかくコメディを軽視してきたハリウッドだが、これら一級の“重喜劇”は今やハリウッド中の俳優がこぞって演じたいジャンルなのだろう。アダム・ドライヴァーはグロテスクな『最後の決闘裁判』から一転、イイとこのお坊ちゃん役でキュートな魅力を発揮。レディー・ガガは話が進むにつれてその獰猛な目つきどんどん可笑しくなる。そしてジャレッド・レトに至ってはほとんど荒らし行為のような怪演だ

 そんな本作の“オチ”は場外にある。現在、グッチはブランドコングロマリット“ケリング”の傘下にあり、その社長フランソワ・アンリ・ピノーの現夫人は本作でパトリツィアにグッチ乗っ取りを吹き込む占い師を演じたサルマ・ハエックなのだ。だからメキシコ人の彼女がキャスティングされているのか!


『ハウス・オブ・グッチ』21・米
監督 リドリー・スコット
出演 レディー・ガガ、アダム・ドライヴァー、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、ジャック・ヒューストン、サルマ・ハエック、アル・パチーノ、カミーユ・コッタン、ガエターノ・ブルーノ
 
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『パーフェクト・ケア』

2021-12-15 | 映画レビュー(は)

 ロザムンド・パイクはさながら『ゴーン・ガール』の再演だ。主人公マーラ・グレイソンは裕福な高齢者をターゲットに後見人を請負い、資産を徹底的に搾り取る極悪人。「私に負けはない」と豪語し、非道の限りを尽くすこのヒロインをしかしながら痛快に演じている(恋人役エイザ・ゴンザレスの相性もいい)。マーラは身寄りのない老女ジェニファーに目を留め、狡猾な手段で老人ホームに送り込むが彼女には秘密が隠されていて…。

 脚本も手掛けたJ・ブレイクソン監督はピーター・ディンクレイジ演じるロシアンマフィア登場のタイミングを決定的に見誤っているが(もう少し遅らせないとマーラが予想外の事態に追い込まれているサスペンスが機能しない)、強欲を是とするヒロイン像は格差が広がる今日の資本主義社会を象徴しており、醜悪ながら目を逸らせない魅力がある。なお後見人制度は特に日本のような高齢化社会には重要な仕事なので、誤解なきよう。


『パーフェクト・ケア』20・米
監督 J・ブレイクソン
出演 ロザムンド・パイク、ピーター・ディンクレイジ、エイザ・ゴンザレス、クリス・メッシーナ、イザイア・ウィットロック・Jr.、ダイアン・ウィースト
 
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『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野』

2021-12-13 | 映画レビュー(は)

 オール黒人キャストで作られた西部劇『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』はさしずめ2020年代のブラックスプロイテーション映画だが、B級映画を指すそれとは段違いの豪華さがある。『ラヴクラフトカントリー』等、好投相次ぐジョナサン・メジャーズにザジ・ビーツと活きの良い若手が主役を飾り、それにも増して悪役がゴージャスなのだ。冷静沈着、軽妙洒脱な早撃ちガンマン役にラキース・スタンフィールド。首領イドリス・エルバの留守を預かる女ボスに『ウォッチメン』のレジーナ・キングが扮し、ド迫力。近年、ハリウッドの娯楽作は悪玉がどうにも小物ばかりだが、本作は悪役のリッチなキャスティングによって多少の粗は気にならない程の面白さを獲得している。

 物語は往年の名作西部劇を本歌取りしており、今更語るまでもないだろう。ただし音楽はモリコーネではなくジェイZはじめとするヒップホップがなり響き、全編に渡って「白人だけのジャンルにはしないぜ」という血気盛んさがみなぎる。2020年代の映画らしく、人種や性別のイシューも時にユーモアを織り交ぜながら取り入れられているのがいい。続編を匂わせる終わり方に、次回作“シスターナイトの逆襲”を期待しようじゃないか。


『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野』21・米
監督 ジェイムズ・サミュエル
出演 ジョナサン・メジャーズ、イドリス・エルバ、レジーナ・キング、ザジー・ビーツ、デルロイ・リンドー、ラキース・スタンフィールド、ダニエル・デッドワイラー、エディ・ガテギ、RJ・サイラー
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『PASSING 白い黒人』

2021-11-30 | 映画レビュー(は)

 1920年代のNY、アイリーンは旧友のクレアと再会する。共にハーレムで生まれ育った黒人女性だが、クレアの肌は白く、髪をブロンドに染め、彼女は白人として振る舞っていた。“PASSING”したのだ。
ネラ・ラーセンの『白い黒人』を原作とする本作は監督レベッカ・ホールにとってパーソナルな物語だ。彼女の母方の祖父もまた肌の白い黒人であり、白人として生きていたという。ホールの家族にとってそれは触れてはならない秘密として扱われてきた。

 クレアは白人男性と結婚しており、出自は彼にしも知らせていなかった。夫は人種差別主義者であり、加齢と共に肌の色が濃くなってきたクレアを黒人を揶揄して“ニグ”と呼んでいた。アイリーンは自身のアイデンティティを放棄したクレアの生き方を軽蔑するが、以来にわかにクレアは距離を縮めてくる。“PASSING”し、白人になったとしても己を偽る人生が幸せであるハズがない。

 薄靄のようなモノクロームがアイリーンとクレアの肌の色の違いを際立たせ、映画には緊張感が張り詰める。レベッカ・ホールは女優としての演技メソッド同様、知的かつ抑制された演出で物語の要となるもう1つの“PASSING”を浮かび上がらせていく。白人への同化など以ての外、しかし黒人コミュニティで生きるアイリーンは果たして本当に自由なのか?アイリーンとクレアの交錯する視線、ひしと握られる腕、抱擁、頬への口づけ…ホールはそれら刹那の瞬間に2人の高揚と動揺を撮らえることに成功している。とりわけアイリーン役のテッサ・トンプソンが素晴らしい。目深に被った帽子から射るような眼差しを向ける冒頭、クレアの夫が妻へ投げかける侮辱に隠しきれない怒り、そしてレズビアンとして“PASSING”できない苦悩と一時たりとも目が離せない。キャリアを重ねる度に磨きをかけてきた彼女の最高の演技であり、来るアカデミー賞レースを賑わせる事になるだろう。

 1920年代のアメリカは文化、経済の両面で著しい発展を遂げ、旧文明を刷新し、“狂騒”とも言われたその時代は1929年の世界恐慌で終わる事となる。しかし性的アイデンティティを巡る諍いは当時も現在も変わることはなく、内心の自由と幸福を得られないアイリーンはただ一人、取り残されていく。衝動的とも言えるクライマックスの行動に、孤独を抱えた人間の不可解な魅力がある。


『PASSING 白い黒人』21・米
監督 レベッカ・ホール
出演 テッサ・トンプソン、ルース・ネッガ、アンドレ・ホランド、ビル・キャンプ、アレクサンダー・スカルスガルド
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